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第35話
リクライニングソファーを倒しながら蹴人を組み敷いた。
「おい、降りろよ。ソファーが壊れるだろ。」
「構わないよ。買い直せばよい事だからね…」
「ふざけるなッ!また強引にあんな事する気か!!」
「…そうだよ。嫌かい?」
「当たり前だろ!!離れろ!!」
「少し考えれば分かる事だとは思うけれどね。…いや、君の頭には過っていた筈だよ。俺に着いてくるという事はまたあの日のような事になるかもしれないという事が。」
まるで全ての責任を蹴人に押しつけているかのような言い方だ。
なんてズルい人間なのだろう…
それを誤魔化すかのように蹴人の唇を塞いだ。
「…んンッ…やめ…」
「…ッ…」
それは呼吸を奪うような深いキスだ。
蹴人からは鼻にかかったくぐもった声が漏れた。
苦しがっても呼吸をする事など許さない。
角度を変えながら何度も何度もその唇を塞ぐ。
蹴人はといえば、苦しさからか俺のシャツを強く握っていた。
我に返った俺はゆっくりと唇を離した。
「んッ…ん…ン…ッ…」
解放された蹴人は呼吸を荒上げながら俺を睨んだ。
その表情は俺をゾクゾクさせた。
蹴人は、キス一つで俺をこのような気持ちにさせる…
「…そのような表情は俺を煽るだけだよ、蹴人。」
「…ハァ、は…ぁ…煽ってなんか…っ…」
「…蹴人。ほら、口開けて舌を見せてごらん?…」
「誰が…するか…ッ……」
「ふふ、強情なのだね。」
蹴人が嫌がるであろう事は想定内だ。
嫌がる蹴人が可愛らしくて、あえて嫌がるような事を言った。
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