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捕縛 22
「ああ……凄くいいよ。やればできるじゃないか」
春の赤い舌が、能動的に太くて長い肉棒を舐め回す様はその映像だけで昇りつめる事ができそうな程蠱惑的でいやらしかった。
「もっと根元の方まで舐めて。……そう、いいよ、上手だ」
命じられた通りに動く春が顔を傾けた瞬間、キラキラ光る銀髪がさらりと後ろに流れて春の横顔が顕になった。緩慢に動き回る紅い舌や伏せられた瞼から覗く綺麗な碧色、僅かに震える長い睫毛がよく見えて、向田の興奮は更に高まった。
「春がエッチなせいで我慢汁がいっぱい出ちゃったよ。先っぽ、全部舐め取って」
そんな命令にも表情ひとつ変えず素直に応じる春が愛おしくていい子いい子する様に頭を撫ぜた。
「今度は咥えてじゅぱじゅぱってしてみせて。………こうやって、いつも俺がやってるみたいに出したり入れたりするんだよ」
口に含んだはいいもののぎこちない動きの春に腰を使って説明すると、向田がいつもやっていたみたいに春は喉の奥まで向田自身を咥え込んだ。
時折「うっ」と苦し気な声をあげながらも懸命に奉仕するその姿に、向田の征服欲はこれまでにない程満たされた。
「とっても上手だ。気持ちよすぎてすぐにイってしまいそうだよ…」
その言葉の通り、程なくして向田は春の口の中で果てた。
いつものごとく全て飲み込ませると、ようやく向田の性欲は一段落した。
向田は洗面室でバスローブを羽織ると、1着持って部屋に戻った。
ベッドの端に無表情で座ったままの春の肩にバスローブをかけてやり、手触りのいい銀の髪を撫でた。
「お利口だったね。偉かったよ」
「………」
「もっと練習して、もっと上手になろう」
向田が思わせ振りにそう言うと、床に向いていた春の視線がこちらを向いた。その瞳は色のなかったさっきとは違い不安そうに揺れていてとても綺麗だった。
「練習は今すぐじゃない」
そう告げてやると、あからさまに安堵の色になる。
「時間はたっぷりあるから、後でもう一回してね」
春の表情が一気に曇った。嫌だと顔に書いてあるようなその表情に、向田は機嫌良く笑った。
明らかな反抗的態度は子憎たらしいが、この程度なら可愛いものだ。
「少し腹が減ったな。ルームサービスを頼もうか」
向田は春の隣でメニュー表を開く。
「春は焼肉に連れていったら喜んでいたよな。焼肉は……流石にないけど、ステーキならある。去年一緒に飲んだジュースも頼もうか。ああ、心配しなくていいよ。今回は薬なんて入れないから」
春にとっては全く笑い事ではないが、向田はクスクス愉しそうに笑っている。
「あとは何食べる?パスタでも頼むか?そう言えば、春は食べる姿も品があって、でも凄く美味しそうに食べるから、そういう所も俺好みだったんだよ。セックスの時と一緒だね。ははは。さて、春は何が食べたい?」
向田はおどける程上機嫌で春の事をずっと甘やかす様に撫でていて、一体何がどうしたのか分からないが気持ち悪いくらい優しい口調だった。
―――これなら、俺の望みをひとつだけでも聞いてくれるかもしれない。
「何もいらない、けど…」
「ん?」
「シャワーを浴びてきたい」
身体の汚れを落としたいのもあったが、それよりも何よりも少しでも向田から離れたかった。
泊まりがけで明日までずっと一緒にいなければならない今、向田から離れられるのはシャワーの時ぐらいしか思い付かない。
向田には全て諦めろと言われたし、そうするしか道はないのだということも分かってはいたが、それでも春はそれを納得したくはなかったし、ましてや向田を愛するなんて到底できそうになかった。
だから、春はどんな状況でも向田から逃れる方法を探した。それが例えほんの数分の物だったとしても。
「どうしようか。もう少し俺の愛の証を春の身体の中に入れていて欲しいんだけど……」
春はいつになく真っ直ぐ向田を見つめている。
