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第6話

あまり気乗りしなかったのだけれど、新見君の事だ。 俺が見るまでは納得をしないだろう。 俺は仕方なく画面に目を向けた。 「………ッ!!」 思わず息を飲んだ。 その写真から目が離せなくなった。 まるで、時が止まったかのような錯覚に襲われた。 「どうだどうだ!俺、超グッジョブだろ?八神さん。」 「………」 「あのー、八神さん?」 「………」 「八神さーん。」 「…え?……呼んだかい?」 「呼んだ呼んだ。3回くらい呼んだ。」 「ごめんね。気づかなかったよ。」 「で?どうだ?」 「新見君…」 「ん?」 「この写真を、俺に送ってくれないかい?」 「ぷっ!!」 新見君が身体を震わせた後に吹き出した。 暫くして、自分の発した言葉に頬が熱くなるのを感じた。 何も考える事なく突発的に口にしていた。 何事も瞬時ではあるけれど、その短い時の中できちんと考えて行動するようにしている。 突発的に言葉を発する事や行動を起こすような事は滅多にない。 「これはまた、意外な反応ですね…」 その事は側で俺を見てきた折戸が一番良く分かっている。 折戸は何故か複雑な表情をしていた。 「あー………そっかそっか、シュートの寝顔はノンケをも落とすかぁ…流石百戦錬磨だ…はは…そっか、そうなんだ…」 新見君はそう言って苦笑した。 その表情は、折戸と同様に複雑なものであった。 「しゅうと?…しゅうととは、彼の名前かい?」 「ん?あー…そうそう。蹴る人でシュート。なんかキラキラネームっぽくね?」 「そう。彼は蹴人というのだね。」 今まで感じた事のない気持ちが俺の中を巡った。 そして、気づいてしまった。 俺は、写真に写る蹴人という名の青年に、一瞬にして心を奪われてしまったのだ。 その寝顔は、新見君の言葉通り、あまりにも無防備で可愛らしいものであった。 在り来たりな言葉だけれど、本当に天使なのではないかと錯覚を起こす程に愛らしく感じた。 その後、俺は新見君を質問攻めにし、彼の情報を色々と聞き出した。 当然、そのような俺に新見君と折戸は戸惑い、時折顔を見合せては苦笑した。 年齢や誕生日など、聞き出せる事は全て聞き出した。 どうやら彼は新見君と同じ大学へ通い、新見君のバイト先である、カフェで働いているらしい。 頼み込んだ甲斐もあり、帰り際に写真を送信してもらう事ができた。 自宅に帰り、その写真を見ながら久しぶりにとても満たされた気分になった。 見れば見る程に愛らしい。 俺は今、とてもだらしのない顔をしているに違いない。

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