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第19話

食堂は昼時で賑わっていた。 券売機の列に目眩がしてくる。 一番奥の席で颯斗が立ち上がって手を振っているのが見えた。 颯斗には悪いが、目印には丁度いいデカさだ。 逆走状態の中、人混みを掻き分けてなんとかそこまで辿り着いた。 颯斗は俺をみて懐っこく笑った後、ギロッと麻倉を睨み付けてから、あからさまにプイッと顔をそらした。 「…つかシュート、何で麻倉?」 「颯斗と飯食うって言ったら麻倉も来るって言うから連れてきた。」 「は?聞いてない。」 「言ったら絶対拒否するだろう。」 「当たり前だろ。シュート何も分かってない!」 「クロ、新見はほっといてこっちに座りな。」 「はぁぁ~、なんだと!?」 いつの間にか向かいの席に麻倉が座っていて、隣に座れと促してくる。 その言葉に、今度は颯斗が隣に座れと椅子を叩いた。 「シュート、こっちだろ?」 「クロ、こっち。」 「お前ら面倒くさいからジャンケンしろ。勝ったヤツの隣に座る。…ほら、とっととしろ。」 周りが食事を中断して思わず注目する程バチバチしたド迫力のジャンケンを征したのは颯斗だった。 約束通り颯斗の隣に座ると麻倉が颯斗を睨んだ。 幼稚な二人に、俺は盛大に溜息を吐いた。 着信音が響いた。 俺のスマホじゃない。 麻倉のものでもなさそうだ。 ポケットからスマホを取り出したのは颯斗だった。 「もしもし壱矢さん、どうしたんだ?うん、そうなんだ?待って、今一緒だから聞いてみる。」 相手は折戸さんらしい。 完璧に顔がデレている。 颯斗が一度スマホから耳を離して俺を見た。 「壱矢さんが、大学の近く通るから拾ってくれるってさ。シュートはどうする?一緒に帰るか?」 「あー、…俺はいい。」 今は八神関連とは関わりたくないというのが本音だ。 今関わったらろくな事にならない。 「ん、分かった。…あ、壱矢さん、俺だけ拾ってもらえるか?シュートはいいってさ。うん、分かった。じゃぁまた後でな。」 颯斗がスマホを切ると、俺を見て苦笑した。 「シュートも一緒に帰ればいいのに。八神さんも居るってさ。」 「尚更、一緒には帰れないな…」 「シュート、八神さんとマジで拗らせたんだ?」 颯斗が呆れたように言った。 「は?…」 「…いんや、なんでもない。さて、壱矢さん車だし止めておけないだろうから俺はもう行くな。」 「あぁ…」 「シュート、また明日な。……麻倉、お前シュートになにかしたら殺すからな。」 最後にドスの利いた声で訳の分からない怖い台詞をキメた後、颯斗は食堂を出て行った。

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