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サプライズな展開
「天使(あまつか)さん到着しました!」
いつもと同じく事務所に行って
今日ある仕事を終わらせる為に撮影現場へと着いて車から降りる
最近は特にテレビの仕事が増えたけど
元はモデルなんだしやっぱり服の撮影の方が好きだ
演じて魅せる俳優や女優達は同じポジションに立って改めて凄いと思う
だけどそれよりもたった1枚の写真
それだけで人を惹き付けられるような写真を作り出す事ができたなら
それ1枚で物語が出来たなら最高なことはない
そう思う事ができるようになったのは
祥と付き合ってから、向き合ってからで
この仕事が嫌いじゃなくなったのも
ファンに対する気持ちが前向きになったのも
全部全部祥と触れ合ったからなわけだけど……
「……どうして居るんだ?」
「えへへっおはよう直輝」
「…………」
まさか現場先に来る見習いが
祥だとは夢にも思っていなかった
「祥、俺言ったよな?ここは辞めろって」
「え?」
「……とぼけんな」
「なんでそんな反対なんだよ……? 直輝のマネージャーの篠田さんは大歓迎って言ってくれたのに!」
「そうじゃなくて」
ズキズキと頭が痛む
こめかみを抑えるとどうしたもんかと溜息が零れた
1ヶ月前ぐらい
祥の学校で行事の一環でもあるインターンみたいなそんな感じのやつ
名前は忘れたけど実際にその場で働くやつ
他の大抵は美容室行ったりするけど
もうとっくに美容室で働いてる祥にとっては今更な話だし
元は祥の夢はヘアメイクアーティストだとか言うヤツで
芸能人の髪とか化粧とかそういうのをしたい仕事らしい
それで、俺の事務所もごく稀に
ほんっとにたまにそういうの受け入れたりしてたのが今回何の偶然なのか祥の学校にも話が来たらしい
でもここは色々と厄介な奴が沢山居るから
喜んで話していた祥には悪いけど来るなと言った筈なのに
今目の前に祥は居るわけで
「そんなに俺が来ることが嫌なのかよ」
「そうは言ってないだろ」
「そう言ってるようなもんだろ」
「話をややこしくするな」
「なっ……!そんな言い方しなくてもいいじゃん!」
「……」
ニコニコ笑って天使みたいに可愛くても
中身は負けず嫌いなうえに頑固だ
おまけに強気だし後は天邪鬼
特に俺に対しては酷いくらい
他の皆にはふわふわしてる癖に
俺には大抵口だけじゃなくて手も出るしな
「喧嘩腰になるなよ。 喧嘩する為に来たんじゃないんだろ?」
「直輝がそうなんじゃん……俺は楽しみにしてたのに……」
「……祥……悪かったよ。 だけど何かあったら俺を呼ぶってのだけは守れよ」
「何かあったら?」
「直ぐ分かると思うけど、祥みたいなやつここでは絶好の餌食だ」
「は?何言って……っん!」
「じゃあ行ってくる」
「〜〜〜っ!」
ポカーンとして俺の言ったことを考えている祥の唇にチュッとキスをする
いつまでもグタグタ言ってるわけにも行かない
二週間祥を俺が守ればいいわけだし
考えを変えたら仕事の時も祥といれるんだ
そう、気持ちを切り替えると
真っ赤な顔して口を抑えている祥にニヤリと笑いかけてカメラマンの方へと向かった
「金さん、おはよう」
「直輝君今日もイケメンね!」
「ありがとう」
「そのクールな所も大好きっ」
「はいはい」
男の癖にこんな喋り方をしている
金さんことカメラマンの金子さんに挨拶をする
そういやまだまだ初心者だった時には
金さんにいつもベタベタ触られるのが嫌いで避けてたよな
祥が来たおかげで俺が初めて
事務所での仕事を受けたことを思い出した
「直輝君、それよりコンセプトは聞いたかしら?」
「聞いたよ。 イメトレもばっちり」
「もうっ完璧なのね!」
「ふっ勿論」
「やぁだーもうっどんどんいい男になるんだからぁ」
「そりゃ嬉しいな」
「ところで私と今晩ご飯でもどう?」
「それは仕事で?それともプライベート?」
「んもう!野暮なこと聞かないの!」
「残念だけど俺空気読めなくてさ」
どこのオカマだよなんて思いながらも
結構金さんの事は好きだ
信頼してるしこの人のカメラの腕前は本当に凄い
それに仕事の時はコロッと顔が変わるし
だけどプライベート迄の時間までは上げるつもりは無い
「また今度ね金さん」
「なによケチ」
「それより仕事の話しよ?」
「はいはい、何かしら?」
この前もらった今日撮影するコンセプトの内容とか細かい事が乗ってる書類を見て金さんと話す
ある程度話がまとまって
金さんのイメージと俺の想像した感じとか
大体確認して話がまとまったとき騒がしい声が聞こえてきた
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