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捕縛 14

「っは………はあ…はあ……。人が来たら、やめるって、言ったのに……」 オーナーが出ていったのを確認してようやく唇を放した向田に、春は切れ切れの息でそれでも反論をした。 「いいじゃないか夫婦なんだから。それよりもあのオーナー、春のこと凄く見ていたよ。後で春をオカズにオナニーするつもりかもね」 「やめろよもう!」 春は限界だった。未だ腰を抱いたままニヤニヤと笑ってそんな変な事を言う気持ちの悪い向田を突き飛ばして、走ってこの場から逃げ出したかった。 でも、逃げられない。逃げる事なんて、出来ない。 「だってあいつ、春のこと確実に女の子だと思ってたよ。ここに、こんなに可愛いおちんちんがついてるって知ったら、どうするかな?意外に喜ぶかもしれないね。おちんちんがついてる方が、ただの女より断然エッチだからね」 「や……触、るな…」 向田に股間をやわやわと揉まれて、春は逃げ腰になりながら身体を捩った。向田は春の身体を、窓と自分の身体でがっちり挟み込んで逃げ道を奪った。 「気持ちよくて勃っちゃう?このパンツ細身だから、勃ったらすぐ分かっちゃうね。春が男の子だって、さっきのオーナーに教えてあげよっか」 「やめて、もう。……お願いだから…」 春は力なく言った。度重なる向田からのセクハラに、心が折れそうだった。 向田は春がしおらしくなった事に満足したのか、ふふ…と乾いた笑い声を出した。 「冗談だよ。相変わらず可愛いなぁ。春は俺だけの物なんだから、あんな奴に春のおちんちん見せつけてやるもんか」 一頻り楽しそうに笑った向田は、春を促して席に着くと、春に酌をさせてシャンパンを飲み始めた。 「春を眺めながら飲む酒は格別だ。こんな夜景なんかより、春の方がよっぽど美しい」 向田は終始機嫌よく酒と食事を楽しんだ。 去年の同じ頃はあんなにニコニコしていた春は、今日は笑顔ひとつ見せず、食事も向田が命じない限り口にしなかった。 またあんな風に屈託なく笑いかけて貰いたい物だが……さすがにそればっかりは手に入れる事はできそうにない。 あの笑顔と引き換えに、春の絶対的支配権を手に入れたのだから。それを、俺は望んだのだから。 オーナーを始め、料理を運ぶウェイターや行き帰りにすれ違った客達は、皆一様に春の美しさに目を奪われて、そして向田には羨望の眼差しを向けた。 全てが向田の狙い通りで、小躍りしたくなる程愉快だった。 「今夜のセックスはいつも以上に燃えそうだ」 店を出て車に乗り込み、キスを済ませた後春にそう告げた。 今まで付き合ってきた女は、向田がこんな事を言うと頬を染めて喜んだ物だったが、春は顔を青ざめさせた。 そういう反応にも煽られる所が、向田の異常な性癖を如実に表していると言っても過言ではない。 春はまだセックスの快楽を知らない。 厳密に言えば、性器を弄って気持ちよくさせる事は出来たが、受け入れる側としては苦しそうにするばかりだった。 「あー……気持ちいい」 仰向けで足を広げさせた春の腰をつかんで激しく揺さぶる。 春の後ろの孔の傷が治ってからというもの、毎晩向田はそこを使った。 春との外食で昂っていた向田は、今日は既に2度、春の中に精液を吐き出していたが、まだまだ衰える事を知らない。 いつもの様に激しくピストンしていると、今日はいつになく春の腰がひくひくと逃げる事に気がついた。 もしかしたら……。 向田は春の前立腺により刺激が与えられる様挿入の角度を変えてまた一突きした。 「ぁッ……」 これまで苦痛の声しかあげなかった春がほんの微か甘い声を洩らし、向田が更に中を突くと、萎えていた前も少しだけ反応を見せた。 春は困惑している様だった。 初めて感じる雌の快楽に戸惑い、それが快感であると身体と頭が認める前に、その感覚を逃がそうとしていた。 「春、気持ちいいんだろう?」 向田がだらしなくニヤけた顔で問う。 春は何度も首を振った。認めたくないのだ。 「春も店で人に見られて興奮したのかな?」 「っ違う」 「違わないよ。ほら、いつもは勃たないのに、おちんちんも少し勃ってるじゃないか。なるほど。春も随分エッチなんだねぇ」 「違うっ」 「また今度別の店で、俺たちのキス見せつけてやろうね」 「いやだ!違う!」 向田の戯れを必死に否定しようとする春をよそに、向田の雄は春の中でさらに猛った。 「春はお尻の中が気持ちいいんだ。おちんちん入れられて、気持ちいいんだ」 「もう、やめてッ!」 春は遂に涙声になりながらも時折僅かな甘い声を洩らしては向田を煽った。 いたいけな固い花の蕾が少しずつ綻んでいこうとしている。 もう少し。もう少しで春の真っ白い蕾は花開く。 向田は飽くなき性欲と支配欲でその後も長いこと春を揺さぶり続けたが、春にそれ以上の反応は見られず、勃起も持続しなかった。 快感を覚えさせたと言うには、少し頼りない反応だった。一気に絶頂を迎えさせようと思っていたが、そう簡単には行かない様だ…。 だが…………。 向田はそれでも充分に満足だった。 確実にここに快楽の引き金がある。花開く為の種は、もう充分に植え付けた。 これからの調教が楽しみだ……。 春には、性器を弄って得られる男の快感ではなく、身体の中で気持ちよくなる女の快感を身体に覚え込ませるつもりだ。 そうして春の身体を完全に貶めることが、向田の目的なのだ。 それは、向田の性的嗜好を満たすだけでなく、頑なな春の心を陥落させる一助となるだろうから……。 向田の春への想いは、どこまでも卑劣で下劣、そしてサディズム的思考に満ちていた。

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