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第22話

俺は折戸の事を欲しいと思っていた。 しかし、特別な関係を築きたかったわけではない。 友人として… そして、優秀な人材として… そのような意味で折戸を欲していた。 仕事上のパートナーとして、折戸程信頼のおける優秀な人材は居ない。 折戸は俺の誘いを断らない。 なぜならば、断る理由がないからだ。 分かっていて手に入れたのだからタチが悪い。 「そうだろうね。」 「えぇ。…そういえば報告が遅くなりましたが、颯斗君と同棲しています。」 「同棲か…それは羨ましいな…」 「今はまだ私の家ですが、新居が見つかり次第そちらへ引っ越しをする予定です。…あ、総一郎、貴方はまだいけませんよ?今のままではただのストーカーの拉致監禁になってしまいますからね。」 「ストーカーに拉致監禁とは、また随分と評価を下げたね。」 「…総一郎、貴方は黒木君とどうなりたいのですか?」 「俺は…彼が好いてくれるのであれば、特別な関係を築きたいと思っているよ…」 「…自信が、ないのですか?」 「どうだろうね。…ただ、現段階で言える事があるのだとすれば、その見込みはゼロに等しいという事かな…」 「ゼロ…ですか。そうとも言えないのでは?」 「…」 「その気がないのならば、彼はスパッと切り捨てそうなタイプに思えます。しかし、彼はそうしてはいない。ゼロとは言い切れないと思いますよ。」 「…」 「貴方に取れない仕事はない。」 「いきなりどうしたのだい?」 「狙いを定めたら貴方は強いという事です。もうターゲットは決まっている。貴方が今何をすべきなのかは、もう分かっている筈ですよ。」 眼鏡が反射し、その表情までは分からない。 しかし、声色と口元だけで十分に感情を読み解く事ができた。 「…そうだね、俺にできるだろうか…」 その後はお互いに無言だった。 嫌な空気が漂っているわけではない。 むしろ、この静かな空間を心地良いとさえ思える。 「…総一郎、そろそろ着きますよ。」 そのように言った折戸の声はとても穏やかだった。

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