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第22話

マンションや車から、八神が金持ちだという事はよく分かった。 「蹴人、待たせたね。」 「別に待ってない。…つか悪い、かなり寛いでた。」 「よいよ。俺としてはとても喜ばしいだからね。」 「…」 「はい、どうぞ。カフェの従業員にインスタントのコーヒーを出すなど、失礼な話だけれどね。」 「…いや、従業員っていっても只のバイトだ。」 身を屈めて俺の目線になった八神からマグカップを受け取った。 「どちらにしても、お客様にお出しする飲み物がインスタントコーヒーでは、申し訳なくてね…」 「いや、むしろ助かる。」 「え?」 「ココには馴染みのないものばかりだ。だから、安心とする…」 「そう、それならばよいのだけれど…」 ココは目新しいモノばかりで落ち着かなかった。 カップの温かさと、インスタントコーヒー特有の色味が俺を安心させた。 その味に少しホッとしながらコーヒーを飲んだ。 視線を感じたのはその時だ。 コーヒーを飲む俺を、八神がガン見していた。 「…見るな。」 八神の視線はどちらかというと口元に向けられていた。 飲み辛くなって目線をそらした。 何を考えているか分からない。 分からない事だらけだ。 「…ねぇ蹴人、少し話をしようか。」 「あぁ。お前には、聞きたい事が山程あるからな。」 「そうだね。今日は、きちんと話をしなければと思って君を誘ったのだよ。」 「まず、あの日の事が知りたい。お前とどういう経緯であんな事になったのか、それを説明しろ。」 初っ端から切り込んだ俺に八神が困ったように笑った。 そしてゆっくり口を開いた。 「…あの日、君がお酒を飲んでいたという事は覚えているかい?」 「あぁ、颯斗…いや、友達と飲んでた。」 そうだ。 あの日、俺は間違いなく颯斗と飲んでいた。

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