普段ならすぐに却下していたであろう春の我が儘を、今はなぜか聞いてやりたいと向田は思った。
「今日はまたすぐに愛を注いであげられるからまあいいか。いいよ、行っておいで」
春は一瞬びっくりした様に両目を見開いた後、すぐに立ち上がって浴室に向かった。
許可されないか、されるにしても何か交換条件を出されるだろうと春は思っていたから、すんなり要求が通ったことに驚いたのだ。
驚いていたのは、春だけではなかった。
向田はルームサービスを頼み終えると備え付けのバーカウンターでシャンパンを飲みながら、自分の先程の春への態度について考えていた。なぜ甘やかしてやったのかと。
そして考え始めてからすぐに成る程と納得した。
去年も春と来たワンダーランドにいるせいなのか、性欲が落ち着いている為なのか、いつもは我慢できていたないものねだりをしてしまっていたのだ。
―――つまり、春の笑顔が見たいと。
去年そうだった様に、懐いて、慕って、羨望の眼差しを向けて欲しい。
何よりも、自分に向かって笑いかけて欲しい。
あんな可愛い春を抱けたらどんなにいいだろう。
自分を拒絶するのではなく、心から受け入れ、春自らの意思で背中に手を回してくれたら、どんなに……。
失ってみて改めて思う。春は笑顔がとても可憐で美しかった。
嫌がる顔もサディスティックな向田の大好物だったが、最近はそればかりだ。
『逃した魚は大きかった』とよく言うが、まさにそれだ。
逃した物程尊く感じる。それ以外を全て手に入れたからこそ、尚更…………。
*
部屋のチャイムに我に返ったが、物思いに耽っている内に結構時間が経っていたらしい。
テーブルに料理が並べられるのを見届けて、浴室へと足を向けた。春はまだそこに籠っている。
「春、食事が来たぞ。早く出ておいで」
声をかけながらおもむろに浴室の扉を開くと、春はシャワーを頭から浴びながら浴槽内で蹲っていた。
「何してる、風邪引くぞ。身体ももう洗ったんだろう?拭いてあげるからほら、出ておいで」
春は緩慢な動きで立ち上がり、シャワーを止めて浴室から出てきた。その表情は、当然の事ながら笑顔には程遠い。
向田は広げたバスタオルごと春を抱き締める様にして、春の身体についた水滴を拭った。
体格のいい向田と比べると、骨格も筋肉も頼りなくて華奢な春の身体……。
こうして改めて見ると春の身体は中学3年生にしては幼い。身長だけはあるが、ひょろりとしていて性別不詳の大人になりきれていない子供の身体だ。
男でもなければ、女でもない。
ムッとした男臭さも女臭さもなくて、どこまでも清潔で穢れない身体……。
去年は見ることの叶わなかったホテルのナイトウェアを丁寧に着せると、想像通りネグリジェを着た美少女の出で立ちで、思わずほうとため息が漏れた。
その白魚の様な美しい手を引いて、去年とは比にならない豪華なテーブルセットまでエスコートした。
春を窓が見える席に座らせて、自分はその向かいに腰掛ける。
「乾杯をしようか」
自分にはワインを、春にはジュースを注いでやりグラスを持ち上げた。
春はこちらを見たがグラスに手を伸ばさなかった。
「夫婦になって初めての旅行だ。謂わば新婚旅行じゃないか。俺を白けさせないでくれ」
最後に脅すような響きを加えると、ようやく春はグラスを持ち上げた。
「愛してるよ。永遠に」
向田は持ったグラスを掲げるとそう宣言してグラスを傾けた。
「どうした、春も飲みなよ。さっきも言った様に薬は入っていないから」
向田にせかされてようやく春はジュースを口にした。
それは唇を湿らせる程度の物だったが、向田は満足そうに微笑んだ。
「全部春の好きそうな物を頼んだんだ。前菜はカルパッチョとスープ。カボチャのポタージュだ。メインは言わずもがなステーキなんだけど、メニューにも載っていない一番いい肉を持ってきて貰ったよ。まあ、こんな三流ホテルの肉だから、大したことはないと思うけど。焼き加減はレアでよかったか?肉はレアで味わうのが一番だ。春の家はまあまあ金持ちだったけど、暮らしぶりは随分庶民的だった様だから、俺がこれからいいものを沢山与えてあげよう。あとはカルボナーラを頼んだよ。俺はあまり好きではないけれど、子供はこういうのが好きだろう?全部いっぺんに頼んでしまって悪かったね。何度も部屋にウェイターが来ると落ち着かないからね。パスタは時間が経つと美味しくない。肉もそうだが…。マナーなんか気にせず、好きなものから食べるといい」
