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第27話

恨まれる事になるのだろうけれど、新見君に任せておけば安心だ。 俺は店を後にした。 会社に戻ると、机の上には大量の書類が積まれていた。 午前中を無駄にしてしまったのだから当然の事だ。 その山を見て溜息をついた俺を、折戸がガミガミと叱った。 スマートフォンに目をやると、新見くんからメールが来ていた。 内容は、蹴人が早退をしたという事であった。 俺は、そのメールに安心をして仕事に取りかかった。 結局、会社を出たのは22:00を回った頃だ。 部下には、残業はできるだけしないように…などと言っておきながら、当の本人が残業をしているのだから示しがつかない。 俺は苦笑し、車に乗り込んだ。 蹴人は大丈夫なのだろうか… しっかりと休めただろうか… とても心配だ。 蹴人の声が聞きたい。 スーツのポケットからスマートフォンを取り出し、通話ボタンを押した。 暫くすると繋がった。 意外だった。 出てくれるだなんて思ってもいなかったのだから… 「………はい。」 「こんばんは、蹴人。八神だけれど、分かるかい?」 「…」 「少し、様子が気になってね…」 「お前のせいだろ。」 「ふふ、その様子であれば心配をする必要はなさそうだね。安心したよ。…ねぇ蹴人、来週の土曜日なのだけれど、空けておいてもらえるかい?」 時間が経過してしまっては、もう会えないかもしれない。 まずは約束を取りつけなくてはいけない。 「は?…」 「都合が悪いのかい?」 「バイトがある。」 「アルバイトは、何時頃に終わるのだい?」 「18:00…だ。」 「そう。では18:00にお店まで迎えに行くよ。」 「ちょ、おい、俺はまだ行くとは…」 少しくらい強引でなければ約束は叶わない。 「土曜日をとても楽しみにしているよ。…おやすみ、蹴人。」 俺は通話を切った。 返事などはさせない。 断られる事くらい分かっている。 分かっているからこそ、言わせる必要もない。 おそらく、蹴人は来るだろう。 彼は真面目な子だ。 俺が間違って捉えていなければの話だけれど… 強引に漕ぎ着けた約束だ。 しかし、それでも構わない。 俺としては少しでも長く、例え強引な手段であったとしても、蹴人と繋がっていたいのだ。 少しでも、俺という人間を蹴人の中に刻みたい。 出会いが蹴人の中では最悪なものになってしまったからこそ、余計にそのような気持ちが強くなる。 俺はスマートフォンを仕舞って、車を走らせ会社を後にした。

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