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「んー瑞生あったけー」 「……」 うなじに顔を寄せた耀さんがそう言ってキスをする 途端にドキドキと心臓が煩くて堪らない 腕を回されてるからきっとこの鼓動も耀さんに伝わってると思うと一層体が緊張する 「瑞生の心臓バクバク言ってるけど大丈夫かー?」 「〜〜ッ!」 「体調悪い?」 「ちっちが……!」 ずいっと顔を覗き込もうとする耀さんから慌てて距離を取る あんまりにも俺が大袈裟に離れたせいで 耀さんがバツが悪そうにそっと離れてしまった もうこんなんじゃ言い訳なんて出来やしない 明らか過ぎる態度にもきっと耀さん気づいてるだろうし 自分の中で整理をつけて切り離す前にここまで過剰に反応してしまうんだって知ったらどう処理したらいいのかわからない 「悪い」 「え?」 「嫌いなやつに触られるの嫌だよな〜」 「はぁ?!」 「え? 俺のこと嫌いだろ?」 「なっ、なんでそうなるのっ?」 耀さんの言葉に思わず食らいつく俺に驚いてポカーンとこっちを見てくる 本当にこの人分かってないのか…… なんだよ筒抜けかと思ってたら 鈍感にも程があるでしょ耀さん…… 心の底からため息をつきたい気分だ 「本当に俺が嫌いだと思うの?」 「え? あー……」 「信じられない」 苦笑いで誤魔化してるけど 肯定してるのと変わらない どうせ気付かれてるなら一層潔くって思ってたのにこの鈍感親父にはそんな期待寄せる事自体が間違っていた 「あー瑞生?」 「なに」 「くっついたりしねぇから寝ろよ、な?」 「〜〜ッ!ほんっと鈍感だなあんた!」 「え? 鈍感?」 ヘラっと笑っては距離を置いて横になる耀さんに枕で叩きつける 急に何するんだ!なんて言ってたけど 俺こそどうしてそこまで鈍感で居られるのか聞きたいぐらいだ それに俺もなんでガッカリしてるんだ…… バレてなくて良かった、さっきホッとした癖に今は耀さんに気づかれてない事にガッカリしてる 「お、おいっ落ち着けよ!」 「本当……ムカつくあんた」 「だからさっきから何を」 「俺ばっかに言わせて」 「え?」 「耀さんが好きなんだよ……!」 「…………ええっ?!」 「……その顔腹立つ」 お互い黙りこくったまま視線だけがぶつかっている 何か、言えよ…… あの日だって今日だって結局俺から耀さんに言ってるのに、耀さんはいつも俺を求め無い ああでもそれもそうか 別に耀さんは俺の事恋愛感情を持ってるわけじゃないんだから そう思ったら嘲笑が零れた それは勿論自分自身へと向けて 「耀さん今の忘れて。 俺疲れて変な事言ったみたい」 「……」 「後、やっぱり仕事行って。 同情とかも俺嫌いだから」 「瑞生」 「え……ッ!」 不意に後ろから抱きしめられて体が強ばる 今さっきまで自分の馬鹿さに冷静過ぎるくらい冷めて居たくせに耀さんに触れられた途端コレだ 顔が死ぬほど熱くなって抱きしめられた肩に意識が集中する 耳に吐息がふりかかってゾクゾクと体は震えるし微かに香る香水の匂いに心臓がぎゅうっと締め付けられた

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