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第35話

八神が崩れ落ちた俺を労うように優しく撫でた。 その手があまりに心地よく感じる。 「…はぁ、…平気、かい?…」 「…はぁ…はぁッ…お前…こそ…」 「…平気…だと思うよ、多分だけれど…」 「オッサンのクセに…」 「…ふふ、酷いなぁ…」 「…無茶して…風邪の時にセックスとか…死ぬぞ、オッサン…」 「こーら、…気にしているのだから…歳の差の事はもう言わないで…それにね、俺に無茶をさせたのは、君だよ?…」 「…」 「目が覚めたら君が居て…しかも、あのような可愛らしい事をしてくれていたのならば、応えないわけにはいかないよ、男としてはね…」 「なんだ、それ…」 「…単純に、今こうして君が居てくれている事が嬉しいのだよ…本当はもう少し可愛がってあげたいところなのだけれど、ごめんね?…今日はもう…限界のようだ…」 「…黙れ…病人は黙って寝てろ…なに勝手に起きてッ…んンッ…」 ズルッと八神がチンコ抜いて、堪らず身動いだ。 抜けた後、生温いのがゆっくり溢れ出るのを感じた。 挿入れる時と抜く時は苦手だ… 多分、一生慣れないと思う。 「…蹴人、君はシャワー浴びておいで。」 「いや…もう少し、休む。」 「そうかい?」 「あぁ。…つかお前、どこから気づいてた。」 「秘密。…怒られてしまいそうだからね。」 「まさかお前ッ…!」 「ふふ、言わないよ。」 そう言って八神は笑った。 「…腹立つ。」 「…腹が立つだけかい?」 「…ッ…」 「ねぇ、蹴人…どうなのだい?…」 「黙れ…」 「…蹴人。」 「しつこい。」 「…本当に強情だね、君は。」 「強情で悪かったな。」 「…好き。蹴人のそのようなところも全て…愛しているよ。」 「バッカ、こっ恥ずかしい事…言うな…」 「蹴人…君は、どうなのだい?」 「…黙れ。」 俺は素直じゃない。 でも、素直な俺なんて俺らしくない。 素直になんてなったら俺は俺を保てなくなる。 バカになっていくのが怖い。 でも、今思えば俺は八神を前に俺らしかった事なんて一度もないのかもしれない。 「…ねぇ蹴人、君は俺の事を…」 「だから黙れ。…シャワー借りる。」 俺は逃げるようにヨロヨロと立ち上がってシャワー浴びに向かった。

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