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お祭り騒ぎのなかで

「祥ー!着たー?」 「きっ着てない…!」 「あー?まだかよ手伝ってやるから開けるぞ!」 「だっだめ!まっ…!」 「……」 「…っみ…見んなよばかぁ…」 「…なんていうか……似合ってるぞ」 「嬉しくない!」 下から上まで舐め回すように見ては黙り込むクラスメイト達の視線から逃れようと身を縮こめる こんなのっ こんなの絶対おかしいだろ…! ふるふると震えながらほんの数十分前の出来事を思い返す クラスについた途端あれよあれよと言う間に渡された今日の衣装 真っ黒な袋から取り出すと中身は物凄く丈の短いチャイナ服だった 「これ間違えてない?」 「ないない!祥のためのチャイナ服だから!」 「え?!俺男だよ?!」 「大丈夫大丈夫!そこは祥のクオリティで全然気にならん!」 「は?え?!意味わからないんだけど…」 「いいから着替えてこいって!」 「待ってよ、流石に女の子よりは肩幅だってあるし入らないと思う」 「そしたら他のに変えてやるから!な!?」 「……約束だからな」 「オーケーオーケー!」 そう言ってニヤニヤしてる友達を睨んで教室の中にある着替える場所で渋々チャイナ服を取り出す 真っ赤な色鮮やかなチャイナ服 こんなの絶対男の俺が着るなんておかしい… その前に流石に着れるわけないし さっさとそれ証明してこんなの辞めてもらお そう思って着たのに そうだと思ったのに 鏡に映る俺はしっかりとチャイナ服を着れてしまっていた 「脱ぐ!無理無理!」 「は?!約束だろうがよ!」 「でっでも…」 「んだよ〜似合ってるし大丈夫だって」 「そ、そんなの嬉しくないよ!」 「いやーでも本当似合ってんな…本当にチンコついてんのか?」 「しばくぞ」 「ひぃっ!わ、悪かった!悪かったから殴らないで!」 ぐにぐにと指をくねらせて下腹部へと手を這わせようとしてくる友達に向かって拳骨を見せる 間抜けな声をあげて顔を青く染めた友達は仲良く成り立てのころ俺に殴られた事を思い出したのかそそくさと消えていった 流石に俺だってあっちこっち触られて黙ってる程おしとやかなんかじゃないし その頃は本当に男によく襲われてたから過敏だったかもしれないなんて懐かしい事思い返した 結局本当に俺のはチャイナ服しかなかったみたいで、あっちこっちのクラスから物珍しさに写メを撮ろうとしてくる子達もいて 昨日から寝てないのもあるけどまだお昼前なのにぐったりだ 通りざまにお尻を撫でてくる人もいるし 冗談で後ろから胸を揉みこんで来る人もいるし 男の体触って何が楽しいんだか 皆嫌がらせとか煽る為なんだろうけどこっちはその度変な声が出ないように必死だ それもこれも全部直輝がやらしく触ってきてたせいだ… 「祥…?」 「へ?あ!瑞生さん!」 「……………何この格好」 「…やっぱり変ですよね」 「いや…そうじゃなくてさ…」 「…?瑞生さん?」 相変わらずオシャレな格好をした瑞生さんが整った顔を見た事もないほどに歪ませて考え込んでいる 気持ち悪いと思われたのかと思って慌てて瑞生さんの名前を呼んだら着ていたジャケットを肩にかけられた 「これ、着てなよ」 「えっ」 「……あのさ祥」 「はい」 「もう少し警戒する事覚えた方がいいかも」 「警戒…ですか?」 「…あー、うん少しね」 「わかり、ました…」 「はぁ分かってないねそれは」 うん?とうねってると瑞生さんが盛大なため息をついた なんか瑞生さん怒ってる? そう思った時不意に顔をあげた瑞生さんに腕を引っ張られた 「うわっ!」 「……祥」 「んっ…!ちょ、瑞生さん…っ」 「……」 「手が…っ…ゃ…あ、の…手がっ」 「手が何?」 「…っやめ…んぅっ!」 よろめいてそのまま瑞生さんの胸に倒れ込んだ俺を抱きしめた手がするすると腰を撫でると下へと降りていく それもお尻を下って太腿まで下りると内股へと入り込んできてその手に困惑した ぐっと押し返そうとしたとき不意に弱い耳元で喋られてゾクッと背中が仰け反る このままじゃやばいと思った時 ふ、と俺の体を拘束していた力が消えていった 「っ…ふ……瑞生、さ…っ」 「……ほらね」 「へ?」 「こんな簡単に祥は感じちゃう」 「なっ…!」 「それだけじゃない」 「瑞生っさ!」 震える足に力を入れて立っていると瑞生さんの綺麗な指が顎をすくい上げてきた 真っ直ぐに俺を見下ろす瑞生さんを見上げるとあの日見たような熱の篭った色気のある視線が降り注いでいる 「目の前にこんな可愛い子居たら誰だって襲いたくなる」 「かわ…いくない、です」 「じゃあエロい子」 「っ!馬鹿にしたいんですか…?」 「…そうじゃない」 「じゃあなんで」 「……」 ふっと嘲笑う瑞生さんの意地悪な態度にほんの少しムッとして顎に添えられている手をどかす 瑞生さんの言いたい事全然わからないし どういうことだよ 俺は男で襲われる対象になる事が異常だろ… 何だか腑に落ちないまま、 パンパンっと裾を伸ばしていると今度は急に壁に追い込まれて閉じ込められて驚く 「瑞生さん!さっきから何したいんですか!」 「祥」 「何ですか…」 「これは先輩としてじゃなくて祥を好きだった一人の男としての忠告」 「……」 「祥はもう少し自分の魅力を自覚した方がいい」 「…へ?」 「祥は男同士だって疑うこと無く信じてるかもしれないけど、周りも皆がそう思ってるとは限らない」 「…ど、いうこと」 「さあ?後は自分で考えな」 「え?!」 「…これじゃあナイト様は大変だねハラハラしてきっと毎日不安で仕方ないだろうな」 それだけを言うと瑞生さんが離れていく 壁と瑞生さんに挟まれていた俺はやっと普通に視界が開けて 今さっきまで世で言うと壁ドンとやらをやられていたんだと気づいた瞬間顔が熱くなった

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