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伝わらない

◇◇◇◇◇◇ 「祥、これ捨てて来るからここで待ってて?」 「うん……」 ユラユラと足取りがおぼつかない俺を 直輝が座席に座らせてくれる あんなところでまさか出してしまうなんて 予想もしてなかった恥ずかしい出来事に体が震える 日に日に俺の体が直輝に触れられただけで発情するって事は気付いていたけどここ迄とは思わなかったし これじゃあ直輝に淫乱って言われても否定できないや…… はぁ、とため息を零してテーブルの上に両手を組んで腕枕を作る そこに頭を乗っけてぽぉ〜とする思考や体の熱を冷まそうとした時ふと頭上から声がかかった 「ん?小日向か?」 「……っ!わー!高田!」 「おー、やっぱり小日向かよ〜」 親しげに声をかけてきたのは 高校が同じで二年の時同じクラスだった友人である高田だ 「なに?小日向も映画?」 「そう、友達と」 「へー!………ん?お前顔赤くね?」 「え?!」 じぃっと見てきた高田が隣に座り込むなりズイッと顔を近づけてくる それから不意に右手で頬を撫でると 「熱はねえな…」なんて言っていた 「大丈夫だよ、映画に少し興奮しただけだと思う」 「へ〜?なになに、エッチなシーンに?」 「………あのなぁ、そんなこと一言も言ってないだろ…」 じっと横目で高田を見ながら少し呆れ口調で話す しかし当の高田はニヤニヤと笑いながら本当かー?なんて疑っていた 高田って相変わらず性のことには興味津々だなぁ…なんて思っていた時急に体に走った刺激に変な声が出てしまった 「ヒャッ」 「?!」 「え………っ…、ちょ…と!待て!」 「なになに?!今の声小日向か?今の可愛い声は小日向からなのか?!」 「なっ?!やめろって!バカ!」 高田が不意に何故かさわさわと股間を揉んでくる さっきイったばかりな上に下着の中で出してしまった分気持ち悪さといつバレてしまうのかと不安がグルグルと頭の中をかけ巡った 「こっちは?もしかして乳首でも可愛い声とかでんのか?」 「っ…!んっ!ま、って…!ダメだってば…っ」 さわさわと撫であげてきた高田の手を払いのけようとした時、不意に後ろから伸びてきた手に全身を抱きしめられる それから直ぐに耳元からハスキーで色気のある声が聞こえた 「しょーちゃんっ、友達?」 「っ…直輝……」 「…………、はじめまして〜幼馴染みの天使直輝です」 「えっ!あ、まじもん?!」 「ふふっそうそう、テンシって書いてアマツカって読む面白い苗字の天使です〜」 未だに椅子に座る俺を後ろから抱きしめて高田の手を遠ざけたまま直輝が飄々と話をしてる だけど俺にとったらもうその緩い雰囲気がとてつもなく怖い 俺の左手首を掴む手にギリギリと力が入ってる事が直輝の心を表していた 「しょーちゃん、俺少し行きたい所あるんだけどもう行ける?」 「えっ?!あ、うん」 「うわ〜モノホンの天使直輝と幼馴染みってずりいよな」 「…っ…そ、そうだね…………じゃあ俺達行くから…また明日ね高田」 「おう!じゃあな〜!」 無理矢理に笑顔を作りながら席を立つ 机に肩肘をついて空いた手でヒラヒラと手を振っている高田に手を振り返すと直輝の元へ行く 「………直輝」 「じゃあ行こっか」 「えっ?!」 「なに?行かないの?」 「………あ…いやなんでも」 ヘラっとしている直輝に呆気にとられる あれ、怒ってないのかな…… さっき迄のどす黒いオーラは消え去って 至って普通に直輝が笑いかけてくる 何だか拍子抜けしたけど 怒ってないならよかった… そう思って俺も直輝の後を続いてエスカレーターに乗り込んだ 「直輝」 「んー?」 「行きたいところってどこ?」 「それは行けば分かるよ〜」 振り返った直輝がニコッと微笑む なんだろ?どこなのかな? 教えてくれない直輝の背中を見つめながら エスカレーターを降りて直輝の後を追いかけてすぐ 曲がり角を曲がった途端直輝に手首を掴まれて男子トイレへと連れ込まれた 「っ!直輝!トイレに来たかったの?!」 「………」 「いっ…!」 掴まれてる右手首が痛い 白くなるほど直輝に握り込まれてギリギリと痛みが走った 何がしたいのかわからなくて 困惑していると一番奥の洋式トイレへと押し込まれる ダンっと壁に体がぶつかって痛みに目をつぶっていると今度は耳の横から一際大きい衝撃音がして驚きに体が怯んだ 「…………なお…?」 「…………」 恐る恐る目を開くと目の前に冷たい顔をした直輝がいて、その余りにも冷えた瞳に心が凍る さっき迄普通に出来ていた息さえも一瞬止まりかけてやけに辺りが静かだと思った 「……なお……あの…怒ってる……?」 「……怒ってるように見える?」 「……………」 瞳の色を変えないままにっこりと直輝が微笑む 俺の顔の横へと伸びている腕に挟まれて、まるで逃げ出すことの出来ない檻に居る気分だ 「……………」 「祥」 「……なに」 「さっきのアレなに」 「……いや…別に普通に友達…」 「友達にあんな顔して甘い声出して誘ってたの?」 「…っ…!………違う」 直輝の言葉にカッとする そんなことしてないし、そんなつもりだってない だけど俺が言い返せる立場じゃないのも 俺がこれの原因な事もわかってるから口を結ぶしかなかった

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