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第4話
浴室に入ると俺はようやく心を落ち着ける事ができた。
いや、荒ぶる気持ちを解放する事ができた…
そっちの方が正しいかもしれない。
「クソッ!!…こんなの、あり得ない…ッ…」
壁に思いっきりやり場のない気持ちを叩きつけた。
痛み…
虚しさ…
残ったのはそれだけだ。
どうしようもないモヤモヤした気持ちは消えなかった。
この俺が突っ込まれるなんて、あり得ない。
俺は頭から熱めのシャワーを浴びた。
拳も…
ケツも腹も喉も身体も…
なにもかもが痛む。
それに、自分で穴に指突っ込んで後処理をする日が来るとは思ってもみなかった。
それは俺の心さえも傷つけた。
何度も中出しされたらしい。
かき出してもかき出しても溢れた。
それを見る度に情けない気分にさせられた。
足腰はまだ不安定だ。
昼からバイトなのに困った事になった。
頭洗ってから、いつもの何百倍は念入り身体を洗った。
浴室の鏡に映る身体にはこっ恥ずかしくなる程のキスマークが散っていた。
なんでこんな厄介なものをあの男が残したのか…
そんな事を考える余裕はなかった。
「随分とゆっくりだけれど、大丈夫かい?」
「黙れ!!お前には、…関係ない…」
男が扉越しに喋りかけて来た。
俺は追い払う様に硝子扉にシャワーをぶっ掛けた。
シャワーを退けて水滴が捌け始めた隙間から目が合った。
何故かその目がそらせなかった。
薄暗いのと眠気眼でよく見えなかったが、あんな強姦紛いな事をしてくるヤツだから変態オヤジとかヤが付く強面野郎だとばかり思っていた。
でも、目の前に居た男はとてもあんな事をするヤツには見えなかった。
無駄に大人の色気をだだ漏れさせた上品で穏やかな雰囲気の男だった。
ハッとして目をそらして俯いた。
そして、顔を上げた時にはもうそこに男の気配はなかった。
俺は警戒を解いて、中途半端に残った身体の泡を流しきった。
泡に隠れて見えなかったのか、キスマークが増した気がして、盛大に溜息を吐いた。
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