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第23話
颯斗と飲んでいた筈が、目が覚めたらあんな事になっていた。
全てを知っているだろう八神に洗いざらい吐かせる必要がある。
八神は話を続けた。
「では、俺と会話をした事についてはどうだい?」
「誰かと話したような気はする…。でも、酒がまわってたから、それがお前だったのかは分からない。」
「君と会話をしていたのは紛れもなく俺だよ。…蹴人があまりにも可愛らしかったものだから、少し話をしてみたいと思ってね、俺から声をかけたのだよ。」
「…お前、目が腐ってるのか?」
「ふふ、酷いなぁ。書類に目を通す時には眼鏡を使用する事もあるけれど、視力は悪い方ではないと思うよ。」
「そうか。なら急に悪くなったのかもな。とりあえず眼科に行け。」
「心配をしてくれているのかい?嬉しいな。」
「…なぜそうなる。」
「話が少しそれたね。一度戻そうか。俺が声をかけた時には君はだいぶ酔っていて、俺が頼んだ少し強めのお酒を口にした。」
「強めの酒って、やっぱりお前、初めっからそのつもりだったって事か!?」
「早とちりをしてはいけないよ、蹴人。人の話は最後まで聞くべきではないかな?知りたい内容の話であるならば、尚更…」
「悪い…」
「始めからそのようなつもりでいたわけではないよ。俺の言葉が悪かったね。端折らずに一つ一つゆっくりと話していこうか。」
「お前、その言い方腹立つな。俺が話を理解できないヤツだと言われてる気分になる。…まぁいい、続けろ。」
「あの日、俺を誘ったのは君だよ。既に酷く酔っていたからなのか、それともあのように誰かを誘う事に慣れていたのか…どちらなのかは俺には分からないけれどね。」
「は?俺がお前を誘うわけ…」
いや、あり得ない話じゃない。
正直、八神の顔は俺のどストライクだ。
酒で気分が良いところにどストライクな顔ときたら、次に求めるのは一日の締め括りに相応しい最高に気持ちいい極上セックス…
そう考えると十分にあり得る。
でも、それは俺にあんな事をしていい理由にはならない。
「そして、意識もなく歩けなくなる程に酔った君を、あのホテルに連れ帰った。」
「連れ帰っただけじゃないだろ。」
「そうだね。我慢ができなくなってしまってね…。君が可愛らしすぎるからいけないのだよ。」
「可愛い可愛いってお前、やっぱり目が腐ってる。」
「酷いなぁ。…しかし、蹴人が初めてだった事に関しては想定外だったよ。俺としてはとても嬉しい誤算だったけれどね。」
嬉しい誤算…
ホントに気持ち悪いヤツだ。
この俺を可愛らしいとか思っている八神は、やっぱり頭がおかしい。
「…黙れ、気持ち悪いヤツだな。」
「本当の事を言っただけだよ。」
「最後に聞く。どうして颯斗と知り合いだった。颯斗もお前との関係を隠そうとしていた。」
「おや、可愛らしいね。ヤキモチかい?」
「なんでそうなるッ!真面目に答えろ。」
「彼は、よくオフィスへ遊びに来るからね。」
「颯斗がか?」
「彼は、俺の秘書の恋人でね。」
颯斗の恋人の社長秘書…
八神はそれを俺の秘書だと言ってた。
つまり八神は…
「社長だとッ!!」
大声で叫ぶと八神が苦笑した。
あの日、名前を聞いた時に引っかかったのはそのせいか…
思い返せば最近よくメディアで見かける名前だ。
このマンションや高級車、あのホテルの件も社長なら説明がつく。
平社員じゃ到底できない生活だ。
「できる事ならば、君には話さずにいたかったのだけれどね。」
「…」
「…ねぇ、蹴人。俺の家へ来たという事は、これから君と俺の間に起こる事を君が理解していると解釈しても構わないね?」
「…ッ…知るか。お前が勝手に連れてきたんだろ…」
「しかし、君は拒否をしなかったよね?…」
気付いたら目の前に八神の顔があった。
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