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なんだか息苦しい
耀さんの名前を怜さんが口にした途端
首を綿で締め付けられるようにじんわりと息苦しさが襲ってくる
「んー、瑞生くんあんまり表情に出ないタイプよね」
「そうですか?」
「だけど内心、荒れてるでしょ?あたしが耀に本気だって知って、苦しいだろ?」
「さあ、どう思います?」
「お前本当に食えないタイプだな」
「どーも」
もう女のふりをするのは辞めたのか
怜さんの口調に男っぽさが混じり出す
長い黒髪を束ねると俺の上から降りてテーブルが置いてある椅子へと向かい煙草を取り出し火を付けた
「俺の事、見覚えないかい?」
「……?」
「耀のバーで一度会ってるんだけどね」
「あ…っ!」
「そうそう、瑞生くんに酒にも酒言葉があるって事を教えてあげたの俺」
「あの時の…」
「まさか耀と本当に関係持ってるとは思わなかったけど、まあいい」
「………」
長い脚を組んで、長く煙を吐き出す横顔はハッキリ言ってどことなく憂いを感じさせては綺麗だと思う
なんで女装なんてものしてるかは分からないし興味もないけど
怜さんの事全部知ってて耀さんは受け入れてるんだって思うとまた息苦しさが襲ってきた
「俺別にオカマってわけじゃないから、それだけは勘違いしないでね」
「……それはわかったんですけど、結局怜さんは俺の事どうしたいの?」
「つれないなぁ~もっと楽しもうよ、な?」
「セックスして?別に構わないよ、俺が女側?」
「ふっ潔いい子は好きだよ」
好きだと言われても何だか複雑だ
別にセックスをするのは構わない
だけど、耀さんと別れてから一度だけ他の男に求められるまま女役になった事があった
でもその時全くと言ってほど気持ちよくもなければ寧ろ痛みしか感じなかったし
一度もイク事なくて結局相手が達した後に口でイカせて貰った事を思い返した
「でも俺抱いても面白みなんもないと思うよ」
「なに?怖くでもなったのか?」
「そうじゃない、俺も女役した事なんてなかなか無いから気持ちいいかどうか分からないよって話」
「ああそれなら心配ない、ちゃんと気持ちよくしてやるよ」
「………どーも」
俺、この人の笑った顔嫌いだ
ニヤニヤと愉しそうにほくそ笑みながらビールを片手に近づいてくる怜さんを見てそう思う
気持ちよくしてくれとか一度も頼んでないしありがた迷惑だ
「さ、無駄話はおしまい」
「……」
「瑞生くんは俺にされるがままそこで善がってればいいから」
「それじゃあつまらない」
「ふっ生意気だな、大人しくしとけって言ってるんだけどね?」
「分かってますよ、分かってて返事したつもり」
「ん~、俺本当に瑞生くんみたいな子タイプなんだよな…沢山鳴かせてやるよ」
「………」
「気に入った子は死ぬほど鳴かせてやりたくなるんだ」
優しく笑ってるつもりだろうけど
胡散臭さしか感じない
この人サドなんだろう
きっと女装してるのも、引っ掛けた男が驚く反応見るのが堪らないだとかそういうくだらない理由何だろうって想像できた
はぁ、とため息をついてどうするかと横を見た時怜さんの細い指に顎を掴まれ上を向かされる
そして瞳がぶつかりあってから直ぐに唇を塞がれた
「ーーーッ」
「……、…どう?おいしい?」
「っけほ…っ、なに、今の」
「んふふ気持ちよくなれるお薬よ~」
キスされた時に流し込まれたビールと共に何か固形物ものみこんでしまった
怜さんの言葉から考えるなら
まさかだけど媚薬みたいなやつ何だろうかって考えたら本当とんでもない人に目をつけられた事にウンザリする
「媚薬?」
「さあ、それは自分の体で確かめな」
「怜さんって自分のテクニック自信ないんだ?」
「ふふっ本当生意気だな口輪でもつけとく?」
「――っ!」
どこから取り出したのか怜さんの手に持つボール型の猿轡が口に嵌め込まれる
さっきから思ってたけどこの人何処からそんな道具取り出してるのか謎だ
「案外冷静だな」
「………」
「あ~悪い悪い、今喋れないんだったな」
「……………」
わかっててわざと言う辺り
怜さんの性格の悪さが垣間見える
ニタニタと意地悪く笑う笑顔もだけど
耀さんも怜さんもこうやって翻弄しようてするところそっくりだ
「あーなんか、見てるだけでもすげえ興奮する」
「…ッ!」
「耀の時よりも天国見せてあげるよ」
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