155 / 177

22

今もまた逃げようとしてる どうせなんて事を心の中で呟いて 無かったことにしよとしてる 結局のところ俺はなんて言い訳を考えていた時ふと頭から温もりが消えていった 「もう少し瑞生は休んで行けよ。 俺は店の準備があるから先に帰る」 「……あ……そっか仕事」 時計を見ればとっくに夜もふけている この時間いつもならバーを開いてる筈だし よく見れば耀さんの格好上はお店のワイシャツだ 「ごめん仕事だったのに……」 「んー? 俺が好きで来たんだから気にすんな。 んじゃしっかり休めよ」 「……」 クシャクシャと頭を撫でて耀さんが微笑む 俺が気まずいと思ってるのに気づいて この人が去ろうとしてるなんてこと考えなくても明確だ そういえばいつも泊まりをしてた時は 俺が朝起こしてご飯作って寝起き悪い耀さんベットから引きずり起こして 2人で一緒に出てたか俺が先に学校に向かっていたことを思い出した 「よしっ、じゃあ行くわ!」 「……仕事頑張ってね」 「あいよ〜」 身なりを整えた耀さんがヒラヒラと手を振ると気の抜けた返事をして鞄を持つ その姿を見ていたらふつふつと慣れない感情が湧き上がった 寂しい、なんてそんな 俺とは無縁過ぎる気持ちが浮かび上がってくる 自分から耀さんを遠ざけておいて その癖こうして耀さんが消えようとしたら寂しくなるなんてどうかしてるんだきっと ぼーっと部屋を出て行く背中を見ていた時 ピタリと耀さんの動きが止まる そしてくるっと後ろを向くと 困ったように笑いながら耀さんが口を開いた 「瑞生、俺と居たい?」 「……は?」 「そんな捨て猫みたいな目で見られちゃ帰れねぇよ」 「意味わかん無いんだけど」 「もっかい聞くぞ」 「だから」 「瑞生」 しょーもない そんなフリして耀さんを仕事に行かせようとした俺の言葉を遮って少しだけ大きな声で名前を呼ばれた 「俺と一緒に居るか、1人でラブホを堪能するか。 とっちがいい?」 「……」 「口にしなきゃ分からねえよ」 「…………」 耀さんが真っ直ぐ見つめてくる ドクドクと心臓が早く鼓動を打ち出して 言葉を口にしようと思うのに声に出来ない 言葉にするのが怖い このまま何も無いふりして耀さんを見送るのがいつもの俺だ だけど今ここでそうしたら 2度と耀さんと会う事がないような気がして言葉が喉に引っかかる 「みーずきー」 「煩い……」 「ほらどうすんだ?」 「…………」 「ん?」 「……居て」 「ふっ」 「腰が痛いから居て」 「素直じゃねーの」 「……」 聞こえるのかさえ不安なほど小さな声でそう言うとドアからこっちに耀さんが戻ってくる やってしまった 何かとんでもない事をしてしまったかのような後悔がどっと押し寄せてきていたたまれない 寧ろ俺が今すぐこの部屋を出て行きたいぐらいにだ なるべく耀さんと距離を取ろう…… そう思った時モゾモゾと布団の中に潜り混んできた耀さんにギュッと後ろから抱きしめられた

ともだちにシェアしよう!