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第15話
散々泣き啼いて、元気そうにしてるけどどこか淋しそうだった颯斗を、電話一本でデレさせる壱矢とやらは一体どんなヤツなんだろう…
「ちょ、そんな押さなくても入るから。」
「取り敢えず、飯。腹減った。」
「じゃー食いながら話聞いてくれよ!な?な?」
センターテーブルの上にコンビニ袋を置いた。
パーカーを脱いでいる間に、もう颯斗はオムライスを食っていた。
俺も颯斗と向かい合わせに座って、おにぎりの袋を破いた。
俺はこれが苦手だ。
パラパラと細かい海苔がテーブルに落ちて、それを見た颯斗が笑った。
「笑うな。」
その間もスマホはずっと震えていた。
しつこい…
ヘラヘラしている颯斗とは別に、俺はイラついていた。
その後、帰るのが面倒になった颯斗は結局泊まっていく事になった。
二人でテレビゲームをして盛り上がった。
ストレス発散に、無双でとにかく斬りまくった。
俺がソファーで颯斗がラグマットの上。
颯斗の頭が俺の足の間にスッポリ収まっている。
大体これが定番だ。
「シュート、電話。」
「気のせいだろ。」
「さっきからずっとだろ。」
「セールスだろ。」
「携帯にセールス?ま、いいや。シュート、俺そろそろ眠くなってきた…」
「寝るか。」
相手が八神なのは分かっている。
颯斗は俺の嘘に気づいていると思う。
俺は溜息を吐いて、テレビを切った。
狭い洗面台の前で肩ぶつけ合いながら二人並んでシャコシャコ歯磨きをした。
「颯斗、お前ベッド使え。俺はソファーでいい。」
「じゃ、お言葉に甘えてー。」
収納から掛け布団を出して、ソファーに転がって天井を見上げた。
「…シュートの匂い。」
「おいこら、嗅ぐな。」
ベッドに転がった颯斗が、スンスンと俺の掛け布団の匂いを嗅いでいる。
行為中もよく肩口に顔を埋めて首元をスンスンしてくる。
颯斗は匂いフェチらしい。
フェチ…
俺は基本、来る者拒まずタイプだからこれと言ってそういうのはない。
あえて言うなら、デカい乳が好きってくらいだ。
俺と颯斗は、基本ヤらない時は別々に寝る。
多分、壱矢とやらの連絡がなければ普通にヤってたと思う。
そんなくだらない事を考えながら目を伏せた。
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