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第4話

俺は男性を恋愛の対象として見た事はない。 けれど、男性同士の恋愛に対し嫌悪感を抱いた事もない。 身近に折戸という存在が居たという事も、少なからず関係しているのかもしれない。 「颯斗君、総一郎の恋愛対象は男性ではありませんよ。」 「え、まじ?壱矢さんの友だちっていうから、てっきり八神さんもそうなんだと思ってた。」 「同性愛に対して俺は偏見を持ってはいないよ。なのでね、安心してくれて構わない。」 「そっか、よかったぁ…」 新見君はホッとした様子を見せた。 デリケートな問題である事に違いない。 誰彼と構わずに話せる内容ではない。 「俺は、折戸と君には幸せになってほしいと強く望んでいるのだよ。」 「そこまで言われるとテレるけど、ありがとうな、八神さん。…あー、でも残念だな。八神さんに紹介したい奴が居たんだよ。女はもちろん、男口説いたら百戦錬磨の親友が居てな、セックス大好きな遊び人だけど、病気はもらってないから安心して紹介できると思ってたんだけどなぁ…」 新見君はガッカリした様子で肩を落とした。 本当に素直で分かりやすい子だ。 「百戦錬磨かい?…とても、興味深いね。」 もしもそのような人が居るのならば、是非会ってみたいものだ。 他者に興味を抱く事は久しぶりだ。 折戸以来だ…と言ってもよいかもしれない。 まだ折戸と出会う以前の話だ。 学生時代、俺は周りを寄せ付けない程の成績を保持していた。 しかし、中学校に上がった頃俺は少々焦る事となる。 "折戸壱矢"… なにをしても、俺の後ろには常に彼の名前があった。 成績は僅差… このような事は始めてであった。 興味を抱かない筈がない。 俺は、当たり前な事をするだけの日々に疲れていたのだけれど、彼の存在はそのような日々を心嬉しく感じさせてくれた。 最終的に、彼は俺を抜く事は一度もなかったけれど、今は違った形で俺の後ろを歩いてくれている。 俺の人生を変えてくれたと言ってもよい折戸を、応援したいと感じる事は当然なのだ。 「超イイヤツなんだ!口悪いし、不器用なんだけどな。でも、優しいし、頭もいいし、イケメンだし!!とにかくイイヤツ!!処女への手解きは優しいって有名でな、まだヤった事ないヤツはとりあえずこいつ誘っとけってな。知的綺麗系でそこに巨乳があれは尚良しみたいなのがタイプだから八神さんはばっちりどストライクだと思ったんだけどな。まじ残念…」 「総一郎は巨乳ではありませんよ、颯斗君。」 「当たり前だろ。巨乳だったら引くわ!」 二人のやり取りに思わず苦笑をした。 けれど、新見君がその人の事を大切に思っているのだという事は伝わった。 「…でも、総一郎の巨乳は有りかもしれません。高校時代にじょ…」 「お、折戸っ!!」 いまだに触れることすらも恐ろしい、いわゆる黒歴史というものだ。 慌てて折戸の言葉を封じた。 「あー、まじ残念…」 「颯斗君、しつこいですよ。総一郎が困ってます。」 「だけどさ…。あ、そうだ、写真見るか?あの写真見たら気持ち変わるかもしれないし!…えーと、確か一緒に実家帰った時に隠し撮りしたとびっきりの一枚があるんだよ。」 新見君はスマートフォンを操作し始めた。

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