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07
「ま、そう言う事だから高田よろしくね」
「…………」
びっくりするほど静かになった教室の中
あれほど威圧的な雰囲気を放っていた直輝がコロッと再び笑顔でそう言った
「祥?歩けそ?」
「…ん…っだい、じょぶ」
「あー無理そうだな…足震えてる」
「ッ!お、まえが…ッ!」
「あははごめんって!祥大好きだから怒らないで」
「………」
大好きって本当にずるい
もう何も言えなくなるし
何でもいいやなんて思えちゃうんだから
それを分かってて言う直輝はもっとずるい
その後直ぐ、直輝が廊下に居る聖夜を呼びつけて俺は言われるままに直輝を残して聖夜と教室を出た
「祥大丈夫か?」
「うん、聖夜ごめんね?先生と居たんでしょ?」
「そんなの気にすんじゃねえよ、何かあった時くらい自分の事考えろバカ野郎が」
「あははっ流石生徒会長様だね、なんかホッとする…ありがとう聖夜」
昔から変わらない
日本人の髪とは違う天然の明るい金髪に
鋭い瞳と乱暴の口調
昔の聖夜はその見た目を気にしてて
こんなにも優しくて暖かい人なのに
無理して素行の悪い振りをしてヤンキーだったのを思い出した
でもそんな聖夜はいま直輝と同じ高校で
大きな学校なのに生徒会長迄やってて
頭も良くて相変わらず口調は悪いけど…
それでも聖夜の中身を見てくれる人に会えてよかったって大好きな手のひらに頭を撫でられてふとそう思った
「聖夜の手大きくて安心する」
「そうか?」
「うん、俺聖夜の弟とか先生の気持ち何となくわかる気がするよ」
「……良く分かんねえけど祥にそう言われんの嬉しいな」
「あははっ」
「あ〜浮気現場発見〜」
「ッ!直輝!」
「めんどくせえのが来たな」
「祥は俺の手より聖夜の手の方が好きなんだ、へえ」
「ち、違くて…!」
「でもいまそう言ってたじゃん」
「そうじゃなくて……っ、だから…っ」
聖夜と廊下の隅に座り込んで話していた時
また急に直輝が横から現れて心臓がドキッとする
「じゃあ他にどんな理由があるの?言っただろ、俺は祥よりも嫉妬深いって」
「だ、だから……えっと…………って、え?直輝いま妬いてるの?」
「………はぁだからそう言ってるだろ」
「え…だって聖夜だよ?」
「聖夜だろうがムッツリだろうが関係ない祥が他の男に撫でられて嬉しそうに笑ってるの見て何も思わないわけじゃないよ」
「誰がムッツリだ!」
「聖夜の事だけど?」
「オープンスケベよりましだろ?!」
「…………あははっ」
「…?」
「ふふっ、ごめん二人とも仲いいなって……それと俺が頭撫でられて笑ってるのってね、撫でられる度に直輝の事思い返すからだよ」
「え?」
「…直輝の手の感触とか思い出して、直輝はこうやって撫でるなぁとか…その時本当に安心するんだとか…だから俺、誰かに撫でられてる時だっていつだって直輝の事しか考えてないよ」
「…………」
「え?直輝?」
「……大好き」
何だか面白くてクスクス笑いながら座る俺達の前に立って見下ろしている直輝にそう言ってる途中
急に座り込んだ直輝に抱きしめられた
「〜〜〜〜っ!せ、聖夜いる!」
「ムッツリなんて知らない」
「おい、ムッツリムッツリうるせえぞオープン野郎が」
「ふっムッツリかもしれない……って青ざめた顔して俺に相談してきた馬鹿生徒会長は誰?」
「――っ!バカ野郎!言うんじゃねえよ!」
「はいはいムッツリうるさい」
「…………手貸してやったのに結局これだもんな、まあ昔と変わらねえけど」
「…………………ありがとう」
「……………」
「…………………」
「………………………」
「ええ?!」
ボソッとありがとうと直輝が口にした途端聖夜が心底驚く
聖夜もだけど俺も驚いた
だっていつもならそんなの当たり前だ
俺の友達ならな、なんて王様もいいとこな態度とって不敵に笑う癖に
そんな直輝が小さくでも
俺の肩口に顔を埋めながらありがとうって言ったんだ
「は?直輝…熱でもあんの?」
「……うっさいぞ」
「いま、ありがとうって言ったよな?」
「…………」
「…やっぱり聞き間違いか?お前が言うわけないしな」
「…聞き間違いじゃない、聖夜ありがとう本当に助かった」
「――っ?!」
「聖夜が友達でよかったって思ってる」
