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「お風呂出たよー」 「おっグッドタイミングだな、運ぶの手伝ってくれ」 「うん、これ持ってけばいい?」 「おう」 タオルで髪から滴る水を拭き取りながらリビングへ戻ると嬉しそうな耀さんが俺を見て笑う 子供みたいに無邪気に笑うから この人がもう40歳だなんて信じられない 見た目も30前半にしか見えないし 色々若すぎる そんなこと考えながら耀さんの背中に続いて料理を運んだ 「おし、食うか!」 「いただきます」 「食べろ食べろ」 ニコニコ笑う耀さんをの横で出来たの手料理に箸を伸ばす 「あ、美味しい」 「だろ?俺の自信作だからな~」 「耀さんの料理はどれも美味しいよほんとに」 「おっ、なんだよ瑞生ちゃん」 「ちゃん付けキモいよ」 「は~……ハルも瑞生も冷たいね~」 「………ハル君?」 「あっ、そうか瑞生も一回会ってたよな」 「あの綺麗な髪の優しい男の子でしょ?」 「そう、そいつが今日も俺にだけ冷たくてさ」 「へー、どうせ耀さんがまた子供みたいな事したんでしょ」 「してねえよ!」 「さあ、どうだか」 お酒を飲んで一層耀さんの目もとが垂れ下がっている ほんのりと顔も赤いし いつものクールなイメージよりも 可愛いとさえ思えた 「んでよーハルが可愛いんだ」 「ふふっ俺もハル君好きだよ」 「珍しいな」 「ハル君、少しだけ俺の好きな子に似てるから」 「へえそうか、瑞生も可愛いとこあんじゃねえか」 「………ご飯冷めるよ」 なんの反応もない 俺が今のわざと言ったの気づいてる癖に あくまでも知らないふりをする 好きな子に似てるのは本当だ ハル君のタレ目とか笑い方、 どことなく祥を思い出させる でもそれをわざと言ったのは少しだけ耀さんの反応を見たかったからだけど 本人は相変わらずヘラヘラと締りのない顔してお酒を片手に愉しそうだ 「耀さん飲みすぎ」 「そうか~?」 「そうだよ」 「大丈夫だ気にすんな」 「…でも、いつもよりもペース早いよ」 「………」 「耀さん?」 「…瑞生」 「えっ、か…がりさ…っ、んぅー」 手に持つグラスを奪おうとして 逆に手首を掴まれ引っ張られるままにキスをされる 「ふ…っ……ん、耀っ…さ……んっ!ちょっと…っ!」 「………」 「はっ…なに、急に……なんでいきなりがっついてるの…」 「……なんでか分からねえか?」 「……………」 何を考えてるんだろう さっきまで まるで気にもとめてませんって顔して笑ってた癖に 今は笑う事無く真っ直ぐに耀さんが見つめてくる ちょっと怒ってるんだろうか いつもよりも少しだけ冷たいきがした 「…妬いた?」 「………」 「耀さん、俺が好きな子の話したから妬いたの?」 「……ふっ」 「笑って誤魔化さないで」 「……ああ妬いたよ」 「……」 「年がいもなく妬いた、お前が俺の時には見せないような優しい目して好きな子思い返しながら話すのを見て苛立ちだって感じてる」 「……俺の事欲しい?」 「………」 「………いつも同じところで黙るよね」 「……そんなことねえよ」 「あるよ」 「ねえよ、もうこの話は終わりだ」 「……弱虫」 「え?」 フローリングを見つめながらポツリと心の声が漏れる 耀さんが聞き返してきたのと同じタイミングで顔を上げると 隙だらけの耀さんを押し倒した 「なっ、瑞生?!」 「セックスしようよ」 「はぁ?」 「…だから、セックスしようって言ってるの」 「………降りろ」 「やだ」 「瑞生、今すぐ俺の上から退くんだ」 「命令しないで、どうするかなんて俺の勝手だろ」 「…………はぁ」 ため息を零した耀さんが腕で目を隠す ああ、ほらまたそうやって逃げる いつも肝心なところで 大切な言葉を飲み込むから 唯一分かるのはその瞳にうつる想いだけなのに それさえも隠されたら 一体いま何を考えてるのも分からない 「手、退けてよ顔見えない」 「なら先に降りろ」 「じゃあいいや、このままセックスすればいいし」 「っ、お!おい!」 「なに?」 「瑞生やめろ」 「………ねえなんで?」 「あ?」 「そんなに怒るほど俺と寝るの嫌だ?やっぱりあの一回で男は面倒って?だから言ったじゃん、優しくしなくていいんだって耀さんは俺の事使って気持ちよくなればいい」 「………」 「続けていいよね?」 「だから嫌なんだ」 「なに?」 「……」 「――ッ?!」 ぼそりと耀さんが何かを呟く だけど低く小さいその言葉と声は俺の耳には届かず聞き返した時には視界が逆転していた 「そんなに抱いて欲しいか?」 「……うん、だって俺達セフレなんでしょ?」 「………………」 「優しさとか要らない、お互い満たされればそれでいい」 「酷くされてもか?」 「……そうだね、別に酷くされても構わない…優しくされる事の方がよっぽど残酷で酷いよ」 「……後悔すんじゃねえぞ」 「………言ったじゃん、しないよって」 「……」

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