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第7話
呼吸はとっくに落ち着いている筈だ。
でも、まだ胸が苦しい…
「シュート、ホント大丈夫か?」
昨日の夜、八神からの電話を切った時…
あの時に感じた違和感…
そこから全てが狂い始めた気がする。
「昨日からずっと…」
「ん?」
「…おかしい。」
「おかしいって、何がだ?」
「分からない…」
「分からないって、シュートが分からないもんを俺がわかるわけないだろ。まぁ、今日バイト休みだし、講義終わたらゆっくり話聞くわ。シュートがこんなに弱るの珍しいから心配だし…」
それに頷いてはみたものの、特に話すような事はない。
でも、有り難くもある。
今日は一人では居たくない気分だ。
「…ありがとうな、颯斗。」
颯斗の存在が心強いのもあって、いつものように集中して授業を受ける事ができた。
講義が終わって、颯斗と大学付近のファミレスに入った。
昼時でファミレス内はガヤガヤしているし、混んでいるせいか少し待たされた。
「で、どうしたよ?」
席に通され、早速颯斗が切り出す。
「今日、寝坊した…」
「それは知ってるから。」
「寝坊した上に電車乗り遅れた…」
「だっせぇ。」
「電車に乗り遅れた上、ホームで八神を見かけた…」
「八神さん?見間違えだろ、それ。」
「アレを見間違えようがないだろ。アレだぞ。」
「まぁ、確かにそんじょそこらには居ないよなぁ。でもさ、八神さんが駅なんかに居るわけないじゃん。」
「でも居た。…男と…」
「男…。なぁシュート、原因それじゃね?」
「は?」
「八神さんがイチャコラしてんの見てヤキモチ焼いたんじゃねぇーの?」
「お前なぁ…くだらない事言うな。」
「でも八神さんに限ってシュート以外とイチャコラなんてないだろ。アレだぞ、あの八神さんだぞ。」
「…颯斗、お前黙れ。」
颯斗に相談した俺がバカだった。
なんで俺がヤキモチなんて…
そんな筈はない。
「まぁ、俺が今のシュートにかけてやれる言葉は、精々悩めとか素直になれとかくらいだな。」
結局、何も解決しないまま颯斗と別れた。
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