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そんな俺に気づいたのか 洞察力の優れている瑞生さんが笑い出す 「わっ、笑わないでください…」 「あははっ」 「瑞生さんっ!」 「んふふっごめんごめん〜」 「…誰だって驚いたら顔ぐらい赤くなります」 「驚いただけ?」 「そうですよ他に何があるって言うんですか」 「ふーん」 瑞生さんのこういう意地悪なところは苦手だ 多分人の心の中とか読めちゃうんだろう それぐらい瑞生さんって掴みどころがないのに人の事は良く見抜いてるんだ はぁとため息が自然に溢れて ザワザワする心を落ち着かせながら乱れた髪を耳にかけなおす 今日の瑞生さんは意地悪だから早めに退散しようとしたとき名前を呼ばれた 「祥」 「はい?」 パッと顔をあげた時 瑞生さんの整った顔が俺のほっぺた直ぐ横にあって 次の瞬間 チュッと鳴るリップ音と頬に触れる柔らかく暖かな感触に驚く 一瞬の事に驚いていると間抜けに動けなくなっている俺の顔を覗きこんで瑞生さんがふっと笑ってきた 「ご馳走様〜」 「〜〜〜ッ!」 「じゃあね、そのジャケットは今度のバイトの時にでも持ってきてくれたらいいから」 「みっ瑞生さんっ」 俺の呼びかけに止まる事無く 瑞生さんはそれだけを言うと消えていった 「…はぁ本当に猫みたいな人だな」 黒と金のメッシュが混ざりあった綺麗な色をした派手な髪を揺らして歩いてく瑞生さんの後ろを姿を見ながらそう口にする ちらっと時計を見上げると 後一時間ちょっとで俺が出るショーの時間になる もそもそと腰を上げると体育館へと移動する事にした 物凄い人の多い中こんな格好で歩くのはただの恥さらしだ さっきなんか女と間違えられてナンパされるし本当だったら直輝を誘ってた筈なのに今一人だし なんか物凄く落ち込む 最後の美容祭は直輝と回りたかったな… 一人で歩きながら勝手に落ち込んで居た時不意に遠くから名前を呼ばれた 「小日向!」 「?」 「こっちこっち!小日向ー!」 「……あっ高田!」 「おう、おはよ!」 「ヒャッ」 廊下を走ってきた高田にお尻をパンっと叩かれてゾクリとする 思わず溢れた変な声に驚いて口を隠したけどもう遅かった 「小日向の今の声ヤバイ」 「……きもい」 「そういうつれない所も好きだぜ」 「女に言えよ」 「まあまあ怒るなってば」 気まずいワケじゃないけど 直輝と色々あったきっかけな訳だし 何だかそわそわして高田とうまく話せない 高田にくるっと背中を向けて歩き出そうとしたけど隣に並ばれて肩をくまれた 「ところで小日向元気ねえじゃん?」 「え?」 「なんだよ噂の恋人さんとなんかあったか?」 「…そんなんじゃないよ手退けろ」 「小日向マジで機嫌悪いな?!」 「勘違いだよ」 スタスタ歩く俺に負けじと高田がくっついてくる 通りざまに色んなひとに声掛けられる高田はやっぱり普通にいいやつだし友達も多いし 警戒する必要とかあるのかイマイチ納得できないんだ 納得出来てないのに言われたから高田に冷たくするのはやっぱり何か違う気がする 「はぁ」 「ん?どうした?」 ため息を零して急に立ち止まった俺に高田が驚いていた 「ごめん高田、少し冷たくした」 「やっぱりかよ!俺なんかした?」 「ううん違う俺の勝手な理由だから…ごめん」 「酷いわ小日向さんのバカっ」 「ごめんって」 どこの女の子の真似なのかクネクネと体を捩らせて高田がわざとそんなことをいう だから俺もふと笑みが溢れて高田といつもどおりに話すことができた 「ならさ!美容祭ぐらいは俺と回ろうぜ」 「え?でも高田さっき友達といなかった?」 「ああ、そうそうアイツらも小日向に会いたがってるんだよな」 「…俺に?」 「俺の地元の連れ何だけどさ〜まっ!とにかく会ってやってくんない?」 「俺なんかでいいなら構わないけど」 「まじ?さんきゅー!じゃあ行こうぜ!」 そんなに嬉しがる事でもないのに高田が嬉しそうに笑いかけてくる 高田の地元の友達かー やっぱり高田みたいにいい人何だろな 少し俺も楽しみにしながら出店とか回りつつ高田の友達が待っている場所迄向かう事にした

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