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キラキラ輝いている星を見ているとふと直輝が笑い出した 「な、直輝…?!」 「あーいや悪い悪い」 手のひらをこちらに向けて気にするなと示してくるけど変わらず今も直輝は一人で楽しそうに笑っていて気味が悪い 「…何笑ってるんだよ」 「ふふっ、昔の祥って星の事捕まえられるって思ってたよね」 「――っ!な、なんでそれ……もう忘れてよ…」 「無理無理、祥の事で忘れてもいいことなんて一つもない」 「………だからってその話思い返すな」 「懐かしいよな、祥が星を捕まえられるって言うから俺本当は内心何言ってんだって思ってたんだけど祥の事好きで黙って着いてった」 「え?!そんなこと思ってたの?!」 「………俺結構ガキの頃から捻くれてたよ、でも祥といる時はなんでか卑屈にならなかったけどな」 「………無理してた?」 「ふふっしてない、俺は祥と居ることだけが幸せだったしな」 懐かしむように直輝が話す 俺が不安な顔をしたのに気づいたのか大きな手のひらが優しく髪を撫でてくれた 付き合う前に直輝が言っていた事が脳裏に浮かんだ 俺の前だけでは変わらず優しいフリをしていたって 他の皆には冷たいって言われても俺にだけはそんな顔見せなかったって 「祥、俺は昔も今も隣に居れて幸せだよ」 「……」 「今さ祥が思ってること当ててやろうか」 「え…?」 「俺は直輝の事なんも知らないで甘えてたんだな〜だとか、直輝は俺の前では無理してたのかな〜とか……違う?」 「――っ」 ひょいっと顔を覗きこんでくる直輝から慌てて顔をそらす 口にしていないのに全くその通り思っていたことを丸々当てられて気まづい 「無理なんかしてないし、俺の事を良く知ってるのは祥だよ……祥といる時は変に冷めたりしなかった、いつでも祥が俺にとって太陽みたいな存在だった」 「俺…そんな…」 「そうなんだよ、今話した星を捕まえられるって時もさ…他の奴なら付いていかなかったけど、もしかしたら祥なら本当に捕まえたりしてって思ったんだよな俺も」 その時の事を思い出して居るのか直輝が少し遠い目をしながらクスクスと再び笑い出す 「なんかそう考えると俺と祥の小学校時代って馬鹿だな」 「うるさい」 「拗ねるなよ」 「馬鹿で悪かったな…」 「馬鹿だけじゃなくて可愛いよ?今目の前に小学生の時の祥が居たなら迷いなく俺は襲うしね」 「いや………それは犯罪だよ直輝……」 「大丈夫、祥にもその気にさせちゃえば合法〜」 「……………」 ヘラっとそう言って笑う直輝はやっぱり頭ん中ピンク一色なんだろう 「でもやっぱ俺は今が一番幸せ」 「…直輝」 「んー?」 「あの………」 「……どうした?」 「えっと……あのね………」 「………」 「俺っ………うんと…………うぅ…嫌何もない…ごめん……」 「…そっか」 ぎゅうっと握り締めた手が震える たった一言言うだけなのになんでこんなに難しいのか どうしていつも直輝にだけは冷たくしちゃうんだろ 他の皆とはあんなに普通に話せるのにな ザザァと耳に聞こえる波の音がそわそわしている心を落ち着かせてくれる ふと横を見ると直輝の白い髪がキラキラと輝いていて綺麗で そっと前を向くと白く光を放った月が優しく浮かんでいた もしも… もしも直輝にとって俺が太陽みたいな存在だったとしたなら 俺にとって直輝は月のような人だ いつだって優しく俺を見守ってくれてた 怖くて悲しく不安で真っ暗に視界が染まってもいつだって直輝が優しく手を差し延べてくれる 真っ暗な道に優しく光を放って夜道を照らしてくれる月みたいに 直輝は俺をどんな時でも守ってくれて傍に居てくれていた 例え昼になって月の姿が見えなくても 月はちゃんといつでもそこにあるように 直輝も俺にとってそういう人だった 昔も今もかけがえのない人だった 「……………直輝」 「ん?」 「月が……綺麗だね………」 「え?」 「……………」 「………あのさ祥それって」 「………っ」 「…………ぶはっ!あははっ!」 「〜〜〜〜っ」 見つめ合う直輝が今迄で一番わらいあげる お腹を抱えてヒィヒィ言うまで笑っていて俺もだんだん恥ずかしくて今すぐ埋まりたくなった 「〜〜〜〜っ」 「ふはっ、ごめんなって祥〜ムッとすんなよ〜」 「…っもう直輝やだ」 「悪かったよごめんな祥ー?」 「無理もう二度と言わない」 「祥〜ごめんって〜膨れっ面も可愛いけど笑った顔のが好きだよ」 「なっ?!」 肩を掴み覗きこんでくる直輝がムゥッとしていた俺のほっぺに噛み付いてくる 思わず肩を押し返し離れるとすかさず直輝の手のひらに手首を掴まれて引っ張り戻された 「祥……好きだよ、ありがとう」 「……っ俺は…別に」 「月が綺麗ですね…か」 「〜〜っ」 「……死んでもいい」 「え……」 「祥の言ってくれた事の返事だよ」 「〜〜〜っバカ…キザなんだよ…」 「言い出しっぺの祥には言われたくないな〜」 そう言い微笑んだ直輝に抱きしめられる じんわりと胸の中が暖かくなって泣きたくなるほど幸福感でいっぱいになった

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