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03
つぎの日、バイトを上がって直ぐにあの公園へと走って向かった
まだ全然余裕ある時間なのに
それでも待ちきれないまま辿り着いた場所は誰も居なくて
待ち合わせの時間迄一人ブランコに乗って待ってたけど
待ち合わせの時間になっても
待ち合わせの時間を過ぎても
日付がとっくに変わっても
直輝が公園に来ることはなかった
何となく来ないような気はしてたから
ショックとかよりもやっぱりかなんて納得してて
1日中直輝から連絡来てなかったから
見てないのかもしれないし忙しいのかもしれない
いやほんとは
もう話す事も嫌になったのかも
そんなこと考えたり打ち消したりしてたら
もしかして直輝に何かあったのか不安になったり
本当におかしいだろ
こんなに好きなら素直になればいいのに自分の捻くれ加減にほとほと嫌になった
結局朝まで帰ることができなくて
もしかしたらって考えたらその場を動けずで
携帯にも電話してみたけどそのまま留守電へと繋がっていたから連絡も取れないまま
公園の前を通る人が多くなってから、流石にもう来ないかなんてやっと諦めがついて俺は一人で家へと戻った
家に着いて肩の力が抜けるとまたグルグルとしてくる
何かあったんじゃないのかって不安と
昨日の事怒ってて話したくないってことなのかなって不安と
ぐちゃぐちゃした頭のままふとカレンダーを見て一段と大きなため息が溢れた
「…そうだった…今日美容祭だ…」
1ヶ月前の俺はきっとニコニコ笑いながらカレンダーにハナマルを書いたんだろうけど
生憎今はそんな気持ちが一ミリも沸かない
カレンダーの日付にはデカデカと赤マルがしてあって嫌味なほどに楽しげだった
美容祭自体は授業とは関係ないかは休んでも構わなくて
俺達の学校は文化祭じゃなくて美容祭として扱われていたから休もうか悩む
都合よく3年の俺達は出し物は出さずに
1年と2年の催し者に参加するのみで
用意も特になかったし
あるとすれば3年のエントリーした人のみがやるヘアメイクコンテストぐらいで
でもそれも毎年いつからなのか
コスプレが主流になっていて
投票で選ばれたモデルはステージに立つ時いつも派手な格好をしていた
それに今回出ることになったのは有り難くも俺だったんだけど
一番ネックなのはその格好だ
当日迄は秘密らしくて一体何を着るのかも知らないまま
こんな淀んだ気持ちのまま参加するなんて嫌だなぁって思って休もうと携帯を開いて思わず笑ってしまった
開いた携帯にクラスの友達から休むなよとだけの短いメッセージが入っていた
「……エスパー」
何人からも休むなよと連絡が来ていて
まるでエスパーみたいだとさえ思えてくる
んーそりゃあモデルが休んだら確かに困るよな
よしっと決めると気持ちが変わる前に
早く支度を済ませてバイクに跨り学校へと向かう
家で一人よりはましかもしれない
直輝のことばっか考えて
どうしたのかとかぐちゃぐちゃ考えるよりはいい
連絡見てないのかもしれないし
今日また電話すればいい
もう逃げないって決めた大丈夫
パンっとほっぺたを手のひらで挟み込むと何度か笑顔の練習をして
ざわざわとたくさんの笑い声とざわめきが溢れかえる校舎へと足を進めた
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