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第10話

俺は気持ちを紛らわすように、日々、啓の世話と仕事に励んだ。 そうでもしなければ自分を保っていられない程にめげてしまっている。 欠かすことのなかった毎晩の蹴人への電話も断っている状態にある。 この数日、俺は働き詰めだ。 このような働き方は良いわけがない。 「少し休んだらどうですか?ここ最近、働き詰めじゃないですか。オーバーワークもいいところですよ。」 「…そうかな…あまりそのようなつもりはないのだけれど…」 「顔が死人のようになっていますよ。」 「…死人って…酷いなぁ…」 「とにかく、そのような顔で仕事をされては迷惑です。今日は帰ってゆっくりと休む事をお勧めします。」 「…でもまだ終わっていないし、啓のところにも寄らなくてはならないし…」 「その仕事は急ぎのものではないですし、啓一郎くんのところには私が行きますから。」 「…そうかい?では、啓の事に関しては甘えようかな…。仕事は定時までして帰るよ。」 「…わかりました。そろそろお昼なので切り上げてください。」 「もうランチタイムか…早いね。」 「私は、バイトがお休みらしいので颯斗くんとランチを…と思っているのですが、貴方はお昼はどうするのですか?」 「そう。俺はあまり食欲がないかな…」 「貴方、このままでは体調を崩しますよ?」 「そうだね。では帰りに何か買ってきてもらえるかい?」 「分かりました。」 そう言うと折戸は軽く頭を下げて出て行った。 身体がフワフワと浮いているような感覚… まるで船酔いでもしているかのようで気持ちが悪い。 忙しくする事で気持ちを紛らわせようとはしたものの、そろそろ限界らしい。 俺は手を止め、少しでも休養を…と目を瞑った。 その後、折戸の買ってきたサンドウィッチを口にしてから仕事を再開した。 正直、目の前が霞んでパソコンを上手く打てているのかさえも分からなかった。 定時を迎え、俺はフラつく身体を引きずりながら会社を出た。 車に乗り込み、ふと時計に目をやると、蹴人のバイトが終わるくらいの時間だった。 蹴人に会えばまた傷つく事は目に見えている。 しかし、この連絡を断った数日間で気づいてしまった。 蹴人と関わる事で得るダメージよりも、蹴人と会えない事で得るストレスの方が、余程堪えるという事に…

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