「…なんだよ急に」
「いや、…俺本当に死ぬかと思った」
「…………まあな話は聞いてねえけどさ…俺も直輝の立場だったらって考えると、まあ」
「…だから、ありがとうな」
「気持ち悪いな気にすんなよ」
「祥も、ごめん本当、家帰ったら直ぐお風呂な」
「うん」
「ん?俺の精液ごっくんしたい〜って言わないの?」
「〜〜〜〜っ!黙れ!変態!」
「変態なのは祥だろ?中出しじゃなきゃイヤイヤって言ってた癖に」
「せ、聖夜の前なのに!」
「ふはっだってやり返してるんだし?聖夜とイチャイチャしてたから祥は俺のって聖夜に見せつけてる」
「………俺の感動を返せ」
「聖夜に同じく俺も…」
さっき迄の少し照れくさいけど
暖かい空気はどこへ行ったのか
直輝の言葉でその場はいっきにいつもと変わらない3人に変わっていた
きっと恥ずかしくなった直輝が
わざと俺に変なこと言ってきて空気を変えたのかなって予想はついたけど
ほんの少しいつもと変わらない直輝の耳が赤くなっているのに気づいたから、俺も聖夜も知らないふりしてただただ笑っていた
直輝に制服をとって来てもらって着替えてから三人で学校をあとにする
着替えてるあいだも待ってるあいだも
直輝が教室で何をして居たのかは何一つ教えてくれなかった
ただずっと「お仕置きするっていったろ?」って意地悪な真っ黒い笑顔でそう言われただけで
結局その日も1日中教えてくれることはなかった
だけど数日後、
ずっと姿を見なかった高田が俺を見た途端に駆け出して逃げるから
あんまりにも気になって聞いたら
あの後俺が出ていったあとに
高田達が持っていた玩具と媚薬せっかくだし使ってあげた
って言われて何となく…
ほんと想像もしたくないけど
何か高田に罪悪感が生まれそうな気持ちになった
「祥おいで」
「ちょ!今はダメだって…課題あるし」
「俺も後で手伝うから」
「な?!」
あの日の喧嘩以来
変わった事といえば前よりも直輝がベタベタしてくるようになったことくらいだ
前迄はこういう課題の時邪魔とか絶対しなかったのに
今は課題してる時でも直輝の足のあいだに座らせられて課題する事になったり
そうなると結局そのままずるずるエッチな事しちゃって
けど本当にダメな時は分かるのか
大人しく俺が課題終わるまで髪の毛弄って遊んだり結んでみたり
俺をぬいぐるみ感覚で遊んでいた
「直輝っ」
「やだキスしたい」
「子供…」
「子供が欲しいの?」
「はぁ?」
「沢山エッチな事したら祥子供産めちゃうかもね?」
「ひゃっ!す、わない…っんぅ…はぁ…っ」
「おっぱいも出るようになって」
「ひゃら…っ!んぅ〜〜〜っ」
「オチンチンからじゃなくて乳首から白いの出さなきゃダメだろ?」
「や、やぁっ!イったばか…っふぁ…!」
「祥可愛い」
「ふ、んぅ…っ…ああっ!」
「お腹でごっくんする?」
「………」
「祥〜」
「も…っ…馬鹿直輝」
「ふふっ大好きだよ」
「……俺も、好き」
後ひとつ変わったとしたら
俺も前よりはほんの少しだけ自分でも好きって口に出来るようになった
まだまだ意地張ってばっかだけど
でも喧嘩で一度、一生伝えられないって事がどれだけ怖いかって思い知ったから
もう二度と言えないことに比べたら
ほんの少し勇気出して伝えられる今は
比べられない程に幸せだって
喧嘩はすごい嫌だったけど
でも前よりも2人共ほんの少しだけ変わってて
それは何となくお互い感じ取ってて
無駄じゃなかったって思えるから
なるべく喧嘩はしたくないけど
喧嘩した事も今じゃ良かったって思える今に物凄く感謝したし
もう二度と直輝を疑わないって決めた
未来を見てばかりで不安になるより
今しっかり直輝の事愛したいって
こうやって触れ合える暖かい温もり感じられるこの時間が全部全部特別なものだって
あの時の喧嘩はそう思い考え直させられる出来事だった
「…直輝」
「ん?」
「…………だっ、大好き」
「ふはっ顔真っ赤」
「うっうるさいっ」
「可愛いよ、俺も大好きだよ祥」
「うん」
この人の隣に一生居られるなら
どんな事でも頑張りたい
笑顔が好きだから
笑ってもらえるなら
好きって何度でも言おう
伝えられなくなる前に
愛しい貴方の笑顔に触れながら
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