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「ひ…っ…や、ぁ………も…離れてっ」 「離してやれよ耀〜」 「お前こそどさくさに紛れて瑞生に触れるんじゃねえよ!」 耳を後ろから耀さんに噛まれて 頭の奥に直接響くように耀さんの声が流れ込む 声と吐息だけでカクカクと腰を揺らす俺を見て意地悪く微笑んだ怜さんには、乳首を根元から摘まれて先端をコリコリとさすられた 身体中が気持ちよくて堪らない 抗っていた理由がふわふわとした感覚に沈み出して頭がぼんやりとしてくる あぁ、もう、このまま 快楽だけを感じて理性なんてもの捨ててしまいたい そう、思うのに 心臓の奥の奥は焦げ付くように痛みを増していった 「あ…っ…あぁっ!…も…やだ…やだぁ…っ」 「瑞生?!」 「あらっ泣かせちゃった?」 「…っひ…怜さ…、…手退かして…っ」 「やーだね」 「おい怜!」 「うるっさいな」 はいはい、なんて面倒だとでも言いだけに返事をしていても乳首を弄る手は止まらない 「あぁっ…あーっ…ん…っ…も、なんで…っ」 「どうしたの瑞生君、さっき迄とろとろだっただろ?」 「…っあ…なんで…俺に触るの……っ」 「えー?可愛いから?」 「黙ってろ怜」 「はいはい」 いやだと言っても逃してくれなかった怜さんの手を耀さんが引き剥がす くったりと後ろに倒れ込んだ俺を受け止めてくれた耀さんが怜さんから隠すようにして抱きしめてきた 一呼吸置くと 散々弄ばれて振り回された事にふつふつと怒りがこみ上げる 「耀さん…っも…怜さんも…っ喧嘩したいならどっか行けよ…!俺を巻き込むな!」 「瑞生悪い…」 「〜〜〜っ謝るくらいなら触んな…!…なんで…っなんで付き合ってること隠してたんだよ!どうして今だって俺が言う迄……っ」 「は?ちょっと待てよ、誰が付き合ってる?」 「とぼけるな…ッ……、…怜さんと…付き合ってるんだろ…」 「……は?」 抑え込んでいた言葉が溢れ出して それを聞いた耀さんがキョトンと見てきた あんぐりと口を開けて 間抜けな顔をした耀さんがぱちくりと瞬きをする その様子を見ていたら、嘘をついてるとかじゃなくて 誤魔化してるとかそういうのじゃない気がしてきた俺も開きかけた口を一旦閉じる事にした 「ちょっと待て、俺がコイツと付き合ってる?」 「……違うの?」 「違えよ!怜に言われたのか?!」 「…………」 「うふふ」 みるみるうちに鬼の形相になった耀さんから目をそらして否定も肯定もしないまま怜さんの方を見る 俺とバッチリ目が合ったとたんに そんな今更な笑い方をされて騙されたと直ぐに気づいた 「騙して…」 「あ〜ら、騙してたなんて辞めてよね」 「…え、じゃあ…なに?どういうこと?」 「昔、付き合ってたんだから恋人って言っても嘘じゃないでしょ?」 「昔…?」 「そう、昔。あとその後ろに居る今にも暴れ出しそうな親父宥めてくれる?」 「え?」 「親父って言っても流石に元ヤンに殴られるのは勘弁」 「元ヤン?!」 「瑞生君、こいつの事なんも知らないのね」 ふっと笑った怜さんが脚を組んで椅子に座り直す 本当に今すぐにでも飛びかかりそうな耀さんから距離をとった怜さんが再び口を開いた 「俺と耀の事聞きたい?」 「……」 「じゃあ教えてあげる」 まだ何も返事してないのに喋り出す怜さんの話を遮るように急に大きな音が響き渡る ビクッとしてその音の方へ視線を向けると さっき迄黙っていた耀さんの拳が壁へと触れていて さっきの音の正体が耀さんが壁を殴った音だと気づいた時、今度は耀さんが口を開いた 「怜、お前と俺の事は俺から話す」 「あらっありがとう」 「…悪戯も度を超えたら笑えねえぞ」 「顔怖いわよ〜瑞生君が怯えちゃうだろ?」 「……………」 あんなに子供っぽく笑ってばかりいた耀さんが嘘みたいに低く怒りの含んだ声で話していた 確かに、今の耀さんは怖い 俺の知ってる耀さんじゃない見た事のないまた別な顔をした耀さんだ 「耀さん…?」 「………瑞生悪かったな驚かせた」 「…いや……てか、手痛くないの?凄い音した、けど…」 「ん?平気平気〜これで俺もまだまだ若いって証拠になったかー?」 「………」 殺気を放っていたのが嘘のように優しく微笑んだ耀さんが頭を撫でてくる そしていつもと同じくヘラヘラと緩い空気を漂わせていた 「じゃあ、本当に付き合ってないの?」 「今は誰とも付き合ってねえよ」 「そうそう、コイツ干からびた親父だから」 「怜1発殴られなきゃ口閉じれねえのか?」 「あっはそんな事されたら俺の綺麗な顔に傷がつくだろ」 「綺麗も糞もねえだろお前は性格ひん曲がってんだよ」 「耀には言われたくないな」 「いいからさっさと出てけ!」 「はーい。…………なーんて言うと思った?」 「えっ?!」 残念そうに素直に返事をしたと思ったのに 一瞬の隙をついて耀さんに抱きしめられていた俺を引っ張りあげる 力がまともに入らない身体は簡単に怜さんの腕の中へと収まり、反抗する間もなく首筋に噛み付かれた

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