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そう伝えて髪に指を通しながら あちこちにキスをする 引っ掻かれて血が滲んでいるところ 殴られて赤く腫れているところ 祥の体に浮かび上がる幾つもの傷跡を見るだけで腸が煮えくり返るほど怒りが沸き上がる やっぱりあの日伝えるべきだった 今更後悔したって遅い そんなことは分かっていても それでも愛しい人が痛い思いをしたんだと思うと悔やまずには居られなかった 映画館で高田のいやな笑顔に気づいたとき 中学の頃良く祥を見ては下衆な事を話していた奴らとそっくりだと思った 案の定祥と話終えた高田はニタニタと舐め回すように見ていて どうやって祥をあいつから引き離せばいいのかわからないままあの日は喧嘩別れになったんだ 走っていく祥を追いかけようとも思ったけど 今迄散々裏切られてきた祥に 「あいつは祥を友達だなんて思ってない」 なんて言えなかった だからそれなら裏から手回ししてでも何でも祥から高田を引き離すしかないと思って持ってる人脈全部使って一番身近な奴を探しだしたけど 結局あてにならなかった それが高田の元彼女で 高田の元彼女なら高田の弱味かなんかぐらい知ってるかと思ったら最初から最後まで猫なで声でベタベタしてきては鬱陶しいだけだ 電話越しに祥と喧嘩したのがどうしても気になって、直接会わなきゃならない気がして あんな意地を張るんじゃなかった 本当言うとヤキモチも混ざっていたんだ 今考えれば子供過ぎて呆れる 意地張って嘘ついて見栄なんかはって そうじゃなくてあの日少しでも素直に 誰かに触られてる祥を見てるのは嫌だって言えたら こうはならなかったんだろう そう後悔したからその日酔った先輩をタクシーに乗せて 壊れた携帯をポッケにしまい込むと駅まで駆けつけた だけど、朝早くに祥の地元迄向かったら高田の女もズルズル引っ付いてきて 挙句にここで抱きしめなきゃホームに飛び込むって言い出す始末だ 今迄、祥との事誤魔化す為に女遊びはしてきたお陰でここまで来ると絶対に引くことなんて無いだろうことは経験でわかっていたから さっさと抱きしめて、俺も捻くれてるから耳元で小馬鹿にしたらさっき迄の泣いてたのは演技だって丸分かりなほどにブチギレて帰っていったのを見て ざまあみろなんて思ってたのが罰が当たったのかもしれない まさかそれを祥に見られていたんだから 朝は祥と入れ違いになったのか家は留守で 夜、また玄関で待ってた時に不機嫌そうな祥にそれを言われた時は口ごもって言うべきか物凄く悩んだ 結局話せないままで祥は家に戻って 携帯が壊れてる事も高田の動きがおかしい事も何一つ言えなかった それからつぎの日直ぐに、 高田が友達引き連れて祥の学校に行くことを知り合いから聞いて胸の中が嫌な予感でいっぱいになる その連れの事も調べたけど、 あっちこっちのクラブで出禁になったり問題起こしてる事がわかって本気で焦った どうしても祥に直接話さなきゃならないと思って マネージャーにめちゃくちゃ頼み込んで午後からの仕事何とかしてくれないかって交渉して 無理矢理にずらしてもらった仕事を終えて祥の学校に駆けつけた時には もう遅かった 手遅れだったんだ 3人に囲まれてあっちこっち抑えつけられて泣くの必死に我慢してる祥が 俺を見た途端名前を呼びながら涙を流した瞬間何かがぷっつりと切れた 祥が止めなかったら本気で殺しかけてたかもしれない 祥があの場に居なかったら俺はもっと酷いことをしてた それが事件になろうが何だろうが構わないって思えるほど祥を泣かせたやつが許せなかったんだ 「…直輝?」 「祥、もう二度とこんな思いさせないから」 「……直輝気づいてたんだろ?」 「………」 「高田が言ってた…直輝は気づいてたって、なのに俺…ごめんね馬鹿で……いつも助けてもらってばっかで本当…情けないね」 「違う」 「…違わないよ俺が馬鹿だったんだ」 「祥違う!だから自分を責めるなよ」 「……でも俺が言う通りにしてたらこんな事ならなかった、直輝が誰かを殴る事も…直輝の事傷つける事も……全部全部なかったのに」 「…………」 そう言って無理矢理に笑う祥を見て堪らず抱き寄せた 本当に祥は馬鹿だ こいつは一体どこまでお人好しなんだ 祥の真っ直ぐなところが好きだ 何度も何度も裏切られても 傷つけられても人を許せる強い心が好きなんだ 捻くれている俺には勿体無いほどに綺麗で真っ直ぐな祥が大好きなんだ 「俺の心配じゃなくて自分の心配した方がいいんじゃない?」 「え?」 「あいつらに何回イカされた?」 「?!」 「あいつらの倍は祥の事イカせなきゃ気が済まない」 「なっ!倍なんて無理!」 「大丈夫、祥は俺にキスされただけでイケちゃう淫乱なんだから何回でもイケるだろ?」 「そうしたのは直輝のせいだろっ!」 「俺に開発されちゃって嬉しい?」 「なんでそうなるんだよ…」 「えーそうだと思ったんだけど違うんだ?」 「…べ、別に違うとは…言ってない…」 「素直じゃないな、俺じゃなきゃ物足りないだろ?」 「――っ!」 「言って?俺が欲しいって、そしたらいくらでもあげる全部…俺の全部祥だけのものだから」 「っん…直輝……っ」 「ほら早く」 「あっ…や、耳…ダメ…っ……直輝の…欲しいっ」 「うん」 「直輝の全部っ………全部欲しい…!」 「うん、うんっ…ごめん本当にごめんな祥…もう二度と誰にも触れさせない…俺だけは絶対に祥を裏切らないから約束する…何があっても俺はずっと祥の事は裏切らないから」 「――っ!………泣き虫直輝…」 「……泣いてない」 「…嘘つき」 「………」 「震えてる」 「………うるせえ」 祥の肩にオデコを乗せたままでいると 細い腕が優しく肩に回ってきて頭を撫でてくれる これじゃあどっちが慰めてるんだか分からないな 本当に怖かった どれだけいつもの調子で祥と話していても 変わらずに祥が俺を求めてくれても 祥にまたこんな事があったらって怖くて堪らない もうずっと一緒にいたい 離れてる時間が一ミリでも惜しくてしょうがないんだ

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