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第2話
折戸とは、何十年という年月を共にしてきた。
俺の人生に欠く事のできない存在だ。
極端な例ではあるけれど、もしも無人島に誰か一人を連れて行く事が許されるのならば、迷いもなく折戸を指名するだろうという程の信頼を寄せている。
彼はホテルを運営している大手企業の息子でありながら、生まれた瞬間から約束されていた全てを放棄し俺と歩む道を選んでくれた。
幸いな事に、折戸の家は八神の家とは違い、世襲に拘らない家柄であった為、折戸とご家族の間に亀裂が生じる事はなかった。
「壱矢さん、俺、壱矢さん以外にはぜぇーったい靡かないから安心しろよ。」
「折戸、新見君の事をもう少し信用してあげなくてはいけないよ。」
「…二人揃ってなんなんですか…これでは私が悪者みたいじゃないですか。」
暫く他愛もない会話を楽しみ、お手洗いに立ちつつ会計を済ませた。
席に戻る際に見えた二人の姿がとても幸せそうであった事にとても安心した。
そして、今度こそ…と折戸の幸せを切に願った。
同時に、このようにお互いを想い合えるパートナーが居るという事を羨ましくも思った。
「あ、八神さんお帰りー。」
新見君が俺に気付き手を振った。
若者の笑顔というものはこうも眩しいものであっただろうか。
そのような笑顔が俺に向けられた事を良しとは思えないのだろう、折戸のじっとりとした視線が突き刺ささった。
その視線は "早く帰ってください" …とでも言うかのようなものであった。
「用事を思い出したのでね、そろそろ失礼するよ。新見君、いつでも遊びにおいで。」
「マジで?じゃぁ今度遊びに行こ。」
俺は二人を残してホテルのエントランスフロア内にあるダイニングカフェを出た。
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