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04
「ふ……んっ、は……っ……やぁ……っ」
「ん? 祥……もしかして寂しかった?」
「――ッ」
「へえー図星か」
「うっ、うるさい!」
壁に押し付けてキスをしたらいつもと祥の反応が違うのに気づく
普段ならもっと悪態ついてこんな簡単にキスを受け入れない
ゆっくりゆっくり溶かすみたいに祥を感じさせるのが好きだったけど、素直な祥も可愛い
「なんで寂しかったんだよ?」
「勘違いだってば……ッ……あっ!……や、跡はダメ……」
「じゃあ見えないところなら?」
「〜〜〜ッ! ほんと……ッ、意地悪ばっか……」
「祥が天邪鬼だから」
「……うっさい」
祥の細くて白い首筋に歯を立てる
チュッと吸い上げると
ピクッと体が跳ね上がった
「俺の事見てて我慢出来なかったとか?」
「なっ……!」
「……まじ?」
「〜〜ッ! も、もう離せ!」
「ダメ。 どうしてか話してくれるまで行かせてあげない」
「嫌だッ」
「しょーちゃん」
「お前……! 今そんな呼び方とか本当に卑怯だぞ!」
「ふっ エッチの時思い出しちゃうから?」
「直輝っ!」
「あははっ、 悪かったって」
「……」
「もっと祥の事虐めたいけど時間切れ。 続きは家帰ったらな」
「さっさと行けよバカ!」
「はいはい。 あ……あのさ、朝は反対したけど。 祥の夢なんだし認めて貰えるよう頑張れよ」
「え……」
「祥が仕事してる所初めて見たけど本気で好きなんだって思った。 だから俺も応援してるよ」
ポカーンと見上げてくる祥の顔がみるみるうちに笑顔になる
満面の笑みに変わる頃、
あんなに離れろ離れろともがいていた張本人の方から俺の胸に飛び込んできた
「〜〜〜ッ! 直輝、ありがと!」
「ふふっ、ううん。 行っておいで」
「うんっ!」
「今日1日頑張って帰ってきたら、家でうんっと甘やかしてやるよ」
「それは別に頼んでない……」
「嬉しい癖に」
「調子乗りすぎだ」
耳元に顔を近づけると祥の手のひらで押し返された
もうちょっとイチャイチャしてたいけど
そうもいかないから
2人で機材の裏から出るとお互いにこれからの仕事がある場所へと別れた
◇◇◇
「直輝君、お疲れ様。 今日の仕事は終わりだよ」
「マネさんこそお疲れ」
祥と別れてから数時間後、
やっと今日1日のスケジュールが終わった
ニコニコ笑顔で話しかけてくるマネさんと並んでスタジオを出る
「ふふっ」
「ん? いきなり笑ってなに、気味悪い」
「いやいや、今日の直輝君仕事終わらせる活力がいつもと違うからさ」
「……」
「あははっ、そんな冷たい顔しないで! あくまでもウリ出しは天使って設定なんだから悪魔みたいな顔しないの」
「はいはい」
ポン、とマネに背中を押される
天使だの悪魔だの
好き勝手言ってるけど俺は1度も天使ぶったわけじゃないのにこんな面倒なイメージを貼り付けた奴に文句でも言ってやりたい
「じゃあ祥君に宜しくね」
「りょーかい」
「祥君が来てるからっていつもよりも頑張るなんて直輝君もまだまだ可愛いところあるんだなぁ」
「マネ!」
「あははっ! ごめんって。 じゃあ運転手さん直輝君宜しくお願いします!」
「……」
「直輝君も今日はありがとうね」
「はあ。 俺こそ、色々ありがと」
そう言って車の扉がゆっくりと閉まる
ニコニコと笑顔で手を振るその顔は昔と変わらない
でも確実に変わったとしたらさっきみたいにマネが案外人をからかうのが好きだったって事だ
あの顔じゃあ
祥が居るあいだは確実に弄られるな
めんどくさい
勘弁して欲しいと溜息は零れるのに
それでもどこかマネの言う通り浮かれているのは
やっぱ祥と明日も仕事場でも会えるって事を楽しみにしてるからだ
「……頑張ろ」
似合わない言葉を零すぐらいには
確かに俺は少し浮き足立ってるんだと思った
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