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「少し意地汚ぇんじゃねーの?」 「…………別に…俺が居る意味ないんだし」 「…拗ねてんのか?」 「はぁ?!」 両手をシーツの上に張り付けられて 仰向けに押し倒された俺の上に耀さんが覆いかぶさっている この状態じゃまともに顔を隠すことも出来なくて真っ直ぐな視線が痛いほど見つめてくるから息がしづらい 「瑞生、こっち見ろ」 「………やだってば」 「なんでだ?」 「……………」 「俺にバレるのが怖いんだろ」 「――ッ」 「隠してたって、いつまでも隠せるわけじゃない。誤魔化してたって、気持ちはそう簡単に制御出来るもんじゃねーよ」 「…ッだから、なに?今度は説教?」 「ちげーよ馬鹿」 「んぅっ?!」 耀さんの言葉に苛立ちを感じ噛み付くように睨み返した時、視界が遮られた そして唇には暖かい俺じゃない誰かの体温を感じて、それが耀さんの唇だと思うと再び身体の熱が蘇る 「ふ…っ…ぅん…、っあ…は、ぁあっ」 「瑞生」 「い…やだ…っ…触るな…!」 「俺に言うこと無いのか?」 「な…いっ…ぁっ…んぅ!いや…見るなっ」 頬にオデコに鼻の頭に首筋に鎖骨に あちらこちらにキスをしては俺の目を見てくるその視線に心臓が痛み出す 耀さんのこの瞳が嫌いなのは さっきの言葉通り俺の気持ちが筒抜けになっているようで怖いから 鈍感なくせに、なんで、気づくんだ どうして見逃して欲しい気持ちばかりをこの人は見抜いてしまうのだろう 「耀っさ…ん…っ…や、めて…!」 「辞めねえよ」 「い、やだ…っ!」 「逃げるんじゃねえよ」 「〜〜〜〜っ」 肌の上を耀さんの手のひらが触れる度に 肌を通して耀さんの体温を感じる度に まるで強いアルコールを飲んだかのように頭の奥がクラクラして麻痺する 感情と理性がグチャグチャになっては ぶつかりあう度に痛みを感じた 言いたくない 言いたい 見たくない 見たい 触れたくない 触れたい 愛なんか要らない 本当は―― 本当は……なんだ…? 「ねえ〜?ちょっと俺のこと忘れてない〜?」 グルグルと頭の中を埋める言葉に疑問を感じていた時怜さんの言葉によって引き戻された 「っ!れ、いさん!怜さ、ん!」 「あらやだ俺のがやっぱり好きみたいよ耀」 「お、おい!こら!」 「怜さ…っ…怜さんっ」 「瑞生!そんなヤツに抱きつくな!オカマ菌が移るぞ!」 「なにその頭の悪そうな悪口」 「怜は黙ってろ!口を挟むな!」 「耀こそ引っ込んでな、瑞生君から俺のところに来たんだ」 ハッとして直ぐ 怜さんに腕を伸ばして逃げ込む あのまま耀さんに触れられていたら おかしくなりそうで怖い 頭の中に浮かび上がる幾つもの矛盾した言葉 どれが本当でどれが嘘なのか分からない 分からないんじゃなくて分かりたくない これ以上掻き回されるのは後免だ 「瑞生君まだ薬抜けきってないだろ?俺が楽にしてあげよっか」 「も、っ…なんでもいい……早くして…っ」 「あらー?どうした?」 「い、いから…っ早く!」 疼きだした知らないこの気持ちを打ち消したくて怜さんに縋りつく 首元にうずめていた顔をあげて怜さんの切れ長の瞳を見つめると、まだグロスの残っている唇に俺からキスをした 怜さんの事利用してるのはわかってる だけど耀さんに変な言葉を口にする前にいつもの俺に戻りたいんだ 「ふ…っう…ん」 「ん〜瑞生君可愛い」 「………」 「そんな睨むなよ耀、瑞生君はお前のものじゃないだろ?」 「…っ」 「分かったら帰りな、そこに居ると邪魔だ耀」 怜さんのその言葉に 後ろに居る耀さんが息を呑む そうだ、このまま耀さんに愛想尽かされればいい 俺なんかに構わなくなればきっと―― そう、思った時背中を鋭い痛みがかけ走った 「いっ…?!」 「瑞生は誰のモノじゃあねえけど」 「え…?」 「誰かに渡すつもりもねえよ」 「――っ?!」 「ふっムキになっちゃって、歳考えろよなじじい」 「怜こそ、青臭い餓鬼がでしゃばるんじゃねえよ」 怜さんに抱きついている俺の背中から 耀さんがくっつき腰に手を回してくる 耀さんが耳元で話す度に 怜さんに一層逃げ込んで 怜さんが俺に触れる度に 耀さんはもっと俺を抱きしめる その繰り返しはどんどんエスカレートしていって気づけば2人に挟まれたまま前後から攻められていた

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