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03
「直輝さーん、爽さーん!撮影始めます!」
「今行きます」
「はいはーい」
怠そうに返事をする爽の首根っこを掴んで呼ばれた方へ向かう
去り際に1度祥を見たら
笑顔で手を振っていてもう本当可愛い……
じゃなくて心配で仕方ない
「直輝」
「なんだ」
「俺、本気で祥君狙っちゃおうかな〜」
「その時はお前の息の根止めてやるよ」
「ひえ〜怖い怖い」
「とにかく、祥に手出すな」
「俺、案外直輝の事は好きなんだ。 だからいいよ、手出さない」
「……」
「あ!信じてないな!」
「下半身緩い奴の言葉は信用出来ない」
「はぁ〜? 直輝だって半年前迄は女の子とっかえ引っ変えだった癖に」
「だから言ってんだよ。 下半身の赴くままに動く爽の言葉を信用するほど馬鹿じゃない」
「ほんっと可愛くないなぁ〜」
ムッとしてる爽をチラリと見る
悪くは言っててもつるんでるって事は嫌いじゃない
ましてや俺の冷めた性格知ってるのは祥と聖夜を除けばコイツぐらいだし
ちゃらんぽらんしてるけど尊敬してる所も何だかんだある
「はい、じゃあ撮影始めるよ!風ゆっくり強めてね〜」
金さんのその言葉で大きな機材を使って人工的な風を送り込まれた
爽と並んで服に身を包んで雑誌の表紙になる撮影を進める
「おい! 何ちんたらしてんだもっともっと風よこせよっ! ちんこ付いてんのかてめぇ!」
始まった……
カメラを持つといつもこれなんだから面白くて堪らない
さっきまでのオネエ口調が嘘みたいに野太い声を出してスタッフに指示を出す金さんの声がスタジオに響いて
カメラのフラッシュが何度も焚かれる
ポーズを取りながら爽の方へ体を向けると
さっきとは違う色気をもった表情をしていて
腐ってもモデルなんだと思った
「はーい!いいよー!」
一通り撮影が終わってOKが降りる
少し休憩を挟んで、また撮影を再開して
そうやって時間は過ぎていき
あっという間に1日が終わっていった
「お疲れ様でしたー!」
スタッフの大きな声に続いて皆が挨拶をする
特に問題もなく終わって
ホッとしていた時爽に肩を叩かれた
「直輝この後の予定は〜?」
「他の撮影」
「え〜休んじゃえよ〜」
「また社長にこっぴどくしごかれるぞ」
「つまんないの〜クラブ行きたかったぁ〜」
「他のやつと行けよ」
「俺は直輝がいいから誘ったんだろ」
「鬱陶しい」
「お、おい!」
ブーブー文句を垂れている爽を引き剥がす
キョロキョロと辺りを見回して祥を見つけると少し駆け足で向かった
「祥、お疲れ」
「あ!直輝!」
「どうだった?」
「凄いねやっぱり、追いつくので必死」
「そ? 見てたけど楽しそうに仕事してたじゃん」
「へ?あははっ、うん!楽しかった!」
「そっか、良かった」
嬉しそうに頬を染めて笑う祥の頭をなでる
仕事終わって真っ先に
この笑顔が見れるのは幸せだ
「直輝かっこよかった」
「もっと惚れた?」
「調子にのるな!」
「ふっでもかっこよかったんだろ?」
「なっ……! 直輝! ちょ、っと」
祥の細い腰を抱き寄せて耳元で尋ねる
途端にさっきまでの笑顔は慌てた表情に変わってほっぺたは真っ赤に染まり上がった
「人に、見られちゃうってば」
「見られなきゃいいんだ?」
「へ……?」
スタジオの隅っこ
祥を押し付けて機材の裏に隠れる
後ろではバタバタと駆け回る他の皆の声が聞こえてきてバレないようにくっつくのはスリルがあってゾクゾクと興奮が高まった
「で、見えないようにしたけどこれならキスしていい?」
「だっ駄目に決まってるだろ……!」
「祥が駄目でも俺には関係ないけど」
弱々しく胸を押し返す祥の顎を掬う
ユラユラと揺れている瞳を覗きこむと
ちゅっと触れるだけのキスをした
「っん」
「祥、本当に駄目? ここで終わりにしていいの?」
「〜〜〜っ」
「ほら、早くしないと人来ちゃうよ?」
「バカ……っ、……して……」
「何を?」
「キスして……ちゃんと、したの……」
「腰が抜けるやつ?」
「っ! 変態!」
キッ、と睨みあげてくる祥を見てクスクスと笑みが零れる
でも少しぐらい焦らして意地悪してやりたい
もうこっちはずっと目の前に祥が居るのに触れられなかったんだから御預けもいいところだ
ふっと笑うとシャツを握りしめてくる
祥の髪に指を通して頭を引き寄せる
柔らかい祥の唇を甘噛みすると
微かに開いた隙間から舌を潜り込ませた
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