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愛して溶かして
ほんのちょっぴり唇突き出して
少しご機嫌斜めな祥が俺のカーディガンの裾ちょこんと握り締めながら隣を歩く
カーディガンじゃなくて手繋いでくればいいのになぁて思うけど祥にとったら今日は沢山頑張ってくれたのはわかってるから
意地悪するのは一旦辞めることにした
「祥?」
「…なに」
「キスはさっき頑張ってくれたし暫くは言わないから水族館楽しも?」
「えっ?!」
「折角来たのにそわそわしてちゃ意味ないだろ?」
「ほっほんとに?!」
「ほんとーに」
ぱぁっと笑顔を作る祥を見て思わず笑が溢れる
自分からキスするのそんなに嫌なのかって思う気持ちがない訳じゃ無いけど
やっとニコニコ笑う顔が見れたからそんな気持ちも直ぐ消えた
「それと」
「なに?!」
「ふふっ落ち着けよ祥」
「あっ…ご、ごめん…っ」
「謝ることじゃないよ、でも祥はしゃぐと直ぐ転ぶからな」
「…子供じゃないんだしそんなことないけど」
「さあ?どうだかね〜」
自分でも自覚があるんだろう
俺にそう言われて祥がぷいっと視線をそらす
こういう反応するから虐めたくなるってこと祥は一生気づかないんだろうな
「それはまあいいんだけど」
「え?」
「祥はいつまで俺のカーディガン握り締めてるの?」
「――っ!」
「ふふっ手繋ぐ?」
「〜〜〜っ!つ、繋がない…!」
「なんで?」
「なっなんでって何でもだよ!」
「ふーん?人に見られるから?」
「……っ」
「なら俺の人差し指握る?」
「へ?」
「それだったら、まあ見られても気にならないし?」
「え…っ…で、も…」
「早くしないとここでキスするぞ」
「〜〜〜っ!ま、待って!握る!」
「よしよし」
ヒラヒラと手をかざして笑いかけると
真っ赤な顔した祥がどもりながらそう言う
はい、と手を差し延べるとおそるおそる返ってきた祥の手が人差し指をギュッと握ってきて何か笑えてきた
手を繋ぐのは嫌なのにこれはいいんだな
チラッと横見るとほんのり頬を赤く染めてどことなく嬉しそうな顔してて可愛い
ツンツンしてて大抵一人でツンけんした事あとになって落ち込む祥だけど
こういうふとした時に祥ニヤけてるとか知らないんだろう
「直輝…」
「ん?」
「……」
「どうした?」
「あの…さ…」
二人で小さな魚コーナーを回ってる途中
祥がグイグイと引っ張って話しかけてくる
何かと思って聞き返したらもじもじしていて視線を合わせようとしない
「祥?具合悪い?」
「違う…」
「んー?ならどうした?」
「……て」
「て?」
「…手…っ…ちゃんと繋ぎたい…っ」
「えっ?」
「直輝にも…っ、手ギュッてして欲し…い…」
「……」
ぶわっと顔を赤くした祥がそっぽを向きながら唇を尖らせてそういう
言ってることはデレてるのに
表情とかはまるで拗ねてる時とかと同じでそのギャップが凄まじい
「な、直輝…?」
「ん?」
「あの…、…だ、駄目…?」
横を向いて腕で口元を隠しながら言っていた祥が俺の反応が無くて不安げに見つめあげてくる
あーもうそういう所本当にアウト
可愛すぎるし9割型ツンケンしてるのにたまのデレの破壊力が凄すぎて今すぐ押し倒したい
「ダメなわけないだろ?」
「――っ!じゃ、じゃあ…いいの?」
「当たり前、そんなの一々聞くなよ」
そう言いながらしっかりと恋人繋ぎへと変える
途端に祥がビクッと体を跳ねさせるから一層笑みがこぼれた
「ねえ祥」
「なっなに…っ?」
「さっき俺が言ったこと取り消し」
「へ?」
パチクリと見上げてくる祥を見下ろしてほんの少し腰をかがめる
今このコーナーには俺達しかいないから大丈夫だろう
周りを確認すると
トントンと人差し指を唇へと向けた
「――?!」
「この合図が出たら?」
「〜〜〜っ」
「祥が可愛いこと言うから」
「だっ、て……」
「ほら早く、人がくるぞ?」
「で、出来ないっ」
「じゃあ人が来た前でキスしたい?」
「〜〜〜っ」
ぐっと唇を噛み締めて祥が眉をはの字にたれさせる
今にも泣き出しそうな顔して見上げてくるけど取り消したりしない
早く、って意味込めながらもう一度トントンとなぞると
やっと観念したのか祥がグイッと俺のネクタイを引っ張って
わっと驚いてるあいだに祥の唇が触れる
そのまますぐに離れようとする祥の頭を後ろから抑えつけて阻止すると
固く閉じられている祥の唇から舌を侵入させた
「――ッン!」
「…口あけて」
「や、ぁ…っ…んぅ…なお…来ちゃ」
「ンッ…平気誰も見てない」
「ふぁ…っんう…ぁ……っふ、ん」
恋人を繋ぎをしながら
空いてる手で祥の細くてふわふわな髪に指を通しながら
段々と身を委ねてきた祥の唇の中を掻き回す
暗い照明のなか静かな店内にゆったりとした音楽が流れている
でも今一番耳を通して聞こえるのは
クチュクチュといやらしく混ざりあう唾液の音と
甘く吐息を漏らす祥の喘ぎ声だった
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