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「分からないんだ」 「ん?」 「……明日にはもしかしたら俺は耀さんを好きじゃなくなってるかもしれない」 「そりゃあ……すげーな!」 「ちょっと、真面目に話してるんだけど」 「真面目に聞いてるよ。 でもそれだけじゃ分からねえよ、しっかり話してくれ」 「……仕事は?」 「おいおい今更だろ?」 「……はぁ……本当くだらないよ。 きっと耀さんが思う以上にどうしようもないと思う。 そんな事かよって笑うかも」 「笑わない」 「……」 「なあ瑞生、どんな小さな事だとしてもそいつが傷ついたことは小さな事じゃない。 瑞生が震える理由がそれなら、俺にとって笑う事でもくだらない理由なんかでもない」 「……ほんとお人好しだね……馬鹿みたい」 「なっ……!馬鹿はねぇだろ馬鹿は!」 「……でも嫌いじゃないよ耀さんのそういう所」 「素直に好きって言ったらどうだ?」 「うるさいな」 「ふっ、こっち来いよ。 今なら無料で甘やかしてやるぞ〜」 「うざい」 ベットヘッドに寄りかかって万歳をしてる耀さんに軽くパンチをする 早く来い、と言って足のあいだを叩いて呼んでるそこへと座り込むと耀さんの鍛えられている胸へと寄りかかった それから深呼吸をして なんで震えてるのかも分からない手のひらをギュッと握りしめる すると俺の手をその上から耀さんが包み込んでくれた 掌の温度を感じて、頭に1度だけ軽くキスをしてくれた耀さんの温もりを感じると静かに口を開いた *** 本当に昔の古い記憶 多分、俺が4歳くらいの時に 父さんが死んだらしい あんまりにも小さすぎて 覚えてる記憶は良く笑う人だったなってくらいで だけどその笑顔さえハッキリとは覚えていない どれも逆光で影がかかった写真みたいに 顔が思い出せないぐらい幼かった それから暫くして母さんが新しい男の人を連れてきた 相手にも俺より二つ上の男の子供がいて 要するにお互い未亡人で 結婚に進むまではあっという間だった 相手の、今で言うなら新しいお父さんも悪い人じゃない 気さくで仕事が出来て絵に書いたみたいにいい人だ 家柄も良くて何一つ不自由なく育てられたし 歓迎もされたし愛された それから暫くして母さんとお父さんのあいだに子供ができた 何もおかしい事じゃない 再婚して夫婦になってまだまだ若い2人なら当然のことだ 今ならきっとそう思える だけど小さい時は何もかもが不自然にしか見えなかった いきなり目の前に現れた人を父親だと思えなんてその時の俺は到底できなかった それは再婚して新しい家族になって数年経っても変わらない 小学生に上がって高学年になって 段々俺だけが疎遠になってるのに気づく 朝も昼も夜もどこにいても 笑顔で愛想を振りまく事だけはうまくなっていた時 ある事が起きた 新しいお父さんの家柄はみんなエリートばかりで 勿論、その子供も例外なくその道を行くことになっている 俺もやりたくもない習い事ばかりで 学校にまともに友達と呼べる存在なんていなかった でもそれでいいと思っていた 母さんがそこで笑っているから構わないって いつも2人の時だけは変わらない姿だったから仕方ないって そう思ってたから 母さんが困らない様にたった1人の家族だったから だから何でも黙って従っていた

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