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第20話
思い通りにならない事にイライラとして、八つ当たりをして、今の俺は幼くて醜い…
「あぁ、そういえば例の写真ですが…やはりどう考えても気持ちが悪いと思ったので伸ばさずにおきました。」
「写真?…」
「黒木くんの…」
「…折戸、今は蹴人の話は禁句だよ。」
今その名を聞けば更に俺の頭が混乱しそうだ。
今は仕事に集中したい。
蹴人の事はこの仕事が上手くいくまではお預けだ。
「なんですか、喧嘩でもしましたか?」
「喧嘩?…そうだね、彼にとっては毎回喧嘩のようなものかもしれないね…俺にその気がなくても…」
「おやおや、弱気ですね。困りますよ、これから大勝負が控えているのですから。」
「分かっているよ。俺が公私混同するとでも思っているのかい?」
「…いえ、貴方がそういうタイプの人間ではないと思ってはいますが、黒木くんの事に関してはどうですかね。」
納得だ。
折戸は俺よりも俺の事を理解している。
悔しいけれど、折戸には敵わない。
今も昔も…
そして、これからも…
俺はこの男には敵わない。
だから折戸と居る事が面白いと感じる。
会食後の会議は思っていた以上に苦戦を強いられ長丁場となったけれど、上手くまとめる事が出来た。
全てが終わり、車に乗り込んだ。
車の揺れが心地よく、眠気を誘った。
疲れもあったのだろう。
「少し混みそうなのでお休みになったらいかがですか?」
「いや、いいよ。折戸も疲れているだろうに、俺だけ休むわけにはいかないからね。」
「なんとも貴方らしい返答ですね。」
「…そうかな。」
車は渋滞にはまってしまったらしく動かなかった。
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