◇◇◇◇◇ あの店でわざと落ち込んだ振りをしたら 案の定気にした祥が必死に気持ちを伝えようとしてる可愛い祥を見れた上に ずっとやらせたかった事もしてくれる約束も取り付けられて上機嫌だった 店を出て歩き出して暫く、 不意に祥に変なことを聞かれてどうしたのかと思う 今は隣を歩きながら祥が一人で何かを考えながら百面相をしていて うーんと考え混んだまま歩くから 一緒に歩いていつ転ぶかと冷や冷やした 一度考え混んだら中々こっちに帰ってこないだろうから、俺も何も言わずに黙って祥の横を歩く それから少しして考える時間は終わったのか俺を一度見上げてきた祥がニコッと微笑んできた ……………こういう所 可愛くて愛しくて堪らないけど 祥のこういう所が物凄く不安だ 祥は意識せずに目が合ったからこうやって笑いかけてるんだろうけど 急に笑いかけられたら誰だってドキッとする 計算とかじゃなくて素でやってしまってるところが恐ろしい 祥にとっては別段いたって事ないだろうけど そういう無意識に人を煽る様な所が俺は不安だった だから天使なんてあだ名付けられるんだろう 中学生の頃だったか、 天然に可愛い祥の事をクラスメイトの誰かがそう呼び出してから今迄もそのあだ名は続いてる 俺にとっても祥は間違いなく天使だし異論はないけどいい気はしない 天然たらしって一番厄介だよな…… 俺の気も知らないで祥は呑気に鼻歌なんて歌いながら歩いてるから、それが可愛くてモヤモヤしたものがどこかへと飛んでいく 同じ学校だった時は祥につば付けようとした奴は片っ端から脅して手を出させないようにしてたけど今はそれが出来ないし 学校が違うから誰がいつ祥の事を狙ってるかわからなくて不安になる でもきっと祥はそんなこと気づかないまま隙だらけな上に天然たらしのダブルパンチだ いっそのこと監禁しちゃおうかな〜なんて思うくらいには結構毎日、祥が襲われずに無事に帰ってくる事に安心していた ｢なーおーきー！｣ ｢……っ！あ、なに？｣ ｢ボーとしてどうしたの？｣ ｢んー？祥のパンツの事考えてた｣ ｢？！｣ ｢でさ、今日は何色？｣ ｢なっ何色なんて覚えてない！｣ ｢ふーん覚えてないならここで脱がして一緒に確認する？｣ ｢なっ？！や、辞めろってば…！｣ ｢ふふっ可愛いね｣ ｢〜〜〜〜っ！｣ 大きなデパートの中、 学生やら社会人やら色んな人がごった返す賑やかな店内で祥の腰を撫でてからかう 途端に真っ赤に顔を染め上げてキッと睨みあげてきた だけどすぐに睨んでいた目尻は垂れ下がって眉をはの字に垂れさすと祥が小声でやだと身をよじる 腰を撫でただけでこんなになっちゃうくらい祥の体は敏感になったんだと少し感動ものだ クスクスと笑いながらふーっと耳に息を吹きかけるとプルプルと震えながら泣きそうな顔をして見上げてくる 本人はきっと睨んでいるつもりだろうけど残念ながら祥のたれ目の瞳は弱々しく震えているし、ただただ可愛いだけだ ｢睨んでるの？誘ってるの？｣ ｢睨んでるの！｣ ｢なんだ、ここで犯してって誘ってるのかと思った｣ ｢〜〜〜っ！直輝の変態！エッチ！｣ ふんっと祥がそっぽを向く だけど長めの襟足から覗くうなじは真っ赤で そんな祥が可愛くて堪らないからついつい虐めてしまうんだ エスカレーターで移動して映画館がある階に着く頃にはすっかり祥はご機嫌で楽しそうに広告を見ている 八時からの回にした映画は今流行ってるアクション映画で前々から祥が見たがってた奴だからそれにした ｢直輝、ポップコーン食べる？｣ ｢んー｣ ｢食べる？｣ ｢うん食べる｣ ｢わかった！買ってくる！｣ ｢いいよ、俺が買ってくるよ｣ 子供のように目をキラキラと輝かせた祥の頭をポンッと撫でてポップコーンを買う為にフロントへ行く 俺に食べたいかどうか聞いていたけど完璧祥が食べたがってたのはバレバレだ キラッキラに目を輝かせて犬のように聞いてくる祥を思い返して笑みが溢れる 普段は結構落ち着いていておっとりしてる祥が子供みたくはしゃぐ姿を見れるのはレアだ 受付のお姉さんにポップコーンを一つ頼んで飲み物もついでに買ってから祥の元へと戻る 名前を呼ぶと振り返った祥が俺を見るなりタタタッと駆け寄ってきた ｢飲み物までごめんね！｣ ｢構わないよ、入場始まった？｣ ｢あ、うんさっき始まったよ｣ ｢じゃあ行くか｣ ｢うん！楽しみだね！｣ ほんのりと頬を赤く染めて祥が微笑む 俺の方を見て笑いかけた時に祥の艶々としたふわふわな黒髪が揺れてドキッとした 美人な顔立ちの祥が愛らしく笑う度にムラっとしてしまうのは俺だけが悪いのか… いや色っぽい祥にも原因はあると思う 無駄にフェロモンダダ漏れの祥が悪い 俺は至って健全な男子高校生だし 隣にこんな可愛い恋人がいたら いつだってどこだってくっついていたいけど祥は恥ずかしがるから辞めといた 座席に座り祥と話しているとだんだん照明が暗くなる 映像が画面いっぱいに映り、大きな音が左右のスピーカーから鳴り響いた 平日の夜だったからなのか、 公開してからそれなりに時間が経過していたからなのか 結構シアターの中はがらんとしていて 俺達の周りにはあんまり人が居なかった 斜め前にカップルが座っているぐらいで 後はまばらにポツポツと一人で見に来た人とかが座っているくらい ふと横に座っている祥を見ると楽しそうにウキウキとしたまま他の映画予告をじっと見ている 画面の中身が変わる度に祥の表情もコロコロと変わって ぶっちゃけ俺は映画を見るよりも祥を見てる方が楽しいけど そうすると祥が拗ねるから仕方なく俺も前を向いて映画へと視線を移した