向田は春の反応もお構いなしに喋り続け、それが終わるとナイフとフォークで優雅にステーキを食べ始めた。
「何ボーッとしてるんだ。美味しい内に食べなさい」
春は渋々フォークを握ると、カルパッチョの飾り野菜を口にした。
「どうだ美味しいか?春は確か刺身も好きだったよな?ほら、そこの蛸も食べるといい」
「いい」
「ん?」
「食べたくない」
「どうして?今日は朝も昼もまともに食べてないし、それに、さっき沢山運動だってしたじゃないか」
『運動』が何を指しているのかは、ニヤニヤとした向田の表情からすぐに分かって、分かったからこそ春は嫌悪感を募らせて目を逸らした。
「ジョークだよ。そんなむくれた顔ばかりしてないで笑ってくれ」
「………」
「何がそんなに気に食わないんだ?セックスだって、初めは痛かったかもしれないけど、もう慣れただろう?慣れた処か、感じているじゃないか」
「やめろ…」
「やめて欲しかったら笑いなさい。美味しいねって、あの頃みたいに笑ってみせてよ」
あの頃みたいに…?
「そんなこと、できる筈ないだろ」
「できるさ」
「出来ない」
「春は、これから一生笑わないつもりか?」
「何でそんな事…」
「だって俺達これから永遠に一緒なんだ。俺に抗い続けて一生笑わない人生と、自分の運命を受け入れて、俺を愛し、愛されて幸せに生きていくのは、どっちがいいと思う?」
「………」
「解っているんだろう?後者の方がいいって。春は男が嫌いか?女の方が好きか?まあ、大抵の男はそうだ。でも大丈夫。春は男を愛する素質があるよ。男の身体を…俺の身体を歓んで受け入れているのだから。そう言えば知っているか?男はお尻でイク事で男性ホルモンが抑制されるそうだよ。生理学的な事は詳しく知らないけど、俺とセックスし続ける限り春が雄々しくなる事はないね、きっと。つまり、俺は永遠に春を愛し続けられるってことだ」
向田はナフキンで口元を拭うと、淀みない仕草でワインを一口飲んだ。
「やっぱり肉には赤が合う。春と酒を呑める日が今から待ち遠しいよ。あぁ、春がどうしても飲みたいなら大人になる前に飲んでも構わないけど、俺以外のものに依存して欲しくはないし感度も鈍るからお薦めはしない。……春はどんな青年になるのかな。俺は本当は今の春の様な未成熟な身体が好みなんだけど、春なら多少大きくなっても構わないと思っているんだよ。これが愛なのかな」
向田は自分の言葉に酔っていた。
性欲も、食欲も、征服欲も、嗜虐心も満たされた状態で、とても満足していた。
ずっと喉から手が出るほど欲しかった物がいつでも食べられる状態で目の前にあるのだから、当然だ。
でも、だからこそ惜しい。
昨年あって、今は失ってしまったものも欲しい。今すぐに。
「笑ってよ、春」
再びそう言われて、春は歯を軋ませて向田を睨み付けた。
「そんな目をして欲しいんじゃない。笑ってと言ってるんだ」
「できない」
「できるだろ」
「できない」
「笑いなさい!」
痺れを切らした向田が声を張り上げると、春の肩がビクッと震えた。
その姿と怯えた目を見てはっとした向田は、慌てて取り繕う様に相好を崩した。
違う、違う。
怯えさせたいのではない。
今は言いなりにさせたい訳ではない。
身体を押さえつけてセックスをしたい訳でもない。
春の笑顔が見たいのだ。昨年俺に振り撒いてくれていた笑顔が。
「悪かったね。運動しすぎて食欲がないのか?なら、デザートを頼んであげようか。冷たいものなら食べられるんじゃないか?アイスとか」
向田はルームサービスのメニューのデザートのページを丁寧に開いて春の前に差し出した。
