17 / 270

第16話

翌朝、いい匂いに誘われて目が覚めた。 「お、シュート、おはよ。」 「…ん、あぁ…おはよ…」 目を擦りながら身体を起こすと、颯斗が朝飯を作っていた。 颯斗は、ウチに泊まる時は必ず朝飯を作る。 一宿一飯の云々というやつらしい。 俺は、朝飯を食う時間があれば寝ていたいタイプだ。 だから、たまに食う朝飯は美味い。 「シュート、顔洗ってこいよ。」 「あぁ…」 まだ若干寝ぼけている俺に、颯斗が言った。 ソファーから立ち上がって頭を掻きながら洗面所に向かった。 顔を洗って歯磨きをしたら、心なしかスッキリした気がする。 「飯、もうすぐてきるから待っててな、旦那様っ!」 「誰が旦那様だ…」 「壱矢さん!」 「朝からごっこ遊びとか、マジ勘弁してくれ…」 颯斗の顔を見ると、昨日よりも目が腫れていた。 俺の視線に気づいた颯斗が困ったように苦笑した。 「目の腫れ、昨日より酷くなっちゃってさ…今日壱矢さんお休みらしくてな、バイト終わってから会うんだ。…どうしよう、恥ずかしい…」 「別に恥ずかしがる必要ないだろ。それに、綺麗なとこばかり見せてても疲れるだけだ。ボロボロなツラ晒して、淋しかった…とでも言っとけ。」 「恋愛経験ないシュートに言われたくないしー。」 何気ない会話をしながらソファーに座ってスマホを見た。 八神からの着信34件… ドン引きだ。 無視しまくった結果、諦めたのか23時以降の着信はなかった。 「颯斗、お前一度家帰るか?」 「いんや、面倒だからこっから行く。」 「そうか。」 「仲良く一緒に行きましょう、旦那様!」 「まだ続いてたのか、それ…」 「まぁまぁ。」 颯斗が朝食を運びながら言った。 俺も立ち上がって颯斗を手伝った。 フレンチトーストとコーヒー。 これが颯斗の十八番だ。

ともだちにシェアしよう!