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02
「んぅ…っん…ぁ、なお…っ!」
「…しー」
「っバカ」
「ふっ腰抜けた?」
「〜〜〜〜っ」
祥の感じやすさには本当に驚かされる
ほんの少しキスしてただけなのに
もう自分の足で立てない祥が胸にぐったりともたれかかってきて
潤んだ瞳で睨みつけながらシャツをキュっと掴んでくる
「本当キス弱いな」
「うるさい…」
「ふふっ落ち着いたら行こっか」
「うん」
クシャっと前髪を撫でてやる
そうすると気持ちよさそうに目閉じてすり寄せてくるからほんとお手上げだ
祥に骨抜きにされてるのは俺の方だけど当の本人は自信が無いんだから自覚なしにも程がある
それは中学からだし今に始まったことじゃないけどほんと…
よく今の今まで俺、祥の隣にいて理性保ってられたよなってほんの少しだけ自分を褒めてやりたくなったけど
結局それが出来なくてあの日無理矢理襲ったわけだし、それを思い返すと苦虫をかみつぶすような気分だった
それから二人で暗い中ではこっそり手繋いで歩いたりして
最初は周り気にしてビクビクしてた祥も段々と慣れてきたら楽しそうに笑って水族館を見て回っていた
「疲れたか?」
「ううん!楽しいよ!」
「そっか、よかった」
「直輝は…?」
「んー祥がもっと大胆に誘ってくれたら楽しいかな〜」
「……はいはい」
ニコニコしていた祥の顔から笑顔が消えてはぁとため息が聞こえる
あーあー、拗ねてる拗ねてる
なんて心の中でニヤニヤしながら祥のこと抱き寄せて楽しいよって言ったら
顔がみるみるうちに赤く染まって言って本当にいじめがいがある
そのまま後ろから祥の肩抱き寄せながら喧嘩口調で話しながらもお互い笑ってたときふと視線を感じた
チラッと横目でそっちを見ると
大学生くらいの男達の中、一人が祥をジッと見ているのに気づく
…………なんか気に食わないな
「祥こっち行こっか」
「え?でもまだあっち見てない…」
「イルカのショーあるらしいよ?」
「イルカ?!行く!」
「はしゃぎ過ぎてプールに落んなよ?」
「バカにしすぎだ!」
「落ちても俺が人口呼吸してあげるから」
「〜〜っ黙れ!」
そんな風に変わらず祥をからかいながら歩き出す
まだフロアの中を見回ってなかったけど
なんとなくそいつの視界の中に祥を入れるのが嫌でイルカの方へと誘導して
ちょうどよく後少しでイルカのショーをやるグッドタイミングで隣の祥はウキウキとはしゃいでいた
イルカの方へ行くと夜の回だって言っても
アクアリウムみたいな何か特別な期間限定のイベントらしく人が多い
適当な場所探して座ろうと思ったら
着いた途端祥は真っ先に真ん前へと走っていく
「直輝!早くおいでよ!」
「……はぁ5歳児」
「なんか言ったー?」
「なーんも、後ろ向いてると転ぶぞ」
「はいはい!」
「………」
祥じゃなかったら絶対前になんか行かない
ていうかそもそもこんな人の多いところに来たいとさえ思わないし
イルカ見て何が楽しいか分からないし
水族館自体魚見てもこいつらこの後食われんのか?くらいにしか思わないけど
祥と居るとそんな捻くれた事も考えない
案外魚もちゃんと見ると色々居るんだなって知ったし
イルカも見慣れると可愛い顔してる
祥を好きにならなかったら俺の人生ほんとにつまらない世界で終わってた
そんなこと何でかしみじみ思いながら
始まったイルカショーを見る
飼育員の声でイルカたちが鳴き声をあげて回ったり跳ねたり潜ったり
期間限定でやってるナイトなんちゃらってやつは
イルカが余裕で入れる円状の筒みたいものを七色の鮮やかなライトが煌めきながら覆っていて素直に見ていて楽しかった
「わーっ!あははっ!直輝見た?いまの!」
「ふふっ見たよ凄かったな」
「ねっ?イルカ可愛いなぁ飼いたい…きっと陽も喜ぶよ」
「……あぁー確かに陽も喜びそうだな」
素っ頓狂なこと言ってるけど祥は本気で言っていて
俺もふと考えたら確かに小日向家の兄弟はどこか抜けてるから二人揃って喜びそうだ
「直輝!次どこ行く?」
「んー、海月も今だけの装飾になってるみたいだけど行くか?」
「行く!」
イルカショーも終わって沢山の人ごみの中を二人で次どこ見るか相談しながら歩く
海月を見に行くことに決めたら
俺達はそのまま真っ直ぐにそのフロアへと向かった
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