春は不気味な物でも見る様な目だ。
「どれにする?」
「何も、」
「ダメだよ。何か食べないと」
埒が明かないと春の前から取り上げたメニューを見て、向田はいい物を見つけた。大きい丸の上に、小さな丸が二つくっついた小さなプリンの周りに生クリームやフルーツやアイスが飾られている『プリンパフェ』だ。
去年来たとき、丸3つで簡単に作れてしまう便利なキャラのシルエットを壁やオブジェに見つける度に春は喜びはしゃいでいた。
その姿を思い浮かべながら、向田はそれを注文した。
程なくして運ばれてきたパフェは、期待通りだった。
メニューに載っていた写真とまるきり同じで、ちゃんとキャラのシルエットになっている。
「春、見てごらん、これ何の形かわかる?」
向田は得意気に春にそれを見せつけたが――――春は笑わなかった。
真一文字に結ばれた唇はピクリとも動かなかったし、感嘆の声ひとつ上がらない。無表情にそれを眺めて、時折向田に警戒の視線を寄越すだけ。
「嬉しくないのか?」
「……嬉しくない」
小声だが、確かにそう言った春の言葉にカッときた向田はついに怒鳴り声をあげた。
「とうしてお前はそうなんだ!!」
春の肩がまた跳ねたが、向田はもう取り繕う気にはなれなかった。
「せっかく優しくしてやっているのに、何でわざわざ俺を怒らせるんだ!今日は新婚旅行だって言っただろう!?楽しく食事したいんだ!なぜ分からない!」
向田はその勢いのまま皿を掴んで席を立つと、怯えた視線で向田を追っていた春の手を掴んで乱暴に床に引き倒した。
「食べなさい」
仰向けの春に馬乗りになって、向田がスプーンを差し出す。
「口を開けなさい!」
怒鳴られて、春はようやく口を開けた。咀嚼も嚥下も間に合わないスピードで向田は次々とパフェをその口に運んだので、春は激しく噎せた。
その姿に再び向田が怒鳴る。
「お前が悪いんだぞ!ご主人様に逆らうから!」
向田は、噎せて涙目の春の口に、今度はスパゲッティを詰め込んだ。
「俺だってバカじゃない。まだお前に好かれていないことだって分かってる。だが、いい加減気持ちを切り替えろ。こうして無理矢理食べさせられるのと、自分で食べるのとどっちがいい?無理矢理身体を開かれるのと、自ら望むのと、どっちがいい?簡単な選択だ。賢い春ならどっちがいいか解るよな?」
向田は春にフォークの先ではなく柄を差し出した。
―――これを受け取るということは、諦めるということ。向田の物になった事を受け入れ、全てを捧げるということ。
そんなの………いやだ!!
春は勇気を振り絞ってフォークを叩き落とした。
それが絨毯の上を2度程跳ねて止まった瞬間、春は強い力で腕を持ち上げられた。
「シャワーなんか浴びさせるんじゃなかった」
冷たく言い放った向田に乱暴に突き飛ばされ、テーブルに上半身を押さえつけらる。
「優しくしてやったのが間違いだったな」
向田は春の背中を押さえつけながら尻を付き出させ、唐突にナイトウェアの裾に手を入れた。元々下着は履かせていなかったので、直接柔肌に触れて、その尻を揉みしだいた。
「っ…やだ!やめろっ!」
「甘やかされたからって勘違いするなよ。お前は俺に逆らえる立場なのか?」
向田がそう言うと、ギクリといった調子で春の抵抗が止まった。
「分かっているのなら、これ以上俺の機嫌を損ねるな」
揉みしだいていた両手を尻の谷間に移動させた向田は、今度は孔の周りを撫でては時折指を挿入させて、ビクビク震える春の反応を愉しんだ。
「今いいものを入れてやるから少しそのままで待っていろ。淫乱なお前はきっと気に入るだろう」
鞄を漁って戻ってきた向田は、わざと春に聞かせる様に手にしたローターのバイブレーションのスイッチを入れた。
ウーウーと唸るその音を聞いて、春は身体を固くしたが、向田は容赦なくそれを春の中に挿入した。
「うっ……!」
向田はただ挿入しただけではなかった。ローターを指で奥まで押しこんで、春の感じる部分をちょうど振動する様に細工したのだ。
