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第3話
仕方なく机の引き出しを開き、エアメールを取り出し、レターナイスで封を切ってから手紙の内容に目を通した。
「まったく貴方という人は…。大切な内容の手紙だったらどうするのですか!」
「大切な手紙であれば、後回しにはしないよ。…ところで折戸、今日は何日だい?」
「今日ですか?5日ですよ。」
「やはり、5日だよね…」
「いかがされましたか?」
「5日の夕方の到着便で啓が来ると書いてあるのだけれど…」
「はぁ…啓一郎君ですか…」
折戸が深い溜息漏らした。
「困ったね…」
「…そうですね、困りましたね。」
「ある意味、とても大切な手紙だったのかもしれないね…」
「八神家が生み出した史上最強の…」
「折戸、人の弟を悪く言うのは止めなさいね。」
年の離れた弟の八神啓一郎 は、俺にとって目に入れても痛くないくらいに可愛らしい存在だ。
啓以上に可愛らしいと思える存在は居ないと思っていた。
けれど、今はそうではない。
俺は啓よりも可愛らしい存在を見つけてしまった。
「あの子には迷惑しかかけられた事がありませんので、つい…」
「許されてしまうところがあの子の怖いところだよ。」
「甘やかしに甘やかした貴方が言う事ではありませんよ。」
「折戸、申し訳ないけれど今日は上がらせてもらうよ。」
「そうせざるを得でしょうね。」
夕方の便という事は今出なくては間に合わない。
折戸の許可を得て、会社を出ると車で空港に向かった。
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