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◇◇◇◇ 「み…っずき、…くん…ッ!アァッ!」 「ん?なあに後藤さん」 「キス…っ…ん、ぁっ…はうっ…キスしてっ」 「……ダーメ」 「やぁ…っ!な、んで…ッ」 グチュグチュとアナを掻き回す度に 俺の下で可愛らしい童顔な顔立ちの男が乱れる ホテルの一角で、俺よりも歳上の同じ男を抱いて 求めあっては中身のない愛の受け渡しを繰り返していた この人を抱くのは何回目だったかな そんなこと、覚えてない 後藤さん――と呼んだこの男の人は こんなんでも一応有名なところの部長らしい でも今はただの男だ 俺のしたで善がって、強請って、快楽を求める こんなに可愛くお強請りをしては離さない ただの人間だ 「ぁっん…ああっ…み、すぎ…っくん…好きっ…好きぃっ…!」 「うん、俺も好き」 「ひゃっ…!ああっ…や、ぁあっ!」 「…ッ…」 両手を伸ばしてくる後藤さんに応えるようにして 体を屈めると腕が俺の首に巻き付いてギュウッと離さない 大きく猫目がちな瞳からはボロボロと涙が溢れていて 実際の年よりもうんと若く見える童顔な顔はグチャグチャに快楽によって歪んでいる 何度も好きと言ってくれるお返しに 耳元で俺もと返して微笑みかけると後藤さんは長く絶頂を迎えていた 「後藤さん?大丈夫?」 「………」 「…拗ねちゃった?」 「………どうしてキスしてくれなかったんだ」 「ふふっ後藤さん俺の事好き?」 「――ッ?!」 「ん?」 「〜〜〜〜っ、…す、好き…じゃなかったら…っ…こんなことしてない」 「そう、嬉しいな」 「瑞生君は…どうなんだ?」 「俺も好きだよ後藤さん、……ね?もっかいしよ?」 「えっ…!い、今さっきしたばっか…!」 「まだ元気でしょ、俺もっとしたい」 「っ……じゃ、じゃあまた…明日も会ってくれるか…?」 「ふふっ、んーそれは後藤さん次第かな〜」 「そ、なの…っんぅ…ああ、ずる…っあん!」 後藤さんの好きは一体何の好きなんだろう セックスをしてれば勝手に感情は沸き上がる 男なんて尚更、気持ちよければ簡単に相手を忘れられなくなる 快楽に忠実なんだ 後藤さん自体は結構気に入ってもいる 頭もいいし話してて楽しい 顔も悪くないしいつも眉間に皺寄せてるけどエッチの時は可愛いし 笑顔も結構好きだ 元から男も女も線引きなんてなかったし バイなのかって聞かれると そういうつもりもなかった なんて言うか本当にどうとも思ってなかった ただ目の前に生物学上ではオスだとかメスだとか そのぐらいの認識でしかないほど 他人に興味がなかった 「後藤さんもうイキそう?」 「や、ぁ…っ瑞生…!くん、っああん」 「どうしたの?」 「名前っ…呼んで…!」 「慧吾さん」 「ん〜〜〜っ…!ああっん!好き、だ…っ瑞生、くん…っ」 そう言って何度目かの絶頂を迎えると 後藤さんの意識が段々薄れいく 頭を撫でてやると目元が赤く染まった瞳を閉じてぐっすりと眠りについた 今迄の俺ならとっくに付き合ってたと思う でもなんでだか今の俺は誰かと付き合おうとまで思えない そう言葉にしようとすると 喉につっかかって飲み込んでしまう 後藤さんが今の先を求めて俺の言葉を待っているのは知ってたけど、どうしても言うことが出来なかったんだ 「ん……、…瑞生…くん」 「おはよう、まだ時間あるしゆっくりしてて」 「………だったら…瑞生君も、こっちに来て欲しい」 「ふふっ後藤さん珍しく甘えん坊なの?」 「なっ!う、うるさいぞ!」 「いいよ、今の可愛かったから一緒に寝よ?」 「……………ずるいな瑞生君は」 「そんなの今更でしょ?」 「……そう言われたら、俺はもう何も言えなくなるよ」 「何も、言わなくていいんだよ慧吾さんそのまま眠って忘れて」 「……………好き」 布団を顔まで被って顔を隠した後藤さんが小さく呟く 後藤さんの横で立てひじをついて とんとんと布団の上からあやすと目のしたまで布団から顔を出すと俺を見上げてきた 「俺も好きだよ、慧吾さん」 「――ッ!」 「ふふっ顔真っ赤」 「〜〜〜っう、うるさいぞ!」 「慧吾さん暴れないの、ほら寝て?」 「………」 「大丈夫、起きるまで横に居るから」 「………わかった」 ほんの少し不満そうな後藤さんを見つめて微笑みながら髪を撫でる 気持ちよさそうに目を細めたあと 後藤さんはまた眠りについた 安心したように眠る後藤さんを見つめて その横で俺は一人、 グルグルと訳のわからない喪失感ばかりが溢れかえっていた

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