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第18話

90分の講義が終わった後、俺は放心状態だった。 いつもはあっという間に終わる90分が酷く長く感じられた。 原因は分かっている。 病み上がりに頭のフル稼働がキツいというのもあるが、それだけじゃない。 もう何日も俺はそれに苦しめられている。 逃れたいのに、逃れられない… 歯痒くてたまらない… 誰かにクシャッと頭を撫でられてハッと正気に戻る。 他人に勝手に身体を触られるのは好きじゃない。 反射的にその手を突っぱねた。 睨みつけると、いつの間にか正面に居た麻倉と目が合った。 「触るな。」 「いいだろ、別に。」 「嫌だ。」 「クロ、昼飯行くよ。」 「あぁ。…でも、もう少し休ませろ…」 「ノロノロしてるとまた撫でるよ。」 「分かった…」 「はは、そんなに嫌なんだ?」 「だからいつも言ってるだろ、嫌だって。」 盛大にため息を吐きながら、勢いよく立ち上がると立ち眩みに襲われた。 倒れると思った時、麻倉が俺を支えた。 麻倉のおかげで間一髪倒れずにすんだ。 「なぁ、本当に大丈夫か?」 「…あぁ、悪い。もう大丈夫だから離せ。」 「…」 麻倉は何故か離しそうとはしなかった。 それどころか、引き寄せられた。 「おい、離せ。」 「周り、気になるのか?」 「ふざけるのは止めろ。」 「クロが悪い…こんな色っぽいもの、付けてくるから…」 「は?」 「ココ…」 麻倉の指先が俺の首筋をなぞって、思わずビクッと身体が跳ねた。 「バッ…触るな…」 「フラフラ遊んでるのは知ってたけど、遊びだと思ってほっといたら、なんなの?コレ…」 麻倉は、八神が残した痕の事を言っている。 首元が開いている服を着てきた俺も悪い。 でも、その事を麻倉にウダウダ言われるのは納得がいかない。 あれから数日経ってるのにまだ残ってるなんて… 八神はどれだけ強く吸ったのか… 俺にこんなもの残してもなんの意味もない。 恋人ごっこなら他でやれ… 八神は… 無責任だ。 「お前には関係ないだろ。ふざけてないで離せ。…本気で怒るぞ。」 「…悪い、少しふざけすぎた。」 麻倉はあっさりと解放した。 ホントに冗談がすぎる… その後の麻倉はいつも通りだった。 麻倉からコピーを受け取って、途中の自販機でコーヒーを買いつつ食堂に向かった。

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