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第24話
どれだけ時間が経ったのか分からない。
汗が乾いて寒気がするくらいの時間は経ったと思う。
そんな時、クラクションが鳴った。
そんなに遠くない。
小刻みに3回…
聞こえた方に顔を向けた。
その先には駐車場の入り口に止まった見慣れた高級車が止まっていた。
窓ガラスが下がって、八神の顔がしっかりと見えた。
それだけなのに、どこかホッとした自分が居る。
それが酷く悔しい。
八神の唇が動いたが、何を言ったかまでは分からなかった。
そして、車は駐車場へ消えていった。
「蹴人。」
暫くして、後ろから名前を呼ばれて振り返った。
マンションの出入り口には八神が立っていた。
多分、車を駐車場に止めてから来たんだと思う。
ゆっくり俺に近づいて、俺の前にしゃがみ込んだ。
「まったく君は…」
八神が困ったように笑って、長くて綺麗な指で俺の頬を撫でた。
「…」
言葉が出てこない。
何を話したらいいのか分からない。
「こんなにも冷たくなって…」
「…ッ…」
気を抜いたら泣きそうな気分だ。
でも泣いたりはしない。
悔しすぎる…
素直じゃないと言われても仕方ない。
ずっとこうして生きてきた。
今更、素直になんかなれない。
「…おいで、蹴人。温めてあげる…」
八神が立ち上がって、俺に手を差し伸べた。
俺がその手を取ると、引き上げられた。
温めてくれるどころか、八神の手も冷たかった。
だけど、なぜか暖かく感じた。
そのまま手を引かれてマンションに入り、エレベーターに乗り込んだ。
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