「ん…ぁあっ!」
「ここでビンゴか。ああ、いい顔をしてるね」
向田に無理矢理上げられた春の顔は紅く染まり、切なげに目尻が下がっていた。
向田は春を再度椅子に座らせると、自身も向かいの席に戻った。
「さぁ食事を再開しようか」
向田はその言葉通り何事もなかったかの様にフォークを口に運んだ。
春は全身から力が抜けてしまう様な深部への刺激を受けて、上半身をテーブルに預けるように前屈みになった。
春の分の料理は全て向田が床に落としてしまったので、幸い春の前にはグラス以外何もなかったのだ。
「はぁっ…ぁ…ッ」
「いい声だ。お前の感じている姿は本当に可愛いよ。笑顔に匹敵するくらいにね。お前の機嫌を取ろうなんてまどろっこしいことはしないで初めからこうしていればよかったんだな」
「……っく」
春は悔しそうに向田を睨みつけたが、その目は潤んでトロンとしている。
「ふ……それで睨んでるつもりなのか?」
向田は春を嘲る様に笑った。
春は悔しくてやるせなくて、それ以上向田を睨むこともできなかった。テーブルに突っ伏して、声がなるべく漏れない様、口元を押さえて身悶えた。
「あんな小さな玩具ひとつでこんなになるなんて、お前は本当に才能があるよ。目の前でそんな風に悶えられると堪らないなぁ。食事なんかよりセックスがしたくなる」
ステーキを平らげた向田は、口元を拭うと手にしていたフォークをおろした。
「明日のデートは取り止めだ。今日と明日で、お前に自分の立場ってやつを再度分からせてやらないとな」
席を立ち近づいてくる向田は、春にとっては鬼や悪魔や幽霊の類いよりも恐ろしかった。
立たされ、ベッドまで引き摺られる様に歩かされる。
そうして、着せられたばかりのワンピースみたいな服を頭から抜かれて、全裸にされる。
向田がにやけていて、当たり前の様に遠慮なくペタペタと春の身体に触れてくる。
俺の身体なのに………。
「泣いたって誰も助けには来ないぞ」
向田が残酷な言葉を口にする。
だが、その言葉はただ残酷なたけじゃなくて、事実だ。
はったりではなく、事実だからこそより残酷で、意味がないとわかりつつも涙が溢れた。
「春は泣き虫だな」
向田に茶化すように言われて、春は涙を隠すように乱暴に手の甲で目を拭った。
本当は泣きたくなんかないのに、向田の存在が怖くて、言われる事もされる事も胸が抉られる程苦しくて、まだ中学生の春には到底耐えられるものではなかった。
「このローターを入れたまま俺のおちんちんも突っ込んだらどうなると思う?よすぎて狂っちゃうかな?」
春はいやいやと力なく首を振る。
「よがり狂う春が見たい」
有無を言わさず股を開かれ身体を畳まれる。
毎日されてるせいですっかりお馴染みの格好でも、屈辱感や羞恥心は初めと変わらないくらいあって春を苦しめる。
そして―――。
「ッ……あぁあっ!!」
宣言通り玩具を春の体内に残したまま向田が挿入した。
奥の敏感な部分をローターのバイブで責められて、あまりに強い刺激に春は叫び、頭の中は真っ白になった。
「春、凄いね、もうイッてるの?」
春の性器からは、向田が突く度に精液が漏れ出ていたが、春はそれすら認識していない様だった。
「あぁ凄くエッチだよ。最高だ。もっともっと乱れてごらん」
向田は愉しくて仕方がなくて、夢中で春を突き続けた。
締まりのいい春の身体では、そう長く揺さぶることはできなかったが、射精してもしても、春を前にすると絶倫の様に何度も勃起した。
それでもずっと犯し続ける事などできなくて、何度か休憩を挟んだが、その間春の無表情を見るのが嫌で、玩具を使って春をよがらせた。
笑顔を見せないのなら、ずっとよがっていればいいのだ。切な気なその表情は、生意気さの欠片もなく必死で可愛らしい。それに、この顔を見れるのはこれまでもこれからも向田だけなのだから、その特別感が向田にとっての優越感だったのだ。
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