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第4話

車を飛ばした甲斐もあり、ギリギリではあるが間に合った。 到着ロビーで啓が出て来るのを待ち、暫くするとカートを引いた啓が出てきた。 「総兄さま!」 「啓、よく来たね。…おや、アルベルト君は一緒ではないのかい?」 「アルは僕じゃなくてパパに着いて行っちゃったの。酷いよね。おかげで僕はずっとひとりぼっちだったんだよ?なぐさめてよ、総兄さま!」 「一人で飛行機に乗って日本まで来られるようになるだなんて、随分と成長したのだね、啓。暫く会わない間にだいぶ身長も伸びたように見えるけれど。」 「ほんと?嬉しいなぁ。総兄さまはカッコよさに磨きがかかったよ?」 「ふふ、そうかい?」 「そうだよ?総兄さまは僕の自慢の兄さまだもん!」 「啓、煽てても何も出ないよ。さて、まずは此処を出ようか。荷物を持つよ。」 それにしても、啓を一人で寄越すだなんて、あの人は何を考えているのだろうか。 世間知らずな啓の事だ、何かあってからでは遅すぎる。 それくらいはあの人も理解している筈だ。 目に入れても痛くない程に可愛がっているのだから… 父に疑問を抱きつつ、啓から荷物を受け取り、車で空港を後にした。 「啓、お腹は空いていないかい?何かを食べてからホテルに向かおうか?」 「んーん、疲れちゃったから、ゆっくりしたいなぁ。…あれ、ホテル?…お泊まりは総兄さまのお部屋じゃないの?」 「長期滞在ならば、ホテルに泊まった方が啓も気が楽なのではないかと思ってね。俺も仕事があるし、あまり構ってはあげられないからね。」 生活を啓中心にするつもりはない。 そうは思いつつも、最終的には自然と啓が中心になっていくであろう事は目に見えていた。

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