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第37話
蹴人は暫く考え込む様な仕草を見せると口を開いた。
「好きにしろ。…ただ、これはお前の為じゃない。だから、勘違いするな。」
それは、いかにも蹴人らしく、今の俺達の関係に相応しい台詞だった。
「無理だと言っても止めてあげられないよ。」
「…男に、二言はない。」
そう言うと蹴人は自ら上着を脱いでソファーの下に落とした。
少し意外な反応だった。
丸みのないシャープな顎…
膨らみのない胸元…
肩幅の広さ…
やはりそれはどう見ても女性のものではない。
あの日はその様な余裕等なかった分、彼の身体をその目に焼き付けた。
そして俺はあるものを見つけてしまった。
「…蹴人、この痕はどうしたのだい?」
「お前には関係ないだろ。」
蹴人の鎖骨下の赤紫色をしたそれに触れた。
これはどう見ても虫刺されではない。
…キスマークだ。
俺が付けたものではない事は明らかだ。
少し会わない間にどこでこの様な悪戯をいていたのだろう…
「俺が残した痕ではないね。あの日の痕は、既に消えている筈…。それに、俺はこのような場所に痕を残した覚えはないのだけれど?」
「黙れ。お前には関係ないと言ってるだろ。」
俺は今、どのような顔をしているのだろうか…
「そうだね、確かに俺には関係ないのない事だ。…けれど、許せないな…」
その痕にギリッと爪を立てて、引っ掻いた。
「…ッ痛…」
「…ねぇ、蹴人。この間、俺が痕を付けた場所を覚えているかい?」
「いちいち覚えてるわけないだろ。正直、お前があんなもの残したおかげでこっちはどれだけ迷惑だったか…」
「俺はね、全て覚えているよ。俺が君にした事も、君が俺にした事も全て…。君に電話をかけた回数や、君の身体に残した痕の場所も…」
「…怖い事言うなッ!」
「また付けてあげるよ。…君は、もう忘れてしまったようだからね…」
「…んンッ…はぁ…」
蹴人の胸元に顔を埋めて肌に舌を這わせた。
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