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第2話

八神はブラックが好きらしい。 コーヒーに砂糖やミルクを入れてるところを見た事がない。 だから、あえてシロップとミルクは付けない。 つまり、味の好みが分かるようになるくらい八神と居る時間が増えたという事だ。 俺は作り終えたアイスコーヒーをトレーに乗せてホールに出た。 なにやら奥の席が騒がしい。 騒がしい原因は八神の秘書の折戸さんだった。 「何をしているのですか、貴方は!!」 「えーと…息抜き、かな。」 「ほら、帰りますよ。…あ、黒木くんすみません、社長が迷惑をかけたようで。お代は丁度あると思うので確認してください。」 折戸さんが八神の腕を引っ張りながらスーツのポケットから小銭を出すと、トレーに乗せた。 俺はトレーに乗せられた小銭を数えた。 「確かに。」 「不要になってしまったアイスコーヒーは、黒木くんと颯斗くんで飲んでください。」 「なにを言っているのだい、折戸。折角蹴人が作ってくれたというのに…」 「100%黒木君が作った物だと分かっているアイスコーヒーをテイクアウトなんてしたら、眺めているばかりで仕事が捗らないのは目に見えていますからね。」 「折戸、なにも蹴人の前でそのような事を言わなくてもよいではないか…」 「貴方が悪いのですよ。」 「…折戸さん、なんか毎回毎回大変ですね。」 「いえ、いつもの事ですから。」 「アイスコーヒー、休憩時間にでもいただきます。いつもありがとうございます。」 「では、失礼しますね。…ほら社長、行きますよ。」 折戸さんは、八神を引っ張って出て行った。 初めはあまり良い印象を持ってはいなかったが、話してみると悪い人というわけでもなかった。 俺の中で颯斗を泣かせた罪はかなり重い。 一発殴ってやろうと思っていたが、あの後は颯斗を大事にしてくれているみたいだから今回は水に流した。 だが、次泣かせた時は…そんな事を思いながらアイスコーヒーを奥に持ち帰って颯斗を呼んだ。 「んー?どうした。」 「折戸さんから颯斗に差し入れだ。」 「え、なに、壱矢さん来たの!!何で呼んでくんなかったんだよ!!」 折戸さんは、いつもパッと来て八神を連れて帰るから颯斗を呼ぶ暇もない。 いつもタイミングを逃す颯斗が可哀想で、アイスコーヒーは折戸さんから颯斗へと言って渡している。 受け取った颯斗は毎度嬉しそうだ。 「黙れ。」 「ひっでぇ!!」 「とりあえず冷蔵庫に入れとけ。」 「あぁ、そうだな。バイト上がったら飲も。」 颯斗はスキップでもしそうな勢いでそれを持って休憩室に入って行った。 俺はレジを開けて、折戸さんから貰ったお金をしまった。

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