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02
「おっはよーん!皆朝早くにご苦労様っ」
「おはようございます」
「爽さんおはようございます」
「そんなかしこまらなくていいよんっ」
はあ……ほら来た厄介な奴1号
車から降りるなり
朝からハイテンションな挨拶をするのは
俺の先輩で同じ事務所の爽だ
俺にキスマークつけたり
高田の彼女を見つけてくれたのは有難いけど
ベロベロに酔って携帯壊してくれたり
他にもいろいろ
スキャンダルの発端を作るトラブルメーカー
「ん?あっれー誰君」
「初めまして!今日から二週間ここで勉強させて貰うことになった小日向祥です!」
「へえ!君が!こんな美人なら大歓迎だよ!」
「……あはは」
「二週間しかいないの?もっと長く居ればいいのに!あ、そうだ俺が社長に頼むから俺の専属になる?勿論……俺の専属って事は意味わかるよね?」
「え……?あ、いや俺……」
「はいストップ」
「ん?お、おはよう〜直くーん」
「気色悪い呼び方しないでくれる爽さん」
「直輝こそいつからさんなんて付けて呼ぶことにしたんだよ」
「今さっき」
ズイズイと詰め寄られて後ずさる祥の前に慌てて入り込む
爽の肩を押し返すと祥から引き剥がした
「俺は今祥君と話してるんだけどな」
「話してたじゃなくて口説いてたの間違いだろチャラ男」
「おい、先輩に向かって何言ってんだ」
「先輩と思って欲しいならそう思える行動取れよ」
爽やかな顔して中身は全然爽やかじゃない
名は人を表すとは言うけど
爽の場合は見た目だけは名前のとおりで
後は全然堕落してる
前に一度そう言ったら
「え〜だって面倒なんだもーん」なんて言われて本当先輩らしくない
「はぁなーにが天使だよ。 中身はブラック悪魔だってーの」
「それはお互い様だろ、爽だってどこが爽やか?見た目だけだろ?」
「あ〜もうやめやめ〜、直輝と口喧嘩したって俺勝てないもーん」
「だったら祥にも構わないって今ここで約束しろ」
「は?なんで……って、ああ!そっか、なるほど!」
「……」
「ふーん、へえ〜そりゃあこんだけ美人なら納得だ」
「おい変なこと考えたらまた社長にいうからな」
すべての辻褄があって納得する爽から
祥を隠すように背中へと押し込む
「笑顔が甘いとか言われてる直輝も大好きな祥君となっちゃ顔が怖くなるね〜」
「そりゃどーも」
「褒めてないっての」
「俺がかっこいいって聞こえたけど?」
「あーもうムカつく〜」
俺と爽のいつもの様子を黙って見ていた
祥がクスリと吹き出した
「ふふっ爽さん?って直輝と仲良しなんですね」
「え?コイツとは悪友ってだけ。 てか祥君笑うとめっちゃ可愛いじゃん!祥君の方が直輝よりも全然天使!」
「いや……天使とかそういうのは……」
「爽!触るな!」
「は?別にただの幼馴染みだろ?」
「関係ない。 お前が関わるとロクな事にならないから祥には関わるな」
「やーだね」
ニヤニヤと笑った爽が祥を一度見てそう言う
嫌な予感ほど的中するわけで
やっぱり悪戯好きな爽のターゲットに祥はなったようだ
祥も祥でそんな隙だらけで笑ってたら
このバカ爽だけじゃなくて他にも
色んなやつに狙われて食われてもおかしくないのに
当の本人は全く無自覚なわけだし
やっぱり徹底して来させないようにしたら良かった
そう後悔する気持ちは想像したよりも早く襲ってきた
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