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第9話
いつの間に眠ったのか、目をやると時計は6時を指していた。
ソファーでテレビを付けたまま寝ていたらしい。
身体が痛くて、軽く背伸びをした。
その瞬間、部屋に着信音が響いた。
相手は八神だ。
こんな朝っぱらに迷惑なヤツだ。
通話をタップして出た。
無視してやろうと思っていたのに、癖というやつは恐ろしい。
「…蹴人?」
八神の第一声は、なぜか少し不安げに感じられた。
「…」
「良かった。何かあったのではないかと心配していたのだよ。良かったよ、君が無事で…本当に…」
八神の声はどこか情けなく聞こえる。
「俺だって暇じゃない。毎回毎回お前の電話に付き合ってなんかいられない。」
「ねぇ蹴人、君に会いたい…」
「無理だ。」
「これはまた、…随分と即答だね…」
電話越しに八神の溜息が漏れたのを聞いた。
「レポートの締め切りが近い。…だから無理だ。」
「そう。…ならば学業は優先しなくてはならないね。レポートを提出し終えてからで構わないよ。連絡をもらえるかい?」
「俺が連絡するとでも思ってるのか?…おめでたいヤツだな。」
言いすぎた。
言ってから激しく後悔した。
これはただの八つ当たりだ。
俺の悪い癖が出た。
感情的になるとこうやって人を傷つける。
考え無しにものを言う。
そして、言った後に激しい後悔に襲われる。
「おめでたい…ね。そうでもないよ。手強いとは思っていたのだけれど、俺も流石にめげてしまいそうだ…」
「なに言ってんだ。意味が分からない…」
「…」
八神はこないだのあの男の事を言っている。
そんなのは俺には関係ない事だ。
朝っぱらから八神の恋愛話を聞かされるとは思っていなかった。
「…切るぞ。」
「また、連絡するよ。」
「…」
「レポート、あまり今詰めてはいけないよ?」
八神のこういうところが俺の調子を乱す。
心臓がうるさい…
俺は、かき乱されそうになって電話を切った。
「ふざけるな…」
スマホをベッドに放って溜息を吐いた。
本命が居るのになんで俺に…
俺に構ってる暇があるなら本命を構えばいい。
分からない…
俺はまたソファーに転がった。
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