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鳥籠 36

「ほら、春。もっと腰振って」 「は、い…」 言われた通りに、仰向けに寝そべった孝市さんの上で懸命に腰を上下に動かした。 孝市さんをイかせないと、自分も楽になれない。 動く度に敏感な内部が擦られて、溜まり続けていく疼きを解放したくて、堪らない。 俺のペニスと睾丸には、自分の意思でイけないようにシリコンのリングが装着されているのが常になっていて、射精のタイミングも孝市さんに管理されている。 孝市さんが上体を起こし、両手にそれぞれ持ったローターを両の乳首にあてがう。 強い絶頂感を与えられて思わず背中を仰け反らせるが、苦しいくらいの快感は逃げてくれない。 「春、腰が止まってるよ。ほら、ちゃんと俺を気持ちよくさせて」 快感に悶えて言うことを聞かない身体をなんとか動かすが、孝市さんはローターを外してくれない所か反応のいい部分を探して動き回る。じんじんと痺れた身体は、孝市さんの手から逃れる様にくったりとその胸に凭れた。 「こらこら。乳首が弄れないだろ」 「も、それやだ…」 「だーめ。じゃあ今度は指でクリクリしてあげる」 孝市さんに身体を起こされて宣言通りに突起を弾く様に捏ねられ、その度に疼く腰が淫らに前後に揺れる。 「ローターと指、どっちが気持ちいい?」 「や…わ、かんないっ…」 「こっちかな?」 「あっ…」 孝市さんから腰を突き上げられ、高い声が出た。言うことを聞かない身体がくにゃりとなって、また孝市さんの胸に頬を預ける形となってしまう。 ここで孝市さんを満足させなきゃ、もっと酷い目に合うのはわかっているのに、腰が砕けたみたいになって、自分の意思じゃ動かせない。 「もうギブアップ?春はいつになったら俺をイかせられるの?」 「ごめんなさい…」 「後でまた調教だからね」 「…はい」 孝市さんがリズミカルに腰を突き上げ始め、俺は孝市さんの胸に凭れたまま喘ぎ声をあげさせられた。 「そろそろイクよ。どこにほしい?」 「っ…おれのなかに、こういちさんのセイエキ、だしてっ」 躾けられた言葉を吐くと、その通りに熱いものが奥深くに注がれる。 それでも、俺がイかせたわけじゃないから、ペニスに填められたリングは外して貰えない。 「春、お掃除」 孝市さんに言われて、身体を起こして、足の間に顔を埋めた。丹念にさっきまで自分に入っていたモノを舐める。 精液の苦い味は好きじゃないけど、ちゃんと綺麗にしないと怒られる。 「いい子」 孝市さんの手が頭に置かれて、モノから口を離して顔を上げると、孝市さんがニヤっと笑った。 両手を合わせて縛られてベッドから下ろされると、つま先がようやく床に着く位置まで両手を持ちあげられて、そのまま天井のフックに吊るされた。 右足も膝の裏に縄をかけられて上げた状態で固定される。 「今日はこっちも一緒に気持ちよくなろうね」 孝市さんが細い棒を目の前に掲げる。 またあれをされる。神経を直接触られるみたいに痛くて、強すぎる疼きを与えられるあれを。 「うっ…あ…あ…」 潤滑剤の滑りで、ツプツプとそれは無情に埋め込まれていく。 「春の前立腺、この辺だったよね」 当たりをつけたらしい場所でバイブレーターを作動され、絶叫した。 がくりと頭を下に落とすと、元より限界を越えて赤く鬱血していたモノの先から棒が突き出ている異様な光景が目に入って、あまりの痛々しさに思わずぎゅっと目を瞑った。 背後からはまた孝市さんの猛りに後孔を穿たれて、後ろと前から敏感な前立腺を刺激され、逃げ場のない強すぎる快感に我を忘れて乱れた。 途中で何度も失神しそうになったが、その度に孝市さんに目覚めさせられ、どこにも逃げ場はなかった。 孝市さんがまた中で放って、その後も尿道バイブを何種類か試されてしつこく擦られ、ようやくリングを外して貰えた。 尿道からバイブを引き抜くと、そこからはトクトクと勢いもなく精液が溢れた。 もう射精できて気持ちいいとか、そういう感覚はなかった。 ただただ酷くされる時間が終わった事への安堵しかない。 *** 俺の浮気がバレてからもう3ヶ月が経ったが、まだ怒っているらしい孝市さんは俺を苦しめる様なセックスばかりする。 でも、その時間が終われば優しくしてくれる。 以前は部屋に来ない日もあったが、今ではどんなに遅くなったとしてもほぼ毎日の様に孝市さんはやってきて、そのまま泊まることも増えた。 今日も泊まる様だ。 浴室でお互いの身体を洗い合った後は、裸のままベッドに入った。 「おいで」 言われるがまま、孝市さんの胸の中に身体を埋めると、背中を抱き寄せられて更に密着する。 「春、愛してるよ」 「俺も愛してます」 「ずっとこのままいようね」 「はい」 こんな戯れ言も、最早何も感じることなく言える。 本当は俺は孝市さんを愛してはいないけれど、優しくして貰う為なら、こんな嘘何回でも言える。 今思うことは…もう少しセックスの際手加減して欲しいなとかその程度のことだ。 こうして優しく抱きしめられるだけなら、不満も嫌悪もない。 ずっとこんな風に優しくしてくれればいいのに。 「孝市さん…」 「なに?どうした?」 「俺、これからずっといい子にしてるから、もう酷いことはしないでください」 「まだだめ。春はすぐ悪い子になるから。あと1年くらいしっかり躾けて、春が完全にいい子になったら、その時はずーっと優しくしてあげる」 あと1年…。 長いけど、でもそれが過ぎれば、あとはずっと優しくして貰えるんだ。 「俺、いい子になれる様にがんばります」 言うと孝市さんがにっこり笑って、珍しく触れるだけの口づけをくれた。 ―――――。 「あれ?春、なんで泣いてるの?」 孝市さんの驚いた声に、頬を伝う濡れた感触に気づいて自分も驚いた。何でだろう? 「分からない。何でかな?」 「俺とのキスが嬉しかった?」 「そうかもしれない。優しくされたから」 「かわいいね、春は。優しく抱いてあげようか?」 孝市さんの手が胸を這って、唇は首筋を啄む。 正直、虐めぬかれたぺニスは痛いし、もうセックスはしたくなかったけど、せっかく優しくなった孝市さんの機嫌を損ねるのが怖くて頷いた。 孝市さんが優しくても意地悪でも、どっちにしろ俺に拒否権はないけど、それでも、優しくされる方が断然いい。 あと1年したら、ずっとこうして優しく触れて貰えるんだ。 それが俺にとっての幸せ…。 それでいいんだよな……? 考えると、また涙が勝手に出てきた。 それを見て、孝市さんが、やっぱり1年は調教しなきゃなと少し怖い顔で言った。 何で?涙のせい?何で勝手に出てくるんだろう。 止まれ、止まれ、止まれ。 精一杯心の中で唱えたけれど、涙は一向に止まってはくれなかった。

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