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捕縛 27
「父さんと母さんをどこにやった!」
18時過ぎ。春はいつも実家に来ていた時よりも少しだけ早くやってきた向田を待ち構えていた。
「玄関で出迎えてくれるなんて初めてだな。やっと俺の妻としての自覚が芽生えたということか?」
やはり家を変えて正解だったな。ニヤニヤとそう言いながらリビングへと向かう向田を、春は追う。
「父さんに電話が通じなかった!どういう事だよ!」
今日の学校帰り。春は100円玉を沢山握りしめて公衆電話から父のいるドイツへ国際電話をかけた。でも、何度やっても繋がらなかった。ドイツ語のよく解らないアナウンスが流れるばかり。かけ方はしっかり調べたから正しい筈なのに。
春は思った。向田の仕業だと。向田が父母に何かしたのだ。それしか考えられない。
春は当然ながらこんなに向田がやって来るのを心待ちにした事はなかった。ただただ父母の無事を知りたくて、所在を知りたかった。一体何をされたのか。心配で心配で仕方なかったから。
「父さんって誰の事だ?春のお父さんは俺だろう?そんなに父親が恋しいなら、俺の事をお父さんと呼んでもいいぞ。そうだ、それいいな。今日はそういうプレイをしようか」
「違う!俺は父さん達をどうしたのかを聞いてるんだ!」
「悪い子だなぁ。お父さんに対してその口の聞き方は何だ」
向田は、食って掛かる春をのらりくらりとかわしてずいずいと春に近づいてきた。
「お前は父さんなんかじゃない!」
春はそう怒鳴って迫ってきた向田の腕をパシンと叩き落とした。ニヤニヤと笑っていた向田が、いきなり真顔になった。
「随分と生意気だなぁ、春。元家族の事は忘れなさいって言ったのに、電話をかけるなんて。まあ、予想はしていたけれど」
春は静かに話す向田のプレッシャーに、無意識に後退りした。だって凄く怒っている。こうなってしまうと、絶対に酷い目にあわされる。でも、そうだとしても、父さんたちの事を聞くまでは、敗けない!強い気持ちで再び向田を睨み付ける。向田は目を細めると、冷たく言った。
「跪け」
「父さん達は…」
「跪けと言ってるんだ」
淡々と命令され、春は渋々それに応じる。向田の命令には逆らえない。その立場を、嫌という程叩き込まれていたから。
床に両膝をついても尚強い視線で向田を睨み付ける春の鼻先で、向田はおもむろに下半身を露出した。
「しゃぶりなさい」
当惑する春に、向田が言い放つ。目の前に付き出されたそれを正視したくない春は、視線を落とした。強い屈辱感に、唇が戦慄きそうになった。
「上手に出来たら、元両親の事を聞かせてやろう」
――――――――。
悔しい。こんな事をしなきゃならないなんて。苦しい。喉の奥も、心も…………。
「そう。これがお前の役目だ。愛する夫に奉仕して、愛する夫から愛されるのが、お前の在るべき姿だよ。俺以外の誰の事も考えちゃいけないよ。お前は俺の妻なんだから……」
向田は、気持ちいいよ、と快感に顔を歪めながら春の父母の事を話し始めた。春は、こんな汚い事を、屈辱的な事をしながら父母の名前を聞くのはまるで二人への冒涜だと思った。
父さん母さんごめんなさい。こんな汚い息子でごめんなさい。情けない息子でごめんなさい。
そう懺悔しなから、春は向田の言葉を一字一句逃さぬ様聞いた。そのいきり立つものを口の中に突き立てられながら。
「別にどこへもやっていないさ。ただ電話番号を変えただけだ。拓弥と桜には、春が『向田の跡取りとしての覚悟が決まるまで連絡を絶ちたい』と言っていると伝えてあるから心配いらないよ。だから春。お前も早く俺の妻として生きていく覚悟を決めなさい。……あぁ、イキそうだよ。春のお口の中にいっぱい!」
春の喉の奥に生暖かい粘液が発射される。春は思わず噎せそうになったが、我慢した。吐き出したら、必ずそれを舐め取らされるから。這いつくばって床を舐めるなんてごめんだと思ったから。
「ちゃんとごっくんして偉いね」
向田は満足そうに言うと、春の頭を撫でた。
「今日は俺たちお父さんと息子だよ。春は今日一日俺の事をお父さんと呼びなさい」
向田は無表情で床に座っていた春の腕を持ち上げ立つように促す。
「まずはお風呂でも一緒に入ろうか」
