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第16話
翌朝、いい匂いに誘われて目が覚めた。
「お、シュート、おはよ。」
「…ん、あぁ…おはよ…」
目を擦りながら身体を起こすと、颯斗が朝飯を作っていた。
颯斗は、ウチに泊まる時は必ず朝飯を作る。
一宿一飯の云々というやつらしい。
俺は、朝飯を食う時間があれば寝ていたいタイプだ。
だから、たまに食う朝飯は美味い。
「シュート、顔洗ってこいよ。」
「あぁ…」
まだ若干寝ぼけている俺に、颯斗が言った。
ソファーから立ち上がって頭を掻きながら洗面所に向かった。
顔を洗って歯磨きをしたら、心なしかスッキリした気がする。
「飯、もうすぐてきるから待っててな、旦那様っ!」
「誰が旦那様だ…」
「壱矢さん!」
「朝からごっこ遊びとか、マジ勘弁してくれ…」
颯斗の顔を見ると、昨日よりも目が腫れていた。
俺の視線に気づいた颯斗が困ったように苦笑した。
「目の腫れ、昨日より酷くなっちゃってさ…今日壱矢さんお休みらしくてな、バイト終わってから会うんだ。…どうしよう、恥ずかしい…」
「別に恥ずかしがる必要ないだろ。それに、綺麗なとこばかり見せてても疲れるだけだ。ボロボロなツラ晒して、淋しかった…とでも言っとけ。」
「恋愛経験ないシュートに言われたくないしー。」
何気ない会話をしながらソファーに座ってスマホを見た。
八神からの着信34件…
ドン引きだ。
無視しまくった結果、諦めたのか23時以降の着信はなかった。
「颯斗、お前一度家帰るか?」
「いんや、面倒だからこっから行く。」
「そうか。」
「仲良く一緒に行きましょう、旦那様!」
「まだ続いてたのか、それ…」
「まぁまぁ。」
颯斗が朝食を運びながら言った。
俺も立ち上がって颯斗を手伝った。
フレンチトーストとコーヒー。
これが颯斗の十八番だ。
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