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それから数日くらい経って、 学校が休みで就職先になる美容院のバイトが夕方から入っていた日約束通りあのオーナーがいるお店に向かった お店について外観を見て昼と夜じゃこんなにも受ける印象が違うんだなと思う なんだかオーナーみたいだなとも思った 黒いドアをあけて中に入ると店内もバーの時みたいなシックなイメージよりも落ち着いた静かなクラシックが似合いそうな雰囲気だ 女性客も多いけど男もチラホラ居る 辺りを見回していると ハチミツ色のような人工的じゃない綺麗な金髪でサラサラな髪の高校生くらいの店員に声をかけられた 「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか?」 「はい」 「でわ、こちらへどうぞ」 「……」 優しそうなたれ目をもっとたれさせて笑う青年はなんだか少しだけ祥を思い浮かべさせた 席についてからランチのメニューとお水を運んでくる店員に声をかける 「…あの、オーナーさんいますか?」 「オーナーですか?」 「前、バーの時間の時よくしてもらったんで一度挨拶しておこうかなって」 「ああ!ちょっと待ってくださいね!」 パチパチと驚いていた店員は俺の話を聞くなりすぐ様にっこりと笑ってバックヤードに戻っていった なんのメニューにしようかな〜 なんて思ってランチのメニューを見ていると聞き覚えのある声が聞こえてくる 「客って誰よハル」 「イケメンのお兄さん!オーナーもしかして…」 「ばっか!俺を狼だとでも思ってんのか?」 「え、違うの?」 「ハル……お前は俺の味方だと思ってたのに…」 穏やかな店内に聞こえるなかの良さそうな二人の声 さっきのあの男の子ハルって名前なんだ… ポカポカした笑顔を思い出して名前とおりの子だと思う 「お待たせしまし……!あ!お前この前のか!」 「ども〜」 「なんだ!社交辞令かと思ったのに本当に来たんだな」 「借り作ったままとか俺嫌いなんで」 「あははっそっかそっか〜」 「オーナーとどんな知り合い何ですか?」 「ハルは下がってろ!お前他にやることあんだろ?」 「俺はオーナーが変なことしないか見守るのも一つの仕事です」 「相変わらず手厳しいな……愛しの陽ちゃんみてえに優しくしろよ」 「陽ちゃんって呼んでいいのは俺だけなの!陽ちゃんは特別だからいいの!」 「わかったわかった、ほらオーダーとってこい」 「………節操無しは嫌われるんだよオーナー」 ハル、と呼ばれた男の子はジト目でオーナーにそれだけを告げると他の卓へと向かっていった 「悪いな騒がしくて」 「全然……仲良さそうでいいじゃないですか」 「あいつね、俺の後輩のガキなんだよ」 「へ〜」 「高校一年なって生意気でさ〜…この前なんか!」 そう言ってハル君の話をするオーナーはやっぱり太陽みたいにニカッと笑う笑顔が似合う 黙ってればこの人モテるタイプなんだろうな 顔も整ってるし背も高いし体も引き締まってるし それにやっぱり大人なだけあって余裕の色気みたいなものがある 「悪い悪い!つい話し込んじまったわ……メニュー決まったか?」 「ん〜」 「悩んでるならオススメメニュー食えよ、うまいから!」 「じゃあそれで」 「あいよー、んじゃちょっと待っててな」 メモ帳に何やらササッと紙に書くとバックヤードに戻っていった オーナーてことはここのお店全部切り盛りしてるのあの人なんだよな… 内装も装飾もあの人の好みなのか 店内を見てるとやっぱり初めて会ったときの知的でクールなオーナーっぽいと思う あの人の本当の顔はどっちなんだろうか なんてことを思っているとオーナーが料理を運んできた 「ほら、食え!お前細いしなもっと食え」 「…細くないですよ」 「そうかー?腕なんて俺の半分じゃね?」 そう言ってオーナーが俺の二の腕を鷲掴みする 「あ、でも意外と筋肉あんな!」 「俺も一応鍛えてるし」 「あれか、脱いだら凄いぜ〜タイプか!」 オーナーの言葉に思わず笑ってしまった なんだその子供臭い例え方 「そこまでじゃないですよ、食べていいですか?」 「あ!悪いなどうぞ」 エビフライも付いているオムライスを一口スプーンにのっけて口の中に運んで驚いた 「あ…ほんとに美味しい」 「だろ?」 「へ〜オーナーさん本当に料理うまいんですね」 「疑ってたのか?!」 「そうじゃないけど驚いたってだけですよ」 「気に入ってくれたならよかった、じゃあ俺は他にも仕事あるから帰るときまた声かけろよ」 そう言ってヒラヒラと手を振って戻っていく 俺も料理が好きだから家で作るけど本当に美味しかった そう言えば祥に手料理出したとき美味しい美味しいって喜んで食べてくれてたなーとか思い出す 振られてんのに未だに忘れられない自分の女々しさを消すようにしてふわふわのオムライスを胃の中に入れた 帰り際言われたとおりオーナーに声をかけると会計はいらないって言われて困る ぐたぐたと押しつけあいをするのも嫌で どうしようかと思っていた時オーナーが口を開いた 「そんなに奢られんの嫌か?」 「今日はこの前のお礼で来たし、本当に美味しかったんで」 「ならよ、今度俺の家来て新しいメニューの試食してくんね?」 「え?」 「俺の料理気に入ったなら付き合ってくれよ!」 「……いいですけど…それむしろオーナーの迷惑になりません?」 「いーのいーの!そんかわり俺の愚痴にも付き合えよ」 「…じゃあ」 オーナーとは話すのも苦じゃないし 料理を教えてもらいたいとも思った俺は来週の日曜日の夜店で待ち合わすことになった 「…今日もご馳走様でした」 「おう!」 「日曜また来ますね、じゃあオーナーさんこの後も仕事頑張って下さい」 「かがり」 「え?」 「オーナーさんじゃなくて、耀って呼んでくれ」 「かがり…さん?」 「そうそう」 「…わかりました、じゃあ耀さんまたね」 「じゃな〜」 お店の外で耀さんに見送られる かがりって名前だよな? どんな字書くんだろうか…… 意外と日曜日楽しみかもしれない ちょっとだけ新しく出来た人間関係にワクワクした 耀さんの家いく時なんか酒でも持ってた方がいいかな〜 そんなことを考えながらその日は一日終わっていった

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