その言葉の通り、向田は春の手を引いて浴室の方を向いた。春は俯いたまま、手を振りほどく事もなく従順に向田の後をついて行く。屈辱を味わわされた事と、両親の無事が分かった事で、先程まであった反発心はすっかり鳴りを潜めていた。
あぁ、でも、もう父さん達と電話で話すことさえ出来なくなってしまった。
少ししてからやってきた絶望感によって、春はすっかり無気力にさせられていたのだ。
「そう。上手じゃないか」
向田は、命令通りに動く春にご満悦だ。
春の身体に泡をつけて、その身体を擦り付けさせて自分の身体を洗わせているのだ。
「今度は前も洗って貰おうかな」
春に向き合った向田の下半身は、さっき射精したばかりだというのに硬くなり反り返っていた。
春はそこから視線を逸らすと、先程同様向田に身体を密着させて身体を上下させた。
見ない様に、意識しない様にといくら言い聞かせていても、その存在は無視できる筈もなく、春が身体を擦り付ける度に更にムクムクと大きさを増した。
「あぁ春、気持ちいいよ。娼婦みたいにいやらしい子だ」
気持ち悪い………。
恍惚とし始めた向田を春は強く嫌悪しながらも、無心になることを自身に言い聞かせた。
「今日は大好きなお父さんにいっぱいご奉仕してね」
シャワーで自分と春の身体の沫を流した向田は、春の手をひいて浴室を出ると、おざなりに身体を拭いてすぐに寝室に直行した。
そして裸のままベッドに寝そべると言った。
「お父さんの身体を舐めなさい」
身体を舐めるって何。性器を舐めろという命令はよくされているけど、身体って一体どこを……。
どうしたらいいのかわからずに立ち尽くす春の腕を向田が引く。
「ほらお父さんの上に跨がって、お父さんがいつも春にするみたいに全身舐めるんだよ」
向田はいつも春の身体の至る所に口づけして、舌を這わせる。
あれと同じ事を、俺にしろというのか……。
やられるのも嫌だけど、やるのも物凄く嫌だ。シャワーを浴びた直後とは言え、自分の父親よりも年上の男の身体なんて……。
「早くしなさい。尿道バイブを入れて欲しいのか?」
向田の脅迫に春は身体を震わせた。
言うことを聞かないと。どんなに嫌でも、もっと酷い目に遭わないために……。
春は言われた通り向田の身体の上に跨がった。
裸の向田の性器が既に半勃ち状態で、それに触れるのが嫌で太股の上に乗りあげる。
「まずはキスからだ」
だが、そう言う向田に身体を引き上げられてしまい、結局は腰の辺りに座らせられる。
向田の目は、早くしろと言っている。
春は意を決して身体を屈めた。これ以上ないくらいに嫌悪している男に口づけをするために。
唇を重ね合わせると、向田の舌がすぐに春の口の中に入ってきて動き回った。息が苦しくなってきて頭を上げると、まだ満足でなかったらしい向田に頭を押さえつけられて再び蹂躙される。
「さぁ今度は舐めるんだ」
唇を開放されてすぐに命令された。そう、命令だ。逆らう事などできない、絶対的な。
春は意を決してまた身を屈めた。そして、向田がいつもするみたいに、首筋に舌を這わせる。
「上手じゃないか。そのまま下まで舐めていって」
春は言われた通りに動く。舌で向田の身体を辿りながら、下に下がっていく。わざと胸元を外して腹まで到達した時、向田に「乳首は?」と指摘される。仕方なくまた上に戻って、茶色い突起に舌を這わせる。
「まだそこを舐めてなさい。それに、舐めるだけじゃなくてお父さんがいつもするみたいにちゅって吸ったりして」
一度ずつ舐めて終わりにしようとした春を、向田は許さない。
春は向田によしと言われるまで、左右の乳首を愛撫させられ続けた。そしてそれが終わっても腹や臍を舐めさせられて、ついにはさっきしたばかりのフェラチオを再びさせられた。
酷い屈辱だった。自分が犬にでもなったかの様だった。顔を離す様命令されて、当然のように後ろに突っ込まれる。
中でも一番辛かったのは、されながら「お父さん気持ちいい」と言わされた事。言いたくなくて拒絶していたら、いつも脅される、一番痛い事をされた。
痛くて堪らなくて、ついにそのセリフを口にした時、春は心がバラバラになった